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あとがき(ネタバレ注意)

三八話の外伝のつもりでいたのだが、書いてみたら三八話のノヴェライズになってしまった。

マジンガーZ研究機構に投稿されたゆりあさんのファンフィク「ミネルバのフクロウは宵闇の訪れを待って飛び立つ」に触発され、私も書いてみようと思った。直ぐに書き終えるつもりがのびのびになって、随分時間が経ってしまった。

Mathematically Justified Cybersystem(数学的に正当化されたサイバーシステム)とはつまりはロボットの意である。持って回った言い方だが、元ネタは「ペンローズの量子脳理論」より(このオッサン、最近は言うことが彼岸にイッちゃってて面白い)。

ヘルと十蔵の学生時代の関わりは、桜多吾作版のマジンガーZコミックス「たたかえDrヘル」が元ネタである。十蔵の婚約者のゆみこはここに登場する。

Holonomic systemというのは束