初代7話「ギャラクターの大航空ショー」では、ベルクカッツェがやたら頑丈な飛行機を開発して挑んできます。その状況を見た南部博士の台詞がこれです。
今調べたところでは、ギャラクター一味は大変なものを発明したようだ。これは、ウィスカーと呼ばれる超金属だ。
最近は鉄よりも強いものが次々と作られている。ウィスカーはどんな金属よりもさらに強い。何百倍、いや何千倍も丈夫な超金属と言われているものだ。
このウィスカーですが、実在します。以下、理化学事典(岩波書店)からの引用。
ひげ結晶(whisker)
ホイスカー、ウィスカーともいう。適当な条件下でおこる溶液からの析出や化合物の分解、たとえば金属酸化物の水素還元、そのほか熱分解あるいは蒸気の凝縮などの際に成長する針状結晶。非常に多数の金属ひげ結晶が知られており、その他に複雑な化合物やアスベストのような天然鉱物のウィスカーもある。根元が成長するものと針の先端で成長するものとの2種類があり、それぞれ異なった機構によるものとされている。太さは0.1μm程度から10μm程度までであり、長さは10mmの桁に達するものもある。一般には、含まれている転移の数が極端に少なく、皆無のものもある。このため、ウィスカーの強度はその結晶の理想値(剛性率の1/100以上)に近い。この機械的強度の著しく高い特徴を用いて、SiC、Al2O3などを高分子材料に混ぜて複合材料として利用している。
これだけだと何のことだかわからないので、ざっくり説明します。金属などを一度溶かして、また固めたとします。固体で結晶、つまり原子が規則正しくならんだ状態になるものであっても、手にとって工作できるような大きさになると、全体が完全に規則正しくとはいかず、抜けてるところがあったり、ずれて並んでしまったところができたりします。元が規則正しい形に並びたがるものですから、ずれる時には、それなりの長さで一列にずれたりします。こういうずれた所があると、外から強い力をかけたときに、その部分から変型したり壊れたりします。もし、ずれたところが全くなければ、なかなか壊れません。
現実のウィスカーの場合、全体にわたって原子や分子が完全に規則正しく並んでいるため、力をかけても変型しにくく、とても頑丈であるという性質を持ちます。残念ながら、大きなものは作れません。でも、非常に丈夫であるという性質にヒントを得て、作中のウィスカーが設定されたのではないでしょうか。もし、飛行機を作れるサイズの金属板で、原子のスケールでのずれが全くないものができれば、とても壊れにくいものになるはずです。