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策略は胸の奥深く! 〜シュバイラーくん、はじめての日本訪問

byTOM.O


注;それぞれ各国語のネタなので、何語で話しているかを「かぎかっこ」で表します。
  読みにくい部分はお許しください。
  日本語(と言うかその人本人の言葉)「 」/心の中( )
  英語『 』/ドイツ語【 】/ラテン語“ ”


〜宇宙科学研究所 観測室〜

  RRRRRRR・・・
  電話が鳴り、宇門所長は受話器を取った。

  宇 門「はい、宇宙科学研究所、宇門です」

  突然受話器の向こうから流暢なドイツ語が流れてくる。

  シュバイラー【やあ宇門君、久しぶりだね。今わたしが何処にいるか当ててみたまえ】
  宇 門【シュバイラー先生!何処って・・・スイスにいらっしゃるのでは?】
  シュバイラー【ふっふっふ・・・実は今東京国際空港におるんじゃよ】
  宇 門 (なななななにぃ〜っ!?)【先生、それは一体どう言う・・・】
  シュバイラー【昨日まで北京で人工探知衛星システムの研究顧問としてプログラミングをしていたんじゃ。
         今日北京を発ったんだが、スイスへの直行便がなく日本でトランジッションのため途中寄航してな。
         偶然、君のことをふと思い出したんだ】
  宇 門【そうですか・・・それでは空港で少しだけお会いできるんですね。今から伺いましょう・・・次の飛行機は何時ですか?】
  シュバイラー【うむ偶然とは言え、せっかくだからしばらく日本に滞在することにしたんだ。迎えに来てくれるかね?】
  宇 門【迎えって・・・先生お一人ですか?エルザはどうされたんですか?】
  シュバイラー【エルザは留守番だ】
  宇 門(計画的だ・・・)

  こうなってしまえば何を言ってももう無駄というモノ、宇門所長は観念して所員を迎えに出すことにした。

  宇 門【わかりました先生、それでは今から所員を向かわせます】
  シュバイラー【ところで・・・ダイザーチームは出撃中かね?】
  宇 門【いえ・・・待機中ですが・・・】
  シュバイラー【ヒカルかマリアに迎えに来てもらえるとありがたいんだがのぉー】
  宇 門 (来た・・・)【わかりました、ご希望に添えるよう努力いたします】

  受話器を置いて宇門所長はため息をついた。

  宇 門 「ここは甲児くんとひかるくんに行ってもらうか」

  宇門所長はもう一度受話器を持ち上げた。

 

 数時間後 〜羽田東京国際空港〜

  東京国際空港に甲児とひかるが到着した。
  甲児は駐車場で待つことにし、ひかるが到着ゲートへ向かった。

  ひかる『シュバイラー博士、お久しぶりです。あら、素敵なスーツですね。よく似合ってらっしゃる・・・』

  シュバイラーは真っ白のスーツに黒のリボンタイを締めていた。
  シュバイラーは早速ひかるを抱きしめ髭の頬をなすりつける。

  シュバイラー『おおヒカル、また一段と美しくなったのぉ。英語はずいぶんと上達したようだね?』
  ひかる『ええ、あれから一生懸命勉強したんです。甲児くんに教わって』
  シュバイラー『余計なことは教わっとらんじゃろうな?』
  ひかる『・・・はぁ?』
  シュバイラー『いやいやこっちのこと。さて、どっちに行けばよいのかな?』

  ひかるは甲児の待つ駐車場にシュバイラー博士を案内した。
  甲児はシュバイラー博士と握手をした。

  甲 児『どうも、よくいらっしゃいました』

  甲児はシュバイラーの服装を見て考えた。

  甲 児(なんかどっかで見たような・・・うーん思い出せないなぁ)
  ひかる「どうしたの、甲児くん?」
  甲 児「いや、なんでもない。それじゃ研究所に行こう」

 

