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涙ははるか銀河を越えて

by MILA


 

漆黒の宇宙に浮かぶ月。
スカルムーン基地のマザーバーン内。
ガンダルの前に立つブラッキー。
ブラッキー:ガンダル指令。この度、銀河系方面作戦部隊から吉報が入りました。
ガンダル:吉報だと?
ブラッキー:はっ。銀河系で抵抗を続けていたロメオ星を完全制圧し、ロメオ星王とその娘を生け捕りにいたしました。
ガンダル:王と娘?このベガ星連合軍に比べれば、大した武力も持たぬロメオ星を制圧したところで何になる?ブラッキー、目下我々の目指すのは地球侵略と、それを邪魔するデューク・フリードを倒すことを忘れたか。
ブラッキー:忘れてはおりません。しかしながら、こやつらを利用することは有効な手立てかと。
ガンダル:利用すると。どんな作戦だ、言ってみろ
ブラッキー:は。ロメオ星王を人質に、娘リヤーナをデューク・フリード暗殺のコマンダーに仕立てるのです。デューク・フリードを暗殺した暁には、王は無傷で返し今後いっさいロメオ星には攻撃を仕掛けないという条件を出すのです。
ガンダル:ううむ……
ブラッキー:自分の星と父親の命がかかっているのです。まさか首を横には振りますまい。リヤーナを地球に送り込み、デューク・フリードの身近に潜入させヤツがリヤーナを信用しきった頃に襲わせるのです。
ガンダル:ふふふ。それはいい。期待しておるぞ、ブラッキー
ブラッキー:はっ!
      
タイトル『涙ははるか銀河を超えて』

扉が開き、ベガ兵に連行されるリヤーナ王女。
ベガ兵:ロメオ星のリヤーナ王女を連行しました
ガンダル:来たか、リヤーナ王女
ベガ兵、リヤーナを跪かせる。
ガンダル:作戦はブラッキーから聞いたな?リヤーナ。
リヤーナ:……
ガンダル:聞こえんな。返事はどうした
リヤーナ:わ、私にはできません。地球へ行って、デューク・フリードを
殺すなんて。デューク・フリードはフリード星の王子。あの守護神、グレンダイザーを自由に操るような人に、私など……
巨大スクリーンに浮かび上がるベガ大王。
ベガ大王:リヤーナ!
リヤーナ、はっとして顔を上げる。
ベガ大王:おまえの父、ロメオ星王の命と、ロメオ星の運命がかかっていることを忘れるな。
リヤーナ:そ、それは。本当なのですね?私がデューク・フリードを抹殺すれば父も、私の星も自由にしてくださると
ベガ大王:うむ、約束しよう。もともと、我らより科学力の劣ったロメオ星など、必要のないものだからな。ブラッキー!リヤーナにあれを渡せ
ブラッキー:はっ。これを身につけていろ。
ネックレスを渡す。
ブラッキー:超小型通信機だ。そして裏のスイッチを入れると爆発するようになっている
リヤーナ:爆発。自爆しろと?
ガンダル:リヤーナよ。生きて帰るかどうかは貴様の腕次第。デューク・フリードを信用させ、近づけば近づくほどおまえの勝算は高くなると言うもの
リヤーナ、うつむき、決心したように顔を上げる。
リヤーナ:わかりました。でも、地球に行く前にひと目父に合わせて下さい
ガンダル:よかろう。ブラッキー、王のところへ連れて行ってやれ
ガンダルの顔を割り、レディガンダルが出現
レディガンダル:ガンダル指令。貴様も女には甘いな。父に合わせることなどない。さっさと地球へ送り込むのじゃ
ガンダル:ええい、うるさい女だ。ブラッキー、さっさと会わせて地球へ送り込め
マザーバーン内。大型カプセルにロメオ星王。ベガ兵がスイッチを押すと
スクリーンが現れ王が映し出される。
リヤーナ:お父様!
王:おお、リヤーナ。無事だったか
リヤーナ:はい、リヤーナは大丈夫です。お父様は?
