56話外伝〜 −危機を呼ぶエロ博士!−
by TOM.O
注;それぞれ各国語のネタなので、何語で話しているかを「かぎかっこ」で表します。
読みにくい部分はお許しください。
日本語(と言うかその人本人の言葉)「 」/心の中( )
英語『 』/ドイツ語【 】/ラテン語“ ”
以下シュバイラー博士とエルザを救出した場面以降、一段落して・・・
シュバイラー 『宇門君、ありがとう。では、改めて挨拶から始めよう』
宇 門 『そうでした。先生にお会いしたのは今が初めてですからね。まずこれはわたしの息子、大介です』
この間、甲児がひかるとマリアに通訳している。
大 介 『はじめまして』
宇 門 『そしてNASAの研修を終えうちの研究所にてわたしの右腕として働いている兜甲児くん、ダブルスペイザーの開発製作者であり操縦者です』
甲 児 『兜甲児です、よろしく』
宇 門 『ダイザーチームの牧葉ひかるさん、マリンスペイザーの操縦者です』
ひかる 「 I'm sorry...I can't speak English 」
シュバイラー 「 No, You do speak English !! It's Great ! 」
ひかる 「 Thanks, I am studying English now 」
恥ずかしそうにうつむくひかるに目尻が下がるシュバイラー博士。
宇 門 『そして大介の妹のマリア、ドリルスペイザーの操縦者です』
甲児が通訳しようとするとマリアはすらすらとしゃべり始めた。
マリア 『初めまして。お会いできて光栄です』
甲 児 「あれ?マリアちゃん、英語しゃべれるのか?」
マリア 「うーん、なんだかよくわかんないけど頭の中で勝手に意味がわかって、勝手に言葉が出てくるの」
大 介 「フリード星人は自動翻訳の能力を持っているんだ。どこの星の言葉でもわかるようにね」
ひかる 「便利な能力ね。あたしもがんばってみんなに追いつかなきゃ」
宇 門 『それでは先生、我々はベガ星連合軍の攻撃に備えてすぐに日本へ戻らなければなりません。短い時間でしたがお会いできてうれしかったです』
シュバイラー 『宇門君、せっかくここまで来てそれはないだろう。スペースアイの話もしたいし、せめて1〜2日くらい滞在してくれんか?』
大 介 『父さん、博士がそうおっしゃるなら少しくらいお邪魔してったらどうです?我々が一足先に帰りますから・・・』
シュバイラー 『いやいや、みなさんも是非。エルザも同年代のみなさんと話してみたいだろうし・・・なあエルザ?』
エルザ 『はい。是非』
宇 門 『そうですか・・・それじゃぁお言葉に甘えて』
「大介達も休暇のつもりでのんびりしなさい」
こうして宇門所長とダイザーチームはシュバイラー博士の家に滞在することとなった。
ダイザーチームはエルザに部屋へ案内されて行った。
その頃応接室では・・・
シュバイラー 【ところで宇門君、例のモノは持ってきてくれたかね?】
宇 門 【ああ、ひかるさんに持ってきてもらいましたよ。ご覧になりますか?】
シュバイラー 【おお、是非。それでひとつ頼みがあるんだが・・・彼女に着てもらえるかね?】
宇 門 【は?先生、あれはエルザへのおみやげではなかったのですか?】
シュバイラーひとつ咳をして言った。【いやぁそう、もちろんそうだよ。しかしやはり本場の着こなしを見てみたいからねぇ】
宇 門 【はあ・・・わかりました】
宇門所長はひかるを呼んだ。
20分ほどして応接室に着物を着たひかるが現れた。
シュバイラー 「 Oh----Wonderful !! ニッポン、ヤマトナデシコ!」
ひかる 「あら、シュバイラー博士は日本語も話せるんですか?」
宇 門 「わたしが留学していた時に先生に頼まれてね、少し教えたんだよ」