〜宇宙科学研究所 観測室〜

  宇門所長とシュバイラー博士が握手をしていた。

  シュバイラー【いやぁ宇門君、元気そうで安心した】
  宇 門【先生もお元気そうで・・・。そう言えば例のモノご覧になっていただけましたか?】
  シュバイラー【うむ、君の設計したコズモスペシャルのモックアップを作ってみたんだが、なかなか良い出来だったよ。
           多少エンジンに手を加えた方がよい部分もあるが、それはまた設計図の方に書き込んでおくことにしよう】
  宇 門【ありがとうございます。先生のおかげで、月までの航行行程がずっと早くなりそうです。
       やはり先生に相談して正解でした】
  シュバイラー【いつでも力になるぞ】 
  宇 門【ただ・・・戦争のための開発になってしまったことが悔やまれます】
  シュバイラー【なぁに宇門君、地球の平和のためだ。君は間違っていない・・・ベガ星連合軍を倒し、地球に平和を
           もたらすことが宇宙全体にとっても結果、素晴らしいことになるのだ。自信を持ちたまえ】
  宇 門【先生・・・】

  宇門所長は感動して、シュバイラー博士の手を握った。

  シュバイラー【そして1日も早く平和を手に入れ、ヒカルとマリアをわたしのところに預けなさい】
  宇 門【・・・】(この人はこれさえなければ本当にスゴい人なんだが・・・汗)

  観測室へ大介とマリアが入ってきた。

  大 介『博士、ご無沙汰しております』
  マリア『いらっしゃいませ』
  シュバイラー『おお、大介君にマリア、久しぶりだな』

  シュバイラーは大介には握手を、マリアにはいつものごとくハグとキスで挨拶する。

  シュバイラー『マリア、少し背が伸びたんじゃないかね?』

  シュバイラーはマリアを抱きしめたまま訊いた。

  マリア『ええ、まあ・・・あの、お茶の準備ができましたからどうぞ』

  マリアは無理矢理シュバイラーの腕から抜け出すと、そそくさと観測室を出て行った。

  シュバイラー『ほっほっほ・・・まだまだ子供じゃな、照れおって・・・』
  宇門&大介(だから違うって・・・汗)

 

〜宇宙科学研究所 応接室〜

  応接室にてダイザーチーム4人と宇門所長はシュバイラーの北京での研究について聞いていた。

  宇 門『ところで先生、今晩はどちらへお泊まりになりますか?研究所にも来客用の設備はありますが、
       よろしければ我が家においでいただくこともできますが・・・』

  マリアの顔が引きつる。(え”・・・!)

  シュバイラー『うむ、その前にヒカルの牧場を見てみたいのでな、案内してもらえるかな?』
  ひかる『はい、わかりました』

  マリアはシュバイラーが宇門宅に来ないと聞いてホッと胸をなで下ろした。

 

〜ベガ星連合軍 月基地〜

  ベガ大王「今コマンダー・クロウから情報が入った。あの宇宙工学の権威、シュバイラー博士が隠密に来日しているらしい」
  ズリル「なんですと?もしやスペースアイに変わる何か新しいロケットの開発でも?」
  ガンダル「海底基地を破壊して、次は月面基地への調査でも始めるつもりでしょうか?」
  ベガ大王「わからん・・・だが、災いの目は小さいうちにつぶしておくに越したことはない。早急に目的を調査するのだ」
  ズリル・ガンダル「はっ!」

 

〜シラカバ牧場〜

  ひかるがジープにシュバイラー博士を乗せて連れてくる。

  吾 郎「父上〜!お姉ちゃんがお客さんを連れてきましたよぉ〜」
  団兵衛「客?誰じゃいったい」
  吾 郎「あれは確かCMでよく見た人なんですけど・・・思い出せないなぁ」
  団兵衛「TVに出てる有名人がなんでウチに来るんじゃ?」
  吾 郎「さあー?ウチの牧場の宣伝にでも来たんですかね?」
  団兵衛「そりゃ大事なお客様だ。吾郎、急いでもてなしの用意だ!」
  吾 郎「はい、父上!」

 

夜 〜牧葉家〜

  牧葉家ではシュバイラー博士を歓迎する盛大なパーティが開かれた。
  団兵衛とシュバイラーは気が合ったらしく、一升瓶片手に盛り上がっていた。
  驚いたことに、団兵衛は南部なまりの英語でシュバイラーと語り合っている。
  2人ともすでにろれつの回らない状態だ。つまみを持ってきたひかるが文句を言う。

