グレンのダブルスペイザーの開発が宇門博士か甲児君か、ということについて、私は宇門博士だろうという立場をとっている。ところが、(英さんもそうだったんだけど)、甲児君によるとか、光子力研究所の協力をかなり得たといった考え方もある。このあたりを確定させる資料は見当たらないのだけど、あの3つの研究所間の協力が簡単にできるという見方に違和感を覚えたので、ちょっとあれこれ書いてみる。
まず、マジンガーZを作った兜十蔵博士が天才であることに間違いはない。光子力の研究の基礎も築き、光子力研究所を作った。
光子力研究所の本来のミッションは、ジャパニウムと光子力の利用について研究することで、おそらく、その研究分野は自然科学の全分野に及ぶはずである。研究所に居る人々の専門分野も多岐にわたっているはずである。弓教授自身は、地質調査用のロボットは作ったが、本格的な戦闘用ロボットは結局開発していないし、Zについては運用と修理をやっていただけである。Zの運用をすることになったとき、運用に携わる人数を増やすなどして対応したのだろう。弓教授や三博士は、十蔵博士の弟子なのでそれなりにロボット工学もやるが、そちらに特化しているというわけでもなさそうである。また、スクランダー開発前に小型ロケットでZを飛ばしているが、気象観測用の小型のもので、上空を観測した後は地上に落下するタイプのものと思われる。スクランダーについては弓博士が設計し、誘導についてはスミス博士が担当した。
Zの戦いの間は、超合金Zは国家機密指定されていたので、管理を一手に引き受けていたはずだし、精錬・鋳造設備があるのも公式には光子力研究所だけだから、戦いが終わって機密指定解除になったとしても、その後の供給や、利用研究の拠点となったはずである。
科学要塞研究所はどうか。兜剣造博士は、兜十蔵博士の成果をさらに発展させている。Zより高性能なグレートマジンガーを設計製作、材料においてもより優れた超合金ニューZを開発している。秘密裡に科学要塞研究所を建設し、パイロットを訓練しつつ、十蔵博士のやってきたことをそのまま踏襲する方向で研究を行っている。グレートは、スクランブルダッシュという翼を持っており、これは最初から兜剣造博士によるものである。しかし、より大きな翼であるグレートブースターは、最初の設計がスミス博士によるもので、製作し完成させたのが兜剣造博士である。
もともと、対ミケーネの基地として作られた戦闘目的の研究所であるので、光子力ビーム砲を備えている。兵器の開発もメインテーマの1つであったに違いない。
ミケーネを倒した時点で一応の目標は達成したことになるが、その後はグレートの動態保存や保守などをすることになっただろう。
宇宙科学研究所は、電波望遠鏡や宇宙望遠鏡を備えている上、宇宙ステーションの打ち上げやらスペースアイの打ち上げやらを自前でやっている。また、ダブルスペイザーは280トンのダイザーを飛ばしているわけだが、この重量のものを積んで離陸できる航空機は、現実の地球上には存在しない(Z、グレートの重量なら、積み込めれば輸送機で一度に運べるが)。ロケットの打ち上げと探査機や衛星の運用、重量物輸送できる航空機の開発(現実の重量物輸送できる航空機は宇宙用のシャトルやロケットの輸送のために作られた)、電波天文の技術を利用したSETI、といったことが宇宙科学研究所のやっていることになる。天文台兼エアロスペースインダストリーといった色合いが強い。
光子力研究所と科学要塞研究所は、業務がかぶる部分もあるので、情報を開示しあえば、それなりに協力が可能ではある。しかし、科学要塞研究所が、ロボットの設計製作や超合金NZについて、光子力研究所から学ぶ部分は無いだろう。科学要塞研究所は、兜十蔵の仕事の直系に特化した研究を、戦闘目的でやっている。そのかわり、分野の拡がり(利用技術など)といった部分は、光子力研究所の方が進んでいるはずである。
宇宙科学研究所は、興味の向きが全く違っていて、ロケットや航空機を作る技術の蓄積が突出している。一方、光子力研究所は気象観測用の小型ロケットしか持たず、軌道上に何かを打ち上げるどころではない。航空機の開発にしても、飛ばせる重量を考えると、むしろ先行しているのは宇宙科学研究所の方であるから、この部分で光研や科研から技術を学ぶ必要はない。しかし、超合金な材料を作るノウハウは全く無いから、買ってくるとかもらってくるといった形で2つの研究所の支援を仰ぐということはあり得る。
マジンガーシリーズの3研究所は、個性も持っている技術も所長のバックグラウンドもまるで違うので、そう簡単に協力して何かをする、というのは無理ではないかと思う。支援を仰いだって仰がれたって、お互い困惑するだけではないかと。きっちり分担を決めておけばいいのだろうけれど……。