シュバイラー 【宇門君、いやぁ素晴らしいねぇ。やはり着物には黒髪だなぁ・・・うなじというモノが見えないのがちょっと残念だが・・・ナマ肌を見せてくれとはダイレクトすぎるかな・・・うん、日本風にチラリズムを頼むと言えばいいのか】
宇門所長はシュバイラーの独り言に頭を抱え、素晴らしいの言葉以外はひかるに通訳しなかった。
シュバイラー 【ヒカル、良かったら日本のことをいろいろ教えてくれないか?】
宇 門 「ひかるくん、先生が日本のことをいくつか教えて欲しいと言うんだが、どうだろう?」
ひかる 「え・・・でもわたしの英語じゃ会話になりませんよ?」
シュバイラー 「ニホンゴ、スコシナラ ダイジョブ、ダイジョブ」
ひかるは微笑んでうなずいた。「わかりました。じゃあ着替えてきますね」
シュバイラー 【それではあとでわたしの書斎に来なさい】
シュバイラーの表情を見て宇門所長の脳裏に不安がよぎった。
宇 門 (また先生の悪い癖が出たか・・・。だがいくらなんでもこんな若い娘には悪さはしないだろう・・・ましてや相手は天下のダイザーチームの一員だし 汗)
宇門所長は流れる冷や汗をぬぐった。
ひかるは着替えに戻った。部屋にはマリアがいた。
マリア 「なんだったの、そんなカッコして?」
ひかる 「着物を着た日本人を見たかったみたい。次は日本のお勉強ですって」
マリア 「宇門のおじさまの先生って言うからどんなにえらい博士かと思ったけど、なんかヘンなおじさんね」
ひかる 「でもま、所長の立場もあるから無下に断れないし・・・じゃあちょっと行ってくるわね、マリアさん」
マリア 「ええ、またあとで」
ひかるは電子辞書を片手に一生懸命シュバイラー博士に日本の歴史や伝統のこと、自分の牧場の話などをした。
シュバイラーは片言の日本語と簡単な英語で相づちを打ち、宇宙のことについていろいろと話してくれた。
ひかるは英語が通じると会話が楽しくなり、時間が経つのも忘れた。
シュバイラーは感動すると大げさにジェスチャーをして、ひかるの手を握ったり肩に手をまわしたり抱きしめたりする。
ひかるは外人がハグやキスをしたり頬を付けたりして、感謝や愛情・友情などを表現するのを映画やTVでよく見ていた。
だからシュバイラーの反応はごく自然なモノと思っていたが、どうも時間が経つにつれてその度合いが増してきているように感じた。
かと言ってひかるの性格上、露骨に嫌な表情や態度は見せられない。
ひかる 『あの・・・そろそろみんなのところへ戻らないと・・・ベガ星連合軍のことも気になりますし』
ひかるは何とか言い訳をしてシュバイラーの書斎を離れた。
シュバイラー 『それではまた夕食後に・・・今度はマリアと一緒に来てくれるかな』
応接室に顔を出すと甲児とマリアがいた。
甲 児 「よう、やっと解放されたか」
ひかる 「所長と大介さんは?」
マリア 「研究所と交信してるわ。定時連絡」
ひかるは甲児に首をかしげながら訊いた。
ひかる 「ねぇ甲児くん、外国の人って人にベタベタ触るのが習慣なの?」
甲 児 「うーん、そうだなぁ・・・基本的に挨拶や気持ちの表現としてのスキンシップはよくやるよ。日本人はそういう習慣がないから俺もアメリカ行ったばかりの時は少々とまどったけどな。こっちもそれに応じないと拒絶しているように感じられることもあるし・・・」
ひかる 「そうなの。じゃあ仕方ないのね」
根がマジメで田舎育ちのひかるは、先ほどまでの疑問を打ち消し、シュバイラーの行動を素直に認めた。
ひかる 「博士が今度はマリアさんも一緒に話したいって言ってたわ」
マリア 「えーーーーあたしも?ヤダなぁ・・・あのオッさん、どーもうさんくさいのよね」
マリアはイヤそうな顔をした。
甲 児 「所長の恩師だぜ。マリアちゃん、まここはひとつお年寄りのワガママだと思ってさお遊びの相手しに行ってやれよ」
甲児もずいぶんとヒドイことを言う。そこへエルザが現れ、甲児の顔が引きつった。
だがしかし日本語がわかるはずもなくエルザは笑顔で3人に言った。