  ひかる「お父さん、博士にそんなに飲ませちゃダメよ!」
  団兵衛「黙れひかる、男と男が分かり合うには言葉よりも酒なんじゃ酒」

  真っ赤な顔をして団兵衛が怒鳴る。

  団兵衛「お前もこっちへ来て一杯やれ、一杯・・・」
  シュバイラー「オッパイデモ イイゾ」
  ひかる「んもー!2人とも酔っぱらっちゃって・・・あたしはまだ未成年よ」

  ひかるはあきれたように2人を見下ろす。

  吾 郎「お姉ちゃん、この分じゃこの偉い博士、ウチにお泊まりになりそうだよ」
  ひかる「そうね。宇門所長に連絡してくるわ」

  ひかるは宇宙科学研究所に電話を入れた。

  ひかる「あ、所長。・・・そうなんです、お父さんが博士に飲ませちゃって・・・ええ、大丈夫です。
       はい、明日あたしが博士を研究所までお送りしますから・・・」

  この電話をコマンダー・クロウが盗聴していた。

  クロウ「ふっふっふ、ちょうどいい・・・研究所より警備が手薄なシラカバ牧場の方が襲いやすいぞ」

  コマンダー・クロウは月面基地に連絡した。

  ガンダル「よし、わかった。今から応援を送ろう」
  クロウ「いえ、たかが60過ぎのジジィ1人ぐらい、私め1人で充分です」
  ガンダル「だが牧葉ひかるがおろう」
  クロウ「誰にも気づかれず、任務を遂行して見せます」
  ズリル「わかった、頼んだぞ」
  クロウ「ははっ!」

 

深夜 〜牧葉家〜

  シュバイラーはベロンベロンに酔っぱらってベッドに寝かされていた。
  夜中にふと目を覚まし、しばらく自分の置かれた状況を把握するのに時間がかかった。
  そして牧葉家にいることに気づいた。
  酔いの手伝いもあってか、シュバイラーの悪い癖がむくむくとわき上がってきた。
  ひかるの部屋へ、ノドが渇いたと言って入り込もうと思い立ったのだ。
  もし失敗しても、酔っぱらっていて何も覚えていないと言えば大目に見てくれるだろう。
  シュバイラーはベッドから降りた。いつの間にか下着姿になっている。
  何を思ったかシュバイラー、クローゼットに掛かっていたワイシャツ、スーツをきちんと着て、ネクタイも締めた。

  シュバイラー『紳士たるもの、女性の部屋を訪れるときには正装でないと・・・』

  シュバイラーはふらつく足取りで部屋を出て行こうとしたが、あまりにもふらふらするので、その場にあったステッキも手に取った。

 

〜牧葉家 ダイニングキッチン〜

  ダイニングに来て、シュバイラーは吐き気を感じた。

  シュバイラー『どこかにバケツかなんかはないものか・・・』

  キッチンの隅に、赤と白のクリスマスで使ったと思われるバケツを見つけた。
  シュバイラーはそのバケツを手に取り、トイレへ向かおうとした−−−−
  が、足がもつれて床に倒れ込み、したたかに後頭部を打った。
  シュバイラーはそのまま眠りに落ちた。

  その頃コマンダー・クロウは牧葉家に忍び込んでいた。
  シュバイラーがいたと思われる部屋を覗き込んだが、姿が見えない。
  トイレにでも行ったかと廊下を歩いていくと、ものすごい音がキッチンから聞こえた。
  コマンダー・クロウはキッチンに向かった。  

  時を同じくしてひかるや吾郎も大きな物音を聞いて目を覚ました。
  団兵衛は酔っぱらって熟睡しているようだ。
  ひかるは用心深くキッチンの方へ向かった。
  キッチンのドアを開けると、そこにはベガ星連合軍のコマンダー・クロウがいた。

