100話「20年後のガッチャマン」
南部博士の説明から始まります。今度は、ブラインドのある別の部屋で、スライドの投影機も違う形です。別荘どんだけ広いんだ>南部博士。
諸君も知っての通り、わが国際科学技術庁は、地底のマグマやマントルから、無公害エネルギーの開発を研究してきた。そして先ごろこの地底マントルを1箇所に凝縮させて爆発させることができるという、方程式を見つけ出した。それを開発したのが、この、国際科学技術庁の物理学メンバーの一人である、マキシム博士だ。
だが、その凝縮されたマントルを戦争に使用されたら、原爆や水爆以上のエネルギーにより、一瞬のうちに人類を滅亡に追い込むであろう。
原子力を発見した多くの有名な物理学者も、それを戦争に使うために研究したのではない。人類の幸せのために研究したのだ。それを、浅はかな人間どもが戦争に利用した。我々はその悲劇を2度と繰り返したくない。そこでその方程式のデーターは、北極海の底に沈めることにしたのだ。
うむ、そのデータは、一種の磁気作用による完全記録装置を通じてマイクロフィルムに記録されている。そのため、火にも強く、普通のテープレコーダーのように、簡単に磁気を消すことはできないのだ。
前回にひき続いてちょいとお宅拝見。窓のある部屋で、スライドの装置は机の天板の中に収納される形です。これまでに出てきた部屋とはレイアウトが全く違っているので、またしても新しい部屋登場です。
健「なるほど、磁気現象のある北極海に沈めておけばデーターは自然消滅するというわけですね」
南部「その通りだ。そしてその任務を、健、君一人でやってもらいたいのだ」
健「一人で?」
南部「もちろんマキシム博士とも一緒だ。北極まではかなりの距離だ。その間君達5人が行動を起こせば、ギャラクターに気付かれないとも限らん」
今回の話、ギャラクターが作る舞台が大掛かりなのと、マキシム博士のキャラが立っているのとで面白いのですが、SFとしては???でちょっと残念な回です。
北極の磁場って大して強くないので、磁気記録を磁場の力で消したいのなら、強力な電磁石に入れる方がずっと効率もいいし効果的です。大陸横断リニアモーターカーなんてのが31話で普通に使われているのですから、強磁場を作る技術には事欠かないはずです。記録メディアを燃やさなくても、キュリー点を超える高温にしておけば磁気記録は消えてしまいます。
92話では、海溝に沈む三日月基地を完全破壊しておかないとギャラクターに引き上げられて機密が漏れるという話だったのに、北極の氷の下なら当面大丈夫だ、とするのも矛盾しています。
誰かが発見したものは、黙っていたっていずれ別の人が発見するのが科学の常なので、今苦労してマキシム博士の成果を葬ったところで、別の誰かが独自に見つけてしまうのは時間の問題でしょう。リアルじゃ「ホームメード原爆」なんてのもあったくらいですし(アメリカの大学生が原子爆弾の製造手順を再発見し、卒論だか修論だかに書いて大学に提出、論文が国家機密指定された)。かくいう私も、大学入った直後に「君らが本気にって勉強すれば原爆を作れるが、設備が不十分だとウラン濃縮の段階で放射線障害で死ぬから、原爆作ろうなんて考えるな」と講義で言われたクチ。
このへん踏まえてSFやるなら、とりあえずはマキシム博士の成果をかくして時間稼ぎをしつつ、悪用されないための研究を同時に進めている、といった描写まであるとリアリティが増したと思います。
まあ、この回の見所は、ギャラクターの作った無駄に芸が細かい「書き割り」でしょう。倒壊したISO本部だの海の底のレッドインパルスの墓だの……。正義側は42話でギャラクター基地の撮影セットを作りましたが、今回はギャラクターが未来の地球セットを作るという……。舞台セット制作対決の回でもありますね。エキストラの動員数はギャラクターの方が圧倒的に多かったんですが。
マキシム博士が、科学者としてキャラ立ちしていて、しっかり偽物と見抜くんですが、
たかが20年くらいであんなに科学が進歩するはずがない。
と、SFとしてもいいセリフを言ってくれるんですよ。マキシム博士に座布団あげてぇ〜、みたいな(ちょっと違)。それだけに、作戦の設定に難があるのが残念です。
ついでに、北極に沈めて終わり、の作戦を指示する南部博士が何だか軽く見えちゃってるんですよね。原爆の実験のときだと「物理学者は罪を知ってしまった。それは、失うことのできない知識だ」ていうオッペンハイマーの有名なセリフがあったりするし、小隅センセ監修ならこのへん盛りこんで、南部君に語らせてみてほしかったなぁ、と。