エルザ 『夕食の準備ができました。さあどうぞ』
甲 児 「待ってました!腹減ってたんだ」
ひかるとマリアも甲児に続いた。
夕食は和やかな雰囲気の中、皆ゆったりと楽しんでいた。
会話の内容はスペースアイやベガ星連合軍などの話から、いつの間にか日本の食文化の話に変わっていた。
シュバイラーが昔宇門所長にもらったという箸を持ちだしてきた。
シュバイラー 『宇門君、君にもらったこのチョップスティックだが、どうもわたしには上手く使いこなせなくてね・・・』
シュバイラーは箸を握りしめ皿に顔を近づけてサラダを掻き込むように口に運んだ。
シュバイラー 『こんなふうにしか使えんのだよ』
それを見てみんなは笑った。
ひかる 「まあ博士、それじゃあ犬食いですわ」
シュバイラー 「・・・イヌグイ?」
ひかる 「ああええと・・・」
ひかるは一生懸命考えて『 We call it " Doggy style " 』と言った。
マリアを除く全員がスープや水を吹き出した。
エルザは真っ赤な顔をしている。
ひかる 「あら、あたしなんかヘンなこと言った?」
甲 児 「ひ、ひかるさん・・・それは " eat-like-a-dog manner " って言うんだよ」
ひかる 「ああそう・・・」
シュバイラー&エルザ ( ass hole ?? )
シュバイラーとエルザは宇門所長と大介の方を見たが、2人は無関心を装う。
シュバイラー (うーむ、ヒカルはああ見えて実は大胆な娘なのか?)
ひかるとマリアは顔を見合わせて「ふーん・・・」と言った。
そのあと日本人男3人は気まずい雰囲気の中、無口で食事を続けていった。
食事が済んで応接室で歓談していると、シュバイラーが来てひかるとマリアに声をかけた。
シュバイラー 『さあそれじゃ書斎で話の続きをしよう。マリアも是非いらっしゃい』
ひかるとマリアはシュバイラーの書斎へ向かった。
シュバイラー 『マリア、君は英語は大丈夫なんだね』
マリア 『難しい言い回しやスラングはわかりませんけど・・・』
シュバイラー 『そうか。ところで君と大介君は宇門君の子供と聞いたが、あの堅物が良く結婚なんかしたね。君たちを見るからにそれはそれは美しい母君だったんだろうね』
マリア 『ええまあ・・・』
宇門所長は2人がフリード星人であることをシュバイラー博士には隠していた。
シュバイラー 『どんな女性だったのかね?宇門君はどこで知り合ったんだろう』
シュバイラーは、異性とは一切無縁に見えた弟子の恋愛話に非常に興味があるようだ。
マリアは話の辻褄を合わせるのに苦労した。
マリア 『母はわたしが幼い頃に亡くなったので、あまり記憶がないんです』
これ以上突っ込まれるとボロが出そうなので、マリアは話題を変えた。
今度はなぜ2人がベガ星連合軍との戦いに赴いたかの話になった。
しばらくその話に耳を傾けていたシュバイラーは大きくうなずいた。
シュバイラー 『ヒカルもマリアも、とても素晴らしい女性だ。日本の女性は控えめで母性本能が強く、男を陰から支えると聞いていたが、君らのように自ら戦場に赴く勇敢でアテナのような女性もいるんだな』
2人はこの賞賛に笑顔を見せた。2人の若い娘のまぶしい笑顔にシュバイラーは心ときめいた。そして片言の日本語をしゃべってみせた。
シュバイラー 「オネエサン キレイ カッコイイ ステキ」
マリア 『日本語いっぱい知ってますね』
思ったよりイイ反応が返ってきたため、シュバイラーは調子に乗った。
シュバイラー 『うむ、こんなのも知っとるぞ』「コンヤ キミヲ タベチャウゾ」
ひかるとマリアは眉をひそめたが、乾いた笑いでごまかした。
シュバイラーはウケたと勘違いし、かつて若き頃の宇門所長に教わった言葉や日本から取り寄せた平凡パンチとかいう男性誌に載っていたスラングを次々と並べた。
シュバイラー 「シーツノ ウミデ アサマデ オヨゴウ」「ヘンタイ ダイスキ」