  ひかる「ベガ星人!」
  クロウ「しまった!」

  ひかるはレーザー銃を発射したが、コマンダー・クロウは身軽に飛び上がりそのまま窓を破って暗闇の中へ逃げていった。

  ひかる「逃げられたか・・・」

  ひかるは床に倒れているシュバイラーを見つけた。
  シュバイラーはなぜか白いスーツをきちんと着て、ヒジにはステッキ、脇にバケツを抱えたまま床に寝ころんでいた。

  ひかる『博士、博士しっかりしてください・・・』

  シュバイラーはビクともしない。そこへ眠たそうな吾郎が入ってきた。

  吾 郎「あれぇお姉ちゃんいったいどうしたの?」
  ひかる「ベガ星人が博士を襲ったのよ。ちょっと吾郎、手伝って」

  ひかると吾郎は、シュバイラー博士の巨体を引きずって、何とかベッドに寝かせた。

 

〜ミディフォーの中〜

  コマンダー・クロウが月基地と通信している。

  クロウ「ガンダル指令、ズリル長官、申し訳ありません・・・失敗しました」
  ズリル「なんだと?」
  ガンダル「大きな口を叩いた割には失敗か・・・たかが老人1人に」
  クロウ「しかし牧葉家にシュバイラー博士の姿はありませんでした」
  ズリル「どういう意味だ?」
  クロウ「私が忍び込んだ時は、キッチンにカーネル・サンダースの人形が転がっていただけでした」
  ガンダル「なんだその半ダースとか何とかは・・・」
  クロウ「地球人が好んで食べるフライドチキンの看板です」
  ズリル「そんな言い訳はどうでもよい!シュバイラーをさっさと捕まえてこい」
  クロウ「次は必ず!」

 

翌朝 〜宇宙科学研究所 休憩室〜

  ひかるはシュバイラー博士を研究所まで送ってきた。
  そして昨晩の出来事をみんなに伝えた。

  大 介「シュバイラー博士を狙うには、何かわけがあるんでしょうね。父さん、思い当たることはありませんか?」
  宇 門「わたしにもさっぱりわからん・・・もしかしたら、博士を誘拐してその頭脳を利用しようとしてるのかもしれん」
  甲 児「いずれにしろ、警備を強化した方が良いかもしれませんね」
  宇 門「と言うよりエルザに頼んでさっさと帰国してもらった方がいいと思うんだが・・・」
  大介&甲児「はぁ?」
  宇 門「あ、いやいや・・・なんでもない」

  宇門所長は二日酔いで寝ているシュバイラー博士のところへ行った。

  宇 門【先生、ご気分はいかがですか?】

  シュバイラーはうーんと唸ったまま起きる気配はない。

  宇 門【先ほどエルザから先生が日本へ行ってないかと連絡がありましたが・・・】

  シュバイラーはベッドから飛び起きた。
  頭がガンガンするが、そんなことお構いなしだ。

  シュバイラー【えええええエルザだと!?それで宇門君、君は何か言ったのかね?】
  宇 門【いえ特には何も・・・ただ、先生はまだ北京にいて明日には帰国するとおっしゃってましたと伝えておきました】
  シュバイラー【そうか、助かった・・・あしたーっ!?】
  宇 門【そう言わないと今すぐにでも北京へ飛びそうなくらい心配してましたからねぇ】

  宇門所長は次々と嘘八百を並べた。シュバイラーの顔がだんだん青ざめていく。
  シュバイラー博士は宇門所長の術中にはまった。
  そしてしぶしぶ明日帰国すると宇門に約束した。

  宇 門(やっとこれで安心できる・・・先生には申し訳ないが、ベガ星人も先生を狙ってるようだし、
       1日も早く安全な場所へ帰っていただいた方が良いんだ)

  宇門所長は安堵のため息をついた。

 

午後 〜宇宙科学研究所 応接室〜

  シュバイラーが応接室で休んでいると、ひかるが二日酔いに効く薬を持って来てくれた。

  ひかる『博士、明日帰国だそうですね。どこか日本で行ってみたい場所はありますか?』

  シュバイラーはふと考えた。

  シュバイラー(フジヤマもゲイシャも写真で十分だし、この際・・・)