王:私も心配はいらん
リヤーナ、スクリーンにしがみつき泣き出す
リヤーナ:ううう
王:リヤーナ、どうした?なにがあったのだ
リヤーナ:お父様。私はこれから地球へ行って任務を果たして参ります
王:任務?なんだそれは
リヤーナ:(……)
王:リヤーナ、答えなさい。
リヤーナ:地球にいる、デューク・フリードを暗殺するのです
王:なんだと?デューク・フリードと言えば、フリード星の王子。地球で生きておられるのか
リヤーナ:デューク・フリードの命と引き換えに、お父様とロメオ星の安全を保障すると
王:ばかな。信じてはいけない。あのベガ大王がそんな約束を守るはずがない。リヤーナ、聞くのだ。デューク・フリード王子は聡明で強靭な精神の持ち主と聞く。そんな人を殺してはならない。いずれ彼のような者が、ベガ星連合軍を打ち倒してくれるに違いない。第一、私はおまえに暗殺などと言う恐ろしいことをして欲しくはないのだ。私はどうなってもいい。おまえだけでも逃げなさい
リヤーナ:お父様、そんな。私だけ逃げるなんてできません。
ブラッキー:いつまで話をしているのだ。コマンダー・リヤーナ、時間だ。円盤に乗り込め
王:リヤーナ、行ってはいけない!(スクリーンが消える)
リヤーナ:お父様。私だって怖いのです。でも、こうなった今私たちが生き残る手段はこれしか……
シラカバ牧場。望遠鏡で空を見ている団兵衛。
ひかると大介は馬にブラッシングしている。
ひかる:昨日までの雨がウソみたいね
大介:うん。ひかるさん、これが終わったら思い切り走らせよう
ひかる:ええ。(馬に)気持ちいいでしょう?
大介:よしよし、いい子だ
ひかる:大介さんて本当に馬が好きなのね
大介:動物はいい。動物の目を見てるとなんだか優しい気持ちにならない
かい?
ひかる、大介の横顔を見つめる。通りかかる吾郎、ふたりに気づく
吾郎:お姉ちゃん、大介さんの顔ばっかり見て手が止まってるよ
ひかる、まっかになる
ひかる:な、なに言ってるのよ!
吾郎:あはっ、赤くなってらぁ
ひかる:吾郎!
大介、何かを感じ取りはっとする。辺りを見回し、意識を集中する
リヤーナ:(きゃぁぁぁぁ)
大介:悲鳴だ
ひかる・吾郎:え?
大介:今確かに悲鳴が聞こえた
ひかる:ええ?私にはなんにも
リヤーナ:(きゃぁぁぁ)
激しく流れる川の音。
大介:川だ!誰かが溺れている
走り出す大介。デュークバギーに飛び乗り、急発進する
ひかる:(やっぱり大介さんは、私たちには聞こえないような音まで聞き取る能力があるんだわ)
大介、川沿いを走る。坂を上り高台から見下ろす
大介:あっ、あそこだ
もがきながら下流へと流されるリヤーナ。大介飛び込む
大介:たーーーっ!
流されるリヤーナに追いつき手首を掴む。
大介:君、しっかりするんだ。
リヤーナ:た、助けて……
大介:僕に掴まって!
大介、リヤーナを抱きかかえ岩場まで泳ぎ、リヤーナを岩の上に横たえる
リヤーナ:(激しく咳き込む)
大介:大丈夫かい?
リヤーナ:こ、ここは……?(見上げた景色が回り気を失う)
大介:君!君!
腕の中のリヤーナ。大介、抱え上げる
研究所、医務室。リヤーナ目を覚ます。甲児とマリアが付き添っている
マリア:気が付いた?
リヤーナ:ここは?
起き上がるリヤーナの美しさに息を飲む甲児。
マリア:宇宙科学研究所よ。あなたは川で溺れていて、私の兄さんに
助けられたの
リヤーナ:お兄さん……?
マリア:そう。甲児、兄さんを呼んできて
甲児、リヤーナに見とれている。思い切り肘で突くマリア
甲児:いってぁな、マリアちゃん。なにするんだよ!
マリア:もう、甲児ったら。兄さんを呼んできてって言ってるじゃない!
甲児:あー、いてぇ。はいはい、大介さんね(甲児出ていく)
マリア:私はマリア。あなたは?
リヤーナ:私は、リヤーナ
マリア、リヤーナのネックレスに気づく。じっと見つめる。
リヤーナ視線に気づき、思わずネックレスを手で隠す
マリア:(なんだろう、この嫌な予感。なにかよくないことが起きる気がするわ)
ドアがノックされる。大介と甲児、ひかるが入ってくる。
大介:やぁ、気分はどうだい?
リヤーナ:あなたが私を助けてくれたの?
マリア:私の兄さんよ。あと、甲児とひかるさん。みんなここで一緒に働く仲間なの
ひかる:よろしくね
リヤーナ、うなずく。一同を見回し、大介を見つめる。
大介:無事でよかった。一昨日からの大雨で川が増水していたんだ。しかし、なんであんなところに?