「ボクノ センカンヤマト ミセヨウ」「キミノ ベンテン オガミタイ」
2人には意味がよくわからない言い回しもあったが、話の流れからおそらく下品なスラングだろうと解釈した。
ひかるとマリアは無言になり、冷めた視線でシュバイラー博士を見つめる。
さすがのシュバイラー博士も、2人の刺すような視線に言葉が止まった。
慌ててメモ書きに目をやる。
シュバイラー(場がしらけたときに言う言葉・・・お、これがいい)
シュバイラー 「 」(自主規制 ご想像にお任せ 笑)
ひかるとマリアは顔を真っ赤にして声を張り上げた。
ひかる&マリア 『そんな日本語いったい誰に教わったんですかーーーっ!?』
シュバイラー 『宇門君だ』(きっぱり)
2人は顔を見合わせた。 「所長・・・」 「おじさま・・・」
実際のところ宇門所長が教えたのは映画やドラマでの粋な口説き文句だけだったが、シュバイラーにとって日本語を教えてくれたのは宇門源蔵であり、シュバイラー的には嘘を言ったつもりはない。
宇門所長は濡れ衣を着せられたようなもんだが、事情を知らないひかるとマリアの宇門像が音を立てて崩れて行った。
シュバイラーはげんなりした2人の様子に話題を変えることにした。
ひかるもマリアもすでにあまり乗り気でないが、一応おつきあいで相づちを打つ。
シュバイラー 『ヒカルの牧場ではロデオなどもやるのかね?』
ひかる 『ええ、馬も牛もやりますよ』
シュバイラー 『大介くんも甲児くんもうまいんだろうね』
マリア 『あたしも乗るんですよ』
シュバイラー 『ほぉマリアもか。さすがダイザーチームの女戦士だ。ヒカルはやらんのかね?』
ひかる 『いえあたしは・・・』
マリア 『団兵衛おじさまに怒られちゃうもんね』
シュバイラー 「ダンベイ?」
マリア 『ひかるさんのお父様です』
シュバイラー 『ほほぉ、ベガ獣との戦いはOKでロデオは禁止、変わっとるねぇ。父君はやるんじゃろう?』
ひかる 『ええ、バッファローも乗りこなせると言ってました』
シュバイラー 『よほどガタイのいいお父さんなんだね』
ひかる 「いえ・・・あたしの父は小さいんです・・・えーっと英語だと・・・」
シュバイラー 「チチ・・・チイサイ・・・(確か昔聞いたことある言葉だな?)」
シュバイラーは年期の入ったノートに走り書きした日本語のメモに目をやった。
シュバイラー (ちち、ちいさい・・・何々?乳=Boobsのことか・・・つまり、small boobsと言う意味か)
シュバイラー 『ヒカルを見る限り、そうは見えないがのぉ』
ひかる 『ご覧になりますか?』
シュバイラーは飛び上がった。
シュバイラー 『何ーーーーーっ!?いいのか?それは是非!(こんな若い娘の、それも日本人のおっぱいが見られるとは・・・生きてて良かった!)』
ひかるは胸ポケットに入っている写真入れを出そうとした。
それを見たシュバイラー博士はひかるの胸元をつまんで中を覗き込んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」
甲 児 「ななななななんだぁ!?」
大 介 「ひかるさんの悲鳴だ!」
大介と甲児はシュバイラー博士の書斎に駆け込んだ。
大 介 「どうした、ひかるさん、マリア!ベガ星連合軍かっ?」
そこで2人が見たものは・・・
分厚い宇宙工学の専門書を手にシュバイラーをはたき落としたひかると、床に突っ伏したシュバイラー博士、そしてその横で冷たい目でシュバイラーを見下ろしてるマリアだった。
遅れて書斎に駆け込んできた宇門所長は、一目でその場の状況を悟った。
宇門所長はシュバイラー博士を抱き起こし、誰にもわからぬようラテン語で話しかけた。
宇 門“先生、先生大丈夫ですか?また悪い癖が出たんですか?いったい何を・・・”
シュバイラー“うーむ・・・宇門君、さすがはダイザーチームの女戦士だ。惚れ直したっ!”