  シュバイラーはおずおずと言った。

  シュバイラー『ヒカル、わしはトルコに行ってみたいんじゃが・・・』
  ひかる『トルコ?スイスからの方が近いんじゃありませんか?』
  シュバイラー『いや日本のトルコに行ってみたいんじゃ』

  シュバイラーの意味するトルコは、もちろんお風呂の方。
  しかしひかるがそれを知るはずもない。

  ひかる『わかりました。近くにあるか探してみますね』
  ひかる(八ヶ岳にトルコレストランなんてあったかしら?甲児くんに訊いてみよう)
  シュバイラー(うーむ、ヒカルもしばらく会わないうちにものわかりが良くなったもんだ。
           日本式マッサージパーラーを探してくれるとは・・・)

  2人の思考に大きな違いがあることを、このときは知るよしもなかった。

 

〜宇宙科学研究所 休憩室〜

  ひかる「甲児くん、この辺でどこかトルコ料理が食べられるところ知ってる?」
  甲 児「トルコ料理?なんだいそりゃ?」
  ひかる「シュバイラー博士が食べたいんですって。八ヶ岳にそんなレストラン無いでしょう?」
  甲 児「そうだなぁ、東京まで出ればいくらでもあるだろうけど・・・。そうだ、軽井沢まで足を伸ばせばあるんじゃないか?」
  ひかる「そうね、軽井沢ならきっとありそうね。すぐに調べてみるわ」

  ひかるは甲児に礼を言って休憩室を出て行った。

  マリア「ひかるさんも大変ね、ワガママおじいちゃんのお守りで」
  大 介「そう思うんなら少しぐらい手伝ったらどうだ、マリア」
  マリア「うーん、あたしどーもあの博士ニガテなのよねー。相性が悪いって言うか・・・」
  甲 児「マリアちゃん博士にビンタ食らわしてるからなー」
  マリア「もうしないわよ。いつまでも言わないで」

  事情はともかく、マリア自身もシュバイラーを殴ったことは反省している。
  宇門所長に対する誤解も解け、あの時のことはマリアにとって忘れたい出来事だった。

  ひかるは笑顔でシュバイラー博士の待つ応接室へ顔を出した。

  ひかる『博士、いいところ見つけました!ちょっとここから遠いんですけど、あたしが車でお連れします』
  シュバイラー『おおそうか、それは楽しみだ。時にヒカル、君も一緒に・・・入ってくれるのかね?』
  ひかる『ええもちろん、博士をお一人にはできませんから』

  シュバイラーは大喜びした。『日本での一番の思い出となりそうだな。素晴らしい夜にするぞー!』

 

〜ベガ星連合軍 月基地〜

  ベガ大王「今、コマンダー・クロウからシュバイラー博士と牧葉ひかるが一緒に出かけたと言う情報が入った。
         早速2人を生け捕りにして人質とするのだ。今度こそ失敗は許されんぞ」
  ズリル「ではシュバイラーの顔を知っているこのわたしが・・・」
  ガンダル「ズリル長官は負傷しておる。ここはわしに任せてゆっくり休むがよい」
  ベガ大王「よしガンダル、行けっ!」
  ガンダル「はっ!」

 

夕方 〜軽井沢 トルコレストラン〜

  ひかるはシュバイラー博士と一緒に軽井沢のトルコレストランへ到着した。
  入り口へ入って受付に声をかける。

  ひかる「予約をお願いした牧葉ですけど・・・」
  ボーイ「少々お待ちください」

  レストラン内部は薄暗い灯りで、あまり広くはなかった。
  緩やかな音楽が流れていて、雰囲気はなかなか良い。

  シュバイラー(ほぉ・・・ここがウワサの日本式マッサージか・・・薄暗くてよく見えんが、食事もできるようじゃの。
           さすが日本はひと味違う)
  シュバイラー『ヒカル、服は何処で脱げばいいんじゃ?』
  ひかる『えっと・・・たぶん受付にクロークがあると思うので、そこに預けられると思います』
  シュバイラー『そうかそうか』

  シュバイラーは早速コートを脱ぎ始めた。
  そこへ突然ひかるの通信機が鳴り響いた。

  ひかる『博士、すみませんちょっと失礼します』

  ひかるはシュバイラーを置いて、レストランの外へ出て応答した。

  ひかる「はいこちらひかる」
  大 介「ひかるさん、今その近辺にミディフォーが数機着陸したようだ。シュバイラー博士を狙っているのかも知れない。
       マリアを応援に向かわせた。気をつけるんだ!」
  ひかる「わかったわ」

  ひかるは通信機を切り、レストランへ戻ろうとした・・・その時!