リヤーナ:どうしてって……どうして私は……私……
顔を見合わせる一同。リヤーナは頭を抱える。
リヤーナ:自分の名前以外……思い出せない……。
大介:記憶喪失?マリア、お父さんに連絡してすぐに彼女を検査してもらうんだ
マリア:わかったわ
ひかる:マリアさん、私も行くわ
リヤーナ:怖いわ……
大介:大丈夫だよ、安心したまえ。ここは最新医療設備が整っているんだ。
リヤーナ、うつむきながらそっと胸のネックレスを握る。
リヤーナ:(早くデューク・フリードを見つけなければ)
研究所、診察室。リヤーナは検査着姿で椅子に座っている。ノックの音。
宇門博士が入ってくる。リヤーナ、緊張した表情。
大介:心配ない、僕の父だ
リヤーナ:お父様……?
ロメオ星王が浮かぶ。
宇門:ああ、楽にして下さい。私はこの研究所の所長で、宇門と言います。
大介:お父さん。彼女の状態は?
宇門:うむ、診察した医師によると一時的なもので回復は早いだろうと言うことだったんだが……。リヤーナと言ったね?まったく思い出せないかね?
リヤーナ:はい、すみません。みなさんに迷惑をかけてしまって
宇門:いや、そんなことは気にしなくていい。よかったらしばらくここにいなさい。そのうちに思い出せるかも知れん。
リヤーナ:ありがとうございます。
大介:うん、ゆっくり体を休めるといい。マリア、リヤーナの部屋の用意をしてやってくれないか。それから着替えも何か貸してやってくれ
マリア:はい
診察室を出るマリア。一瞬振り返る。甲児が心配そうにリヤーナのそばに
立っている。
マリア:(……)
夜。宇門邸。ベッドのリヤーナ、目を覚ましそっと起き上がる。辺りを見
回し部屋を出る。外に出るリヤーナ。振り返ると研究所が闇に浮かび上が
っている。
リヤーナ:ブラッキー隊長、こちらリヤーナ
ブラッキー:おお、リヤーナ。連絡を待っていたぞ。うまく潜入できたようだな。
リヤーナ:はい。でも、デューク・フリードがまだ特定できません。
ブラッキー:地球人に紛れ込んでいるのだ。まぁ、よい。こちらから攻撃をかけてデューク・フリードを誘い出してやる。
リヤーナ:ブラッキー隊長、私の父は……
ブラッキー:今はデューク・フリードを抹殺することだけを考えておけ
リヤーナ、悲しげに夜空を見上げる。満天の星。
リヤーナ:やらなくては……でも、一体デューク・フリードはどんな人なの?
大介:そこにいるのはリヤーナかい?
リヤーナ、はっとして振り返る。
リヤーナ:大介さん
大介:どうしたんだ、こんな夜中に
リヤーナ:眠れなくて……あんまり星がきれいだから見ていたんです。
     大介さんは?
大介:うん、僕も眠れなくてね。こんなに月が赤い。いやな色だ
リヤーナ:月が?
大介:ああ、今我々は大きな敵と戦っているんだ。そしてその敵はこんな赤い月をした日にやってくる
リヤーナ、大介を見つめる。
リヤーナ:(もしかしたら、この人がデューク・フリード?)
大介、視線に気づく。
大介:ああ、ごめんよ。怖がらせるつもりじゃなかったんだ。さぁ、中に入ろう。夜風は体によくない。そうだ、リヤーナ。よかったら明日の朝牧場に来ないか?きれいな空気と緑の草木に囲まれてリラックスすれば、少しずつ体もよくなっていくよ
リヤーナ:ええ
翌朝。シラカバ牧場。団兵衛は相変わらず望遠鏡を見ている。
団兵衛:UFOちゃんよ。今日も待っとるのにこんのかのぉ。
望遠鏡で下を見ると、デュークバギーに乗る美女を発見。
団兵衛:やややっ!大介の分際でなんであんな美女と肩を並べておるのだ?こらー、大介!朝っぱらからそんな美人を連れてなにやっとるんだ、おまえは
大介:おはようございます、おじさん
ひかる、外に飛び出してくる。
大介:さぁ、着いたよ
大介、リヤーナの手を取りバギーから降ろす。表情が曇るひかる。
大介:朝は動物の世話をしなくちゃならないんだ、ちょっと待っててくれ
ひかる:大介さん、リヤーナさん。おはよう
大介:おはよう、ひかるさん。この白馬が僕の馬だ。あとで乗ってみるかい?