宇 門 “ 先生・・・(この期に及んで懲りないオヤジだ・・・涙) ”
ひかるははっと我に返り、自分のしたことを反省して頭を下げた。
ひかる 「所長、すみません・・・つい・・・シュバイラー博士ごめんなさい」
マリア 「ひかるさんが悪いんじゃないわ。このスケベじじぃ!」
甲 児 「おいおいマリアちゃん言葉が過ぎるぜ」
大 介 「いったい何があったんだ」
ひかるは説明できずに涙目になっている。
マリア 「やってらんないわ、もう。ひかるさん、行きましょ」
マリアはひかるの手を引っ張って書斎を出て行こうとした。
シュバイラーは宇門所長に助け起こされ、豪快に笑った。
シュバイラー “ 宇門君、ヒカルとマリアをわしのところに預けてくれんかね?こんなに血湧き肉躍るような気持ちは久しぶりだ。この2人がいつもそばにいてくれるなら研究にも張り合いが出て、長生きできるってものだ。はっはっはっ ”
宇 門 “ 先生、何をおっしゃってるんですか、いい歳をして・・・ ”
シュバイラー “ 年寄りだとバカにするのか宇門君。わしはまだまだ若いモンには負けとらんぞ!ちゃぁーんと夜の方だって・・・ ”
ばちぃぃぃぃーーーーーーん!!
マリアの平手打ちがシュバイラー博士に炸裂した。
マリア “ 男って、最低・・・ ”
マリアのラテン語が、シュバイラーの書斎に冷たく響きわたった。
シュバイラー博士のラテン語をマリアの脳は自動翻訳し、すべて理解していたのだ。
同様に大介も理解しており、もともとしゃべれる宇門所長とともに固まっていた。
甲児とひかるだけが???となっている。
マリアは宇門所長に冷たい視線を投げかけた。
マリア 「おじさま、あたし達、先に休ませていただきますから。あたし達を気にせず楽しいお話をどうぞっ!」
宇 門 (ち、違うぞマリアちゃん。誤解だぁぁぁぁぁ!!)
宇門所長は口をパクパク冷や汗タラタラ、いつもの威厳はいったいドコへ・・・。
宇 門 (この危機的状況をどう打開すればよいのだ・・・不謹慎だが、こんな時、ベガ獣でも攻撃してきてくれたら・・・)
そこへ宇宙科学研究所の林から緊急連絡が入った。
林 《 所長、防衛庁から緊急発信です。試運転中の新型潜水艦が日本海沖Xポイントの地点でSOS信号を発信したまま行方不明となったそうです 》
宇 門 「わかった。大介、ひかるくんマリアちゃんと急いで現場へ急行してくれ。甲児くんはわたしを研究所まで頼む」
大介・甲児・ひかる・マリア 「はいっ!」
宇 門 『(助かった・・・)先生、緊急事態が起きました。夜分にすみませんが、我々はこれで失礼させていただきます』
するとシュバイラー博士は、先ほどまでのエロ親父はどこへやら、真剣な表情に変わり宇門所長の手を堅く握った。
シュバイラー 『がんばりたまえ、宇門君。第2第3のスペースアイを打ち上げる時は、いつでも力になるぞ。必ず、ベガ星連合軍の奴らを倒してくれ』
宇 門 『先生・・・』
宇門所長もその手を堅く握り返す。
シュバイラー『大介君、甲児君、そしてヒカルにマリア、君たちの健闘を祈る』
4人は力強くうなずいた。
星がきらめく夜空に、グレンダイザーと3機のスペイザーが飛び立つ。
パイプをくわえたシュバイラー博士とエルザは、機体が見えなくなるまで手を振って見送った。
シュバイラー 【宇門君、そして素晴らしい若者達、地球の平和は君たちの肩に掛かっている。がんばってくれたまえ】
4機の光は小さくなり、星空の中に溶け込んで行った。
ダブルスペイザーを操縦しながら甲児は後部座席の宇門所長に話しかけた。
甲 児 「シュバイラー博士はすごい方ですね」
宇 門 「いろんな意味でケタはずれな先生なんだよ。豪傑という言葉がピッタリだ」
今日1日の出来事を思い返して、宇門所長はグッタリと背もたれに身体を預けた。
甲 児 「所長、ずいぶんと疲れたでしょう。ゆっくりと休んでください」
宇 門「 ありがとう甲児くん。それでは少し休ませてもらおう」
宇門所長は目を閉じた。
スイスへ来て、偽のシュバイラー博士に非難されるわ、スペースアイは爆破されるわ、恩師の行動に悩まされるわ、女性軍には冷たい目で見られるわ・・・さんざんな1日だった。