  「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

  レストランの中から悲鳴が聞こえた。

  ひかる「しまった!ベガ星連合軍か!?」

  その時レストランの中では−−−−−

  スッポンポンのシュバイラー博士がダイニングの真ん中に立っていた。
  女性客とウェイトレスが悲鳴を上げたのだ。
  同時に裏口から飛び込んだガンダル司令とコマンダー・クロウが、博士の姿を見て数人のベガ兵士と立ちつくす。

  クロウ「ガンダル司令、あれがシュバイラー博士でしょうか?」
  ガンダル「バカモン!あんな露出狂の変態ジジイが世界的権威の宇宙工学博士のワケないだろう!外を探せっ!」

  素っ裸のシュバイラー博士の横を、ガンダル司令とクロウ、ベガ兵士が駆け抜けて行く。
  ドアから飛び出すと、そこにはひかるがいた。

  ひかる「ガンダルっ!」
  ガンダル「おのれ牧葉ひかるか!こうなったらこの女だけでも引っ捕らえろ!」

  ひかるとベガ兵士の戦闘が始まった。
  ひかるはドアを閉め、背中越しに大声で叫んだ。

  ひかる『博士!安全な場所に隠れていてください!』

  ひかるは次々と兵士を倒していった。ガンダルがレディガンダルに変身する。

  レディ「何をしている!たかがこんな小娘一人に−−」

  レディガンダルはひかるの隙を突いてレーザー銃を発射した。

  ひかる「あぁっ!」

  レーザーはひかるの足をかすった。ひかるはその場に崩れ落ちた。

  レディ「手こずらせおって・・・さあ覚悟おし」

  ひかるは立ち上がれず、じりじりと兵士に追い詰められた。
  兵士がひかるの身体をつかみあげようとした瞬間、兵士の1人が悲鳴を上げ消滅した。

  ベガ兵士「ぐわぁーーーっ!」

  もう1人、ひかるの横にいた兵士も消滅する。

  マリア「ひかるさん、だいじょぶ?」

  マリアがレーザー銃を片手にバイクから飛び降りた。

  ひかる「マリアさんっ!」

  マリアの銃が、ベガ兵士を次々と倒していく。コマンダー・クロウは身軽に飛び回り、マリアを翻弄した。
  しかしマリアの予知能力が閃き、移動の瞬間をマリアの銃が捕らえた。
  コマンダー・クロウもやられ、残るはレディガンダル1人となった。

  レディ「おのれマリアー!今一歩のところを・・・ええい、覚えておれっ!」

  レディガンダルは急いでミディフォーに乗り、退却していった。

  マリアはひかるのところへ来てケガの様子を見た。
  火傷のように赤くなっているが、大したケガではないようだ。

  マリア「大丈夫、ひかるさん?・・・歩ける?」
  ひかる「ええ・・・なんとか。あ、マリアさん、あたしのことはいいからシュバイラー博士を頼むわ。
       レストランの中に隠れてるはず」
  マリア「OK」

  マリアはレストランに入って中にいた客や従業員に状況説明をし、シュバイラーを探した。

  マリア『博士、どこにいらっしゃいますか?』
  シュバイラー『おおマリア、助けに来てくれたか。ありがとう・・・ヒカルは大丈夫か?』

  トイレから出てきたシュバイラーを見て、マリアは固まった。

  マリア「☆※○△%#◇〜〜〜〜!!」

  シュバイラー博士は、再びマリアの平手打ちを食らうこととなった・・・。

 