ひかる:(大介さんの一番かわいがってる馬にリアーナさんを……)
リヤーナ、おそるおそる手を伸ばし白馬をなでる。おとなしく触らせてい
る白馬。
リヤーナ:かわいい……
大介、リヤーナを見て微笑む。
草原。白馬に乗ったリヤーナ。大介が手綱を持って引いている
大介:怖くないだろう?
リヤーナが頷く。そこに重なるナイーダの面影。大介、はっとする。
大介:(少しだけ雰囲気が似ているんだ)
リヤーナが微笑む。胸のネックレスが輝いている。
森の木陰。川面に映る大介とリヤーナ。
リヤーナ:きれいな所。
大介:うん。川のせせらぎと小鳥のさえずり。こんなに美しい景色が身近にあるだけで僕は幸せだと思う。リヤーナ、君はどこから来たんだ?この先の湖を見てなにか思い出さないか?
リヤーナ首を振る。
リヤーナ:大介さん。あなたがゆうべ言っていた大きな敵ってなんのこと?
大介:この地球を狙っている凶悪な異星人さ。しかし、この地球にはやつらの侵略を阻む者たちがいる。そしてその存在も特定されてしまったから、この辺一帯も標的になってしまったんだ。
リヤーナ:阻止しているのは大介さんたちね?マリアさんは、まだ子供なのに一緒に戦っているの?
大介:マリアはね、小さいころからお転婆で負けん気は僕よりも強い。
   でも、そうは言っても女の子だからね、早くこの戦いを終わらせたい。僕はこの地球の緑を愛している。失ってはいけない、宇宙の財産だ。
リヤーナ:(……)
牧場に甲児のジープ。ひかる、手持ちぶさたで腰掛けている。
甲児:おはよう、ひかるさん
ひかる:おはよう
甲児:大介さんは?
ひかる、つまらなそうに山の方を指差す
ひかる:リヤーナさんとお散歩ですって!朝ごはんもまだなのに馬に乗って来るって
甲児:ははーん、それでそんな不機嫌なんだな
ひかる:な、なに言ってるのよ!そんなんじゃないわ
甲児:それにしたって、どこまで行ってるんだ大介さんは。マリアちゃんに頼まれて町に行くからリヤーナも連れて行こうと思ってたんだ
ひかる:どうして?
甲児:大きな町に出れば、彼女もなにか思い出すかも知れないだろ?
ひかる:(なによ、みんなしてリヤーナさんばっかり)
大介たちが乗った馬が戻ってくる。
大介:甲児君、来てたのか
甲児:ああ、リヤーナを誘いにね
リヤーナ:私を?
甲児:マリアちゃんと3人で町に行ってみないか?
リヤーナ、困ったように大介を見る
大介:気分がよければ行ってくるといい。それにしてもマリアのやつ甲児君を運転手代わりにしてるな?
団兵衛:UFOだーーーっ!UFOが来たぞーーー!
大介と甲児、上空を見る。ミニフォーがはるか山の向こうから飛来してく

大介:来たな、ベガ星連合軍
リヤーナ:ベガ星連合軍……
甲児:ちっ、出かける暇もありゃしねぇ。大介さん、俺は先に行くぜ。
納屋に走りこむ甲児。TFOがたちまち飛び立つ。
大介:ひかるさん、リヤーナを頼む
リヤーナ:大介さん……!
大介:大丈夫だ。さぁ、ひかるさんと一緒に避難するんだ
大介、デュークバギーに乗り研究所へ向かう。通路を走る大介。避難口に飛び込む。
大介:デューク・フリード
変身。スペイザーに乗り込む。
デューク:グレンダイザーGO!
研究所を飛び出すグレンダイザー。すでにTFOが応戦している。
デューク:ん?円盤獣がいないな
甲児:あんたが出るまでもなかったな。雑魚ばっかりだぜ
ミニフォー、かく乱するように飛び交う。ミサイルで応戦する甲児。
スペイザー内のデューク。マリアから通信が入る。
マリア:(兄さん、私も出動するわ)
デューク:待てマリア。どうも様子がおかしい。
マリア:(どういうこと?)
デューク:円盤獣がいない。まるで我々をおびき出すためにミニフォーを送り出したみたいだ
ブラッキー:ミニフォー部隊、そろそろいいだろう引き上げろ
ミニフォー一斉に帰還していく
甲児:あ、待てこのやろう!