宇 門 (わたしの人生は宇宙開発にすべてを捧げることだ・・・これからもこの思いは決して変わらない)
一方ひかるはシュバイラー博士と書斎で過ごした時間を思い出していた。
シュバイラー博士のセクハラまがいの行動を、ひかるは外国人としてごく当たり前の習慣なんだと未だに信じて疑っていない。
ひかるの胸元を覗き込もうとしたことだって何かの間違い・・・言葉がうまく伝わらなかったためだと思っている。
異国の言葉がしゃべれると、大勢の人と話ができる。
片言ながら話が通じ合った時の感動が蘇ってきた。
ひかるはベガ星連合軍との戦いが終わったら、外国語や宇宙の勉強をするために大学を目指したいと思った。ひかるの夢はふくらんだ。
マリアは腹立たしい気持ちがようやく収まり、眼下に広がる月の光に照らされたアルプス山脈に心奪われていた。
自然の偉大さにシュバイラー博士の無礼な振る舞いに対する怒りは消え失せ、シュバイラーと祖父としてマリアを育ててくれた侍従の面影がダブった。
マリア 「おじいちゃん・・・」
ベガ星連合軍との戦いはますます激しさを増していく。
マリア 「絶対負けないから・・・おじいちゃん、見守っていてね・・・」
マリアは目尻に浮かんだ涙をぬぐった。
空がだんだん明るくなり、4機はまもなく日本上空にさしかかる頃だった。
甲児はベガ星連合軍の罠で爆破されてしまったスペースアイのことを考えていた。
朝焼けに光る空を見つめながら甲児は呟いた。
甲 児 「くそぉ・・・負けるもんか」
そこへデュークからの通信が入った。
デューク 「よしみんな、フルパワーだ。ひかるさんとマリアは僕についてきてくれ。甲児くんは父さんを研究所に送り届けたらそのまま待機」
甲児・ひかる・マリア 「了解っ!」
グレンダイザーチームが大空に駆って行った。
−おわり−
−あとがき(と言うか言い訳)−
シュバイラー博士エロ親父説からとんでもない妄想が生まれました。
皆さんの妄想も取り入れつつ、軽い気持ちで書き始めたら、シュバイラー博士が暴走しました(笑)。
思った以上にたくましいエロ親父でした(爆)。
他のキャラクターも、グレンの世界観を壊すことなく書き進んでいったところ、ひかるさんが案外ボケキャラなんだと言うことに気づきました。
ひかるさんは田舎の大自然の中で育った純粋(天然)なお嬢さん、MAでもボケキャラですが、その基は彼女の一途な性格にあるんでしょう。
今回イイ味を出してくれました。
また、どうしてもエロい内緒話をする宇門所長が想像できず、結局一番ヒドい目に遭ったのは宇門所長になってしまいました。
宇宙にしか興味のない堅物なだけに、濡れ衣を着せられても言い訳できず、かと言ってシュバイラーのように開き直るふてぶてしさもない。
散々なスイス出張になってしまいましたね(笑)。
内容はもちろんフィクションですが、ネタの半分は実話だったりしてます。
わたしがアメリカの友人宅に滞在した時に感じた異国文化の違い、そして日本語的英訳でかました大ボケ、日本語と英語の発音が似ていて大爆笑したこと、海外の友人達(女性)が日本に来た時にバカ日本人が教えた下ネタ言葉の数々、そんなものを織り込んでみました。
下ネタに関しては、わたし自身あまりグロい下ネタは好きではないので、この程度に収めました。
実際友人達はもっとすごい日本語(ズバリそのもの 汗)を意味わからずしゃべってましたが、相手はひかるさんとマリアちゃん、現代ならともかく1970年代当時の18歳と14歳相手にそれは無理!と思い、オヤジが使いそうな言葉を選んでみました。
てなことで無理矢理つなげたため、少々話の流れに無理があることをお許しください。
そして最後はやはりあの甲児くんのセリフにつなげたく、こういう終わり方にしました。
シュバイラー博士もただのエロ親父で終わらせるにはあまりにもかわいそうなので(笑)、最後くらいは科学者として宇門所長の師匠として威厳のあるところを見せてもらいました。
シュバイラー博士、エロ親父だけど憎めないお茶目な印象を持っていただけたら良いのですが・・・。
文才のないわたしが書いた妄想話、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。