翌日 〜宇宙科学研究所 休憩室〜

  午前中にシュバイラー博士を空港まで見送り、宇宙科学研究所の休憩室で大介甲児ひかるマリア、
  そして宇門所長の5人はコーヒーを飲んで一息ついていた。

  甲 児「シュバイラー博士も災難だったなぁ」
  ひかる「それにしてもベガ星人はいったい何を狙っていたのかしら?シュバイラー博士を裸にしてまで欲しかったものって・・・」
  宇 門(違う、それはたぶん違うぞ2人とも・・・)
  マリア「災難だったのはあたしとひかるさんよ。ひかるさんはケガするし、あたしはとんでもないもの見せられるし・・・」

  大介は苦笑いした。

  大 介「それにしても父さん、今回博士は何しに日本に来たんでしょうね?」
  宇 門「わたしが訊きたい・・・」

  宇門所長はみんながいろいろと想像して話しているのをただ聞き流していた。
  しかし宇門所長にはひとつ思いつくことがあった。
  シュバイラー博士はコズモスペシャルの件で日本に立ち寄ったのではないかと考えていた。
  それは、シュバイラーが初めて研究所を訪れた日に、設計図に書き込んだ改訂部分を見れば一目瞭然だ。
  あの改訂で、ぐっと完成度が上がった。
  博士はベガ星連合軍のスパイの目が光っていることを知っていた。
  コズモスペシャルが完成すれば、ベガ星人にとってはとてつもない脅威となる。
  どんな手を使ってでも阻止しようとするに違いない。
  だから通信や郵送手段を使わず、自ら危険を冒して日本へ立ち寄ったのだ。
  コズモスペシャルのことはまだみんなには話していない。
  100%安全に航行できるものとして目処が立ってから、着工するつもりだ。
  シュバイラー博士の意見も取り入れながら、慎重に進めていこうと思っている。

  宇 門(今はまだ話すときではない・・・)

  宇門所長は黙考から覚め、ふとみんなの会話に耳を傾けた。

  マリア「それにしても日本へ来てトルコ料理ってのも、変わった要望よねー」
  ひかる「だってどうしてもトルコに行きたい、って熱願するんですもの。叶えてあげなくっちゃ」

  大介と甲児は顔を見合わせ、宇門所長はイスからずり落ちた。

  宇 門(なーーーーーっ!?)

  宇門所長は、今の自分の考えに疑問が湧いた。

  宇 門(よ、読めない・・・あの人だけは・・・)

  シュバイラー博士の豪快な笑いが聞こえてくるような気がした・・・。

  シュバイラー「わっはっはっは・・・」

 − おしまい −    

 

− またまたあとがき −

 シュバイラー博士妄想編第2弾、またもやすらすらと指が動きました(笑)。
 今回はシュバイラー博士はじめてのおつかい編、エルザの目を盗んで日本へお忍び訪問。
 宇門博士、ダイザーチームは元より、ベガ星連合軍も巻き込んでの大騒動となりました。
 前回同様天然を発揮してくれたひかるさん、避けてるワリにはいつも大人の汚い部分(爆)を見る羽目になるマリアちゃん、
 恩師の行動を見て見ぬフリする宇門博士。
 主役のはずの大介さんと甲児くんはほとんど出番ナシです。
 時期設定は#69前後としています。

 今回はあまりシュバイラー博士のエロさ加減がうまく出せなかったです。
 ところでトルコ風呂とは今では放送禁止用語になったソープランドの当時の呼称、40年代前半生まれまでの方ならご存じですね。
 わたしもなんか怪しいところとは知っていましたが、当時はお子ちゃまだったのでナニをするところなのかは全く知らず・・・。
 ただ東京在住ですから、マリアちゃんの年齢時にはすでにわかりましたけどね(笑)。
 田舎育ちのお2人には最後までわからないままでいてもらいました。
 シュバイラー博士、ベガ星連合軍をも欺く頭脳の持ち主なのか、それともただの変態なのか・・・おそるべし、です(爆)。
 しかしそんな博士もエルザにだけは頭が上がらないようですね。

 ちなみにケンタッキーネタは、前回の話を書くために#56を見返していた時、一緒に見ていた甥っ子が「チキンのおじさん」と
 言ったのを拝借しました。
 子供の発想力は素晴らしい!(笑)