デューク:甲児君、我々も戻ろう。なにか変だ
シラカバ牧場。物陰から空を見るリヤーナ
リヤーナ:やっぱり大介さんがデューク・フリードだったんだわ
真上を横切るグレンダイザー
リヤーナ:あれがフリード星の守護神。
大介の笑顔がよぎる。
リヤーナ:デューク・フリード
ブラッキー:リヤーナ
胸のネックレスが光る。リヤーナ、左右を見回し応答する
リヤーナ:は、はい。こちらリヤーナ
ブラッキー:今グレンダイザーをおびき出した。デューク・フリードの特定は出来たか
リヤーナ:はい
ブラッキー:よろしい。期待しているぞリヤーナ
夜。研究所内、大介の個室。マリア、ドアをノックする
マリア:兄さん
大介:どうしたマリア
マリア:あのね、兄さん。リヤーナなんだけど
大介:どうかしたのか
マリア:なんか嫌な予感がするの。初めてリヤーナを見たときに感じたんだけど
大介:おまえの予知能力か?
マリア:わからない。だけどリヤーナがベガ星のスパイとは思えない。
    でも、なにか隠してるわ。なんだろう、あのネックレスが焼きついて離れないの。
大介:そうか。スパイとは思いたくないが注意しておこう
マリア:ねぇ、兄さん
大介:ん?
マリア:(……)
大介:なんだ?どうしたんだよ
マリア:兄さんはリヤーナのこと、どう思ってるの?
大介:どういう意味だ
マリア:男の人はああいう女の人が好きなのかなぁって
大介:なにを言ってるんだ?
マリア:……なんでもない!おやすみなさい
大介:変なやつだな
研究所。リヤーナ、デッキに立っている。湖面に月が映り、きらきらと輝く。見つめているリヤーナのネックレスが光る。
ブラッキー:(声)リヤーナ、どうだ。まだ実行に移せないのか
リヤーナ:はい。
ブラッキー:なにをもたもたしている。グレンダイザーに乗り込む前のデュー・フリードであれば恐れることはない。
リヤーナ:わかっています、でも……
ブラッキー:いいか、貴様はベガ星のコマンダーであることを忘れるな。父親の命は、貴様の行動にかかっているのだ。
甲児:リヤーナじゃないか
リヤーナ、はっとして振り向く
リヤーナ:甲児さん
甲児:なにしてるんだ?こんなところで
リヤーナ:眠れないんです
甲児:リヤーナ、無理に思い出そうとしなくていい。この研究所にいる仲間はみんな最高にいい人ばっかりだからよ、自然に記憶が戻るまでここにいたらいいよ
リヤーナ:ありがとう。でも……
甲児:笑わないでくれよ。さっき、空を見上げてるあんたを見てたら、なんだかオレはあんたが「かぐや姫」に思えて来たんだ
リヤーナ:かぐや姫?
甲児:知らないのか?月のお姫さまで地上に降りて暮らすんだけど、そのうちに月からの使者に連れられて天に帰って行く、日本の古い民話さ。あんたみたいなきれいな人、なんかこの世界の人間に思えなくてよ。あははは。
リヤーナ:甲児さん、私……
甲児:どうかしたか?
リヤーナ:い、いいえ
甲児:もし、本当にあんたが異星人でもオレは驚かないぜ。たとえ生まれた星が違っても、心から信頼しあえるってことをオレは知ってるからな
リヤーナ、泣き出す。
甲児:お、おい。なに泣いてんだよ、どうしちゃったんだよ。誰かに見られたらオレが泣かせたみたいじゃないか。泣き止んでくれよ。
研究所、観測室。林が手元のパネルに気づく
林:ん?なんだこの電波は?
山田:林君、どうかしたか?
林:研究所のどこかから、この研究所とは違う波長の微弱電波が出ているんだ。所長に知らせるか。
山田:わかった。所長、夜分にすみません。所内で不審な電波をキャッチしました。発信源を調べます。
宇門:わかった。私と大介も向かうよ
再びデッキ。月明かりに甲児とリヤーナの影が浮かぶ。
リヤーナ:甲児さん。私、帰ります。
甲児:帰るって、どこへ?思い出したのか?
リヤーナ:ええ、私の帰るべきところへ
甲児:それは一体?
駆けつける大介と宇門。
甲児:大介さん、博士!一体どうしたんです?
大介:リヤーナ、不審な電波の発信源は君だったのか
甲児:なんのことだ?リヤーナ、一体……
リヤーナ:大介さん、いいえ。デューク・フリード。私はロメオ星の王女リヤーナです。私の星はベガ星に制圧され、私と父は彼らの捕虜となりました。
甲児:なんだって?!
リヤーナ:私はガンダルの命を受け、星の自由と父の命を引き換えに、あなたを抹殺しに来たのです。マザーバーンを出る時に、父は私にこう言いました。暗殺などと恐ろしいことをして欲しくない、いずれあなたのような方が必ずベガ星連合軍を倒して下さると
大介:リヤーナ。僕とマリアも帰る星を失った。今はこの地球が故郷だと思っている。だから、君の気持ちは痛いほどわかる。ベガ星連合軍は地球にとってもフリード星にとっても、そして君にとっても敵だ。
リヤーナ:私には初めからできないとわかっていました
甲児:だったらなぜ近づいたんだ?!
リヤーナ:ほんの数日でも父に生き延びて欲しかった。そして、デューク・フリード王子にひと目お会いしたかったのかも知れません。地球の人たちは優しいことを知りました。そしてこの星の美しさも……デューク、どうかあなたの力でベガ星連合軍を。お聞きになりましたか、ブラッキー隊長!私には任務を遂行することができませんでした。あなたたちの言いなりになるよりも、私は誇り高く死ぬことを選びます
ネックレスが光る
ブラッキー:貴様……ロメオ星王がどうなっても良いと言うのか?
リヤーナ:父も同じ道を選ぶでしょう。たとえベガ星に蹂躙され、帰ることが出来なくてもロメオ星は私の故郷です。
リヤーナ、ネックレスを引きちぎる。
リヤーナ:さようなら、デューク、甲児さん
マリア:(声)兄さん、ネックレスを取って!自爆するつもりよ
大介:リヤーナ!
リヤーナ:あっ!!
大介が手首を掴み、ネックレスを奪う。投げ捨てると、下方で小規模の爆発が起きる
倒れるリヤーナを甲児が抱きかかえる。マリア、走り寄る。
リヤーナ:マリア、どうして……?
マリア:私には予知能力があるの。初めてあなたに会ったとき、すごくあのネックレスが引っかかっていたのよ
リヤーナ:死なせて……もう父は助けられない。このまま私だけが生き残ってどうしろと言うの?
マリア、リヤーナの頬を張る
マリア:あなた王女でしょう? 生きて自分の星を取り返そうとは思わないの?!お父様を助け出そうとは思わないの?
リヤーナ:マ、マリア
マリア:私たちがなぜ戦っているかわかる?地球のために戦うと言うことは、この宇宙のために戦うことと同じだわ。怖くないと思う?悲しくないと思う?それでも私は泣かないって決めたの!フリード星をいつか取り戻すまで、私は泣かないって決めたの!
リヤーナ:マリア……
マザーバーン。ブラッキー、拳をスクリーン前のパネルに叩きつける
ブラッキー:おのれ、小娘が……円盤獣を送り込め!裏切り者がどうなるか見せ付けてやるのだ
ベガ兵:はっ
スクリーンにガンダルが映る。
ガンダル:待て、ブラッキー。その円盤獣に王を乗り込ませろ。人質がいればデューク・フリードもすぐには倒せまい。
ブラッキー、不敵に笑う
ブラッキー:なるほど、それはいい。デューク・フリードの小ざかしい正義感が仇となるわけですな
マザーバーンから飛び出す円盤獣。地球めがけて飛行してくる
研究所、観測室。
佐伯:所長、物凄いスピードで円盤獣が向かっています。到達まで5分です
宇門:大介、甲児君、マリア君。出動してくれ
大介、甲児、マリア:はい!
それぞれ走り去る。
宇門:林君、ひかる君にも出動命令を出してくれ。さぁ、リヤーナ。中に入りなさい。ここでは危険だ。
デューク:グレンダイザーGO!
グレンダイザー、カタパルトから飛び出す。
甲児:行くぜ、マリアちゃん、ひかるさん
マリア、ひかる:OK!
甲児:ダブルスペイザー
マリア:ドリルスペイザー
ひかる:マリンスペイザー
甲児、マリア、ひかる:GO!
星空にグレンダイザーの機体が輝く。大きな月を背景に対峙する円盤獣とダイザー。
デューク:来たな、円盤獣。スピンソーサー!
スピンソーサー、円盤獣の体に当たる。一瞬、のけぞる円盤獣。変形する。
円盤から伸びる首、手、足。背面に翼。
甲児:ダブルカッター!
カッターが飛び、翼を直撃。跳ね返される。
甲児:くそっ!カッターが効かない
ひかる:マリンミサイル!
マリア:ドリルミサイル!
ミサイルが当たるが、手足を引っ込め円盤で跳ね返す
ひかる:なんて固いの!
ドリルスペイザー、円盤獣に近づきミサイルを撃ち込む。手の穴に命中。再び変形するが片腕は損傷している
マリア:兄さん、至近距離なら効き目はあるわ!
デューク:マリア!あまり近づくな!
円盤獣、目からビーム発射。ドリルスペイザーに当たる
マリア:きゃーーーっ
ドリルスペイザー、地面に叩きつけられるように着陸
デューク:マリア!
甲児:マリアちゃん!
マリア:(声)私は大丈夫!
デューク:おのれ、円盤獣!スペース……
ブラッキー:(声)待て、デューク・フリード。その円盤獣ザスザスにはリヤーナの父親が乗っているのだ
リヤーナ、衝撃に目を見開く
リヤーナ:お父様が!
ブラッキー:ベガトロンで催眠状態にあるがな。さぁ、デューク・フリード。王の乗ったザスザスを倒せるかな?
デューク、操縦桿を握りしめる
デューク:卑怯だぞ!ブラッキー!
ブラッキー、巨大スクリーンの前に勝ち誇ったように座っている
ブラッキー:なんとでも言え。いいか、デューク・フリード。戦いとはな、勝てばいいのだ。わはははは。
スペイザー内、デューク
デューク:くそ……
甲児:なんて、なんて卑怯な真似を!
ブラッキー:どうだ、デューク・フリード。手も足も出まい。ザスザス!グレンダイザーを血祭りに上げろ!
円盤獣、口から熱線を吐く。グレンダイザーを直撃
デューク:うわぁっ
研究所、観測室。見上げる職員一同。
宇門:大介!
リヤーナ、観測室を飛び出す
宇門:リヤーナ!どこへ行く、待ちたまえ
リヤーナ:父を助けに。おじさま、ありがとうござました
走り去る
宇門:リヤーナ
再びスクリーンを見上げる。苦戦するデューク・フリード。
デューク:シュートイン
操縦席が移動
デューク:ダイザーGO
ダイザー、地上へ降りる。円盤獣、両足でダイザーの肩を押さえ込み、目からビーム
コックピット内、デューク
デューク:うわぁ!このままでは危ない
スイッチを入れる手
デューク:ショルダーブーメラン
ブーメラン、垂直に飛び、円盤獣の両翼を付根から切り落とす。地上に落ちる円盤獣
リヤーナ、甲児のジープで森へ向かう。森の中ほど。小型のUFOが隠すように停めてある。飛び乗るリヤーナ。森の中から垂直に飛び立つUFO。
マリンスペイザー、ダブルスペイザーが応戦。
デューク:ひかるさん、甲児君。王がどこにいるかわからない、直撃は避けてくれ
ひかる:だけど、このままじゃ大介さんが
マリア:兄さん、待ってて。ドリルオン!
ドリルスペイザー、地中に潜り、掘り進む。操縦席のスクリーンに光が点滅、赤くなる。
マリア:ここね
円盤獣を突き上げるように出現するドリルスペイザー。円盤獣、バランスを崩し仰向けに倒れる。すでに片腕、両翼がない状態。
デューク・フリード:メルトシャワー!
上空を旋回するスペイザーからメルトシャワー。円盤獣の顔面を狙う。
目がつぶれ、ビームが発射されない。
デューク:王はどこいる?なんとか王を円盤獣から出せれば
デューク・フリード、テレパシーで内部を見る。円盤獣の背面、ヒトで言う骨盤辺りに操縦席。
デューク:そこか!みんな聞いてくれ。王は円盤獣の背中側にいる。俺がハーケンでヤツの腹部を切り裂いてみる。ダブルハーケン!
ハーケン飛び出し、頭上で接合。
リヤーナ:お父様!!
ダイザーのすぐ前を、横切るリヤーナ機
デューク:リヤーナ!危ない、離れろ
リヤーナ:お父様!目を覚まして!この人たちと戦ってはいけません。
     デューク・フリードお願い、父を殺さないで。
デューク:殺しはしない、君のお父さんを円盤獣から切り離すんだ。
円盤獣、仰向けのまま口から熱線発射。リヤーナ機の後方を直撃。
リヤーナ:きゃあぁぁぁっ
甲児:リヤーナ!!
黒煙をあげて、墜落するリヤーナ機。
甲児:リヤーナ!!
ダブルスペイザーで追いかける。マリンスペイザー、リヤーナ機を追う
ひかる:アンカーシュート!
アンカーチェーンが伸びる。リヤーナ機の尾翼を挟み、かろうじて墜落を阻止する
ブラッキー:うるさい小娘だ。ザスザス、裏切り者を始末しろ
円盤獣、転がるように起き上がり再び熱線を吐く
リヤーナ機、マリンスペイザーが熱線に包まれアンカーシュートが切れる。落ちていくリヤーナ機
ひかる:ああっ!リヤーナ
デューク:実の親子をこんな形で利用するとは……許せん!ダブルハーケン!
円盤獣の首を切り落とす。
ブラッキー:ザスザス、こうなればグレンダイザーに組み付き、自爆しろ!道連れにするんだ
円盤獣、グレンめがけて突進。片腕だけでグレンの頭部を掴む
コックピット内、デューク・フリード。
デューク:なにを・・・?
コックピットから発光する円盤獣が見える
デューク:自爆する気か!ロメオ星王!あなたの誇りを思い出してくれ!
     僕は、あなたを倒したくはない!
マリア:兄さん!!離れて!!
ロメオ星王:(声)デューク・フリード……いつか、必ずベガ星連合軍を……
デューク:王!!
ロメオ星王:(声)私を楽にして……くれないか?
発光する円盤獣、発光色が変わる
ブラッキー:死ね!デューク・フリード
デューク、アップ。涙が流れる
デューク:許してください……反重力ストーム!
反重力ストームによって円盤獣が引き離される。爆発。
デューク、バイザーを上げる
デューク:あなたたちを、救いたかった
ブラッキー:おのれ、デューク・フリード。あと一歩と言うところで。ひとまずスカルムーンへ帰還するぞ!
草原。煙を上げるリヤーナ機。甲児がコックピットのリヤーナに近づく。頬にかかる髪を整える。デュークたちは離れて見守っている。
甲児:リヤーナ、助けてやれなくてごめんよ。オレ、あんたのこと……
甲児、涙を拭って立ち上がる
甲児:大介さん。頼みがあるんだ。リヤーナを宇宙《そら》に帰してやってくれないか?帰りたがってたからさ。
デューク、力強く頷く。
宇宙空間。グレンダイザーが両手にリヤーナ機を持って飛ぶ。コックピットのリヤーナの手には地球の野の花が添えられている
アンドロメダ星雲が見えて来る。グレンダイザー、そっと手を離すと機体がゆっくりと離れていく。
デューク:君がロメオ星に流れつく頃には、この宇宙に平和が戻るよう俺は戦う。やすらかに眠ってくれ。
グレンダイザー、機体をひる返し地球に向けて発進する。
宇宙空間に漂うリヤーナ機、輝きながら消えていく。

                          終わり

 

ごあいさつに代えて

この度は裕川さまのご好意に甘えて、このような駄作を載せていただきました。自分でも笑っちゃうくらいのベタな展開(笑)
しかし、70年代アニメを見て育つとこう言う感じになってしまうようです。しかも、なんか設定はミネオくさいしキャラ的にはナイーダ意識しすぎだし。もうちょっとリヤーナに自我を持たせたかったな。
できたらブラッキーとガンダルに「ふふふ、飛んで火に入る夏の虫だな」とか、「デューク・フリード。これで貴様も袋のねずみだ」とか日本古来のことわざを言わせたかった・・・(笑)
子供の頃から疑問でした。宇宙人なのに、なんでこんな言葉知ってんの?って(笑)きっと地球(日本)を攻略するために勉強したんだね、うん。
 なお、私は趣味で小説サークルを持っておりますがシナリオと言うのは演劇以外は書いたことがないので、かなりうそ臭い脚本ですがその辺はお目こぼしを・・・。
 次はナイーダを主役にして、ベガ星に捕らわれてからデュークに再会するまでを書いてみようかな?と思います。昨日バイト中に、いろいろ考えちゃった☆いや、ちょっと暇な時間があったので・・・(笑)

 「ここはこうしたら?」とか「この表現はこっちの方がいいよ」などご意見がございましたら私のブログなどに書いていただけると今後の参考になります。ブログについては、裕川さまのリンク集にあります「Shoooot in!」が私のそれでございます。ありがとうございました。

MILA


※本編では、TFOとダブルスペイザーは同時に飛ぶことは無かったのですが、甲児君を両方に乗せてみたいということで、そのおように書かれたということです。