グレンダイザーの基地として機能している宇宙科学研究所だが、ムック本などには「世界最大の電波望遠鏡」が設置されていると書いてある。しかし、研究所のサイズの具体的な根拠となる資料はないし、作画は回によって違うので、ロボット等の大きさからサイズ推定をすることはできない。そこで、電波望遠鏡のサイズの方から少し考えてみる。
例によって、英さんのサイトの情報を参考にすると、宇門博士の生誕は1925年で、これから計算すると大学在学が1941-1944年(戦争まっただ中)、終戦と同時に大学院→その後スイス留学(推定数年)、となる。シラカバ牧場を開設して牧葉団兵衛と共同経営を始めたのが1968年で、この頃にはおそらく研究所の建設は終わっていたと思われる。すると、研究所建設は1958-1968の間と考えて良いだろう。
この頃、リアル世界の電波天文は、巨大パラボラがシンボルとなる状況であった。建設状況は、
●1955年 ライデン大学(オランダ)、26 m、この時点で世界最大
●1957年 マンチェスター大学(イギリス)、76m
●1961年 CSIRO(パークス、オーストラリア)、64m
●1961年 NRAO(グリーンバンク)、90m
●1963年 アメリカ海軍研究所、アレシボ(プエルトリコ)、300m、ドリーネ地形をそのまま使ったもので可動しない
●1964年 ヘイシュタック(アメリカ)、高精度36m
●1965年 NRAO(グリーンバンク)、高精度42m、NRCアルゴンキン(カナダ)、高精度46m
といった具合である。
空間分解能を上げるために、一時期は巨大化する方向で作られたが、パラボラ1つでは限界があるので、現在ではそこそこのサイズのアンテナを並べてVLBIをやっている。また、高精度というのは、短波長であるミリ波を精度良く見るために、鏡面仕上げしたりして特にパラボラの形状の精度を高めたものである。
作中の研究所が、空間分解能を上げる方向で巨大化を目指したのか、ミリ波で世界最大を狙ったのかはわからない。前者だとすると、可動しないアレシボは比較対象から外すとしても、パラボラの直径は90m以上ということになる。ミリ波で勝負をかけたのだとしても、高精度世界最大の条件を満たすには、パラボラの直径は46m以上ということになる。
ところで、首振りタイプの巨大なものは、パラボラの外側がメッシュになっている。アンテナを軽く作れるし、観測波長が長ければメッシュで十分という理由の両方だろう。パラボラ全体を板で埋め尽くす必要があるのは、観測波長が短い場合である。
研究所のパラボラは外側まで板を貼った構造でメッシュではない。このことから、建設当時のミリ波で最大を狙って作ったと推定するというのはどうだろうか。そうすると、サイズとしては、直径50m程度と考えれば、設定の条件を満たすことができる。
なお、宇宙からやってくる信号は微弱なので、10の9乗倍程度に増幅しないと情報は得られない。いずれにしても、研究所の観測ドームの大部分は、増幅器だの検波器だの多チャンネルの分光器だので埋め尽くされているハズである。
掲示板の方で、「土木好きとしか思えない宇門博士」というネタが出たが、まさにその通りで、精度を要求されるデカブツを作って振り回すための工事ということになると、光研やら科研とは全く違った種類の技術が必要になるわけで、そういう目で見るとアニメの研究所といえども、あれこれ想像して楽しむ余地がたくさんあると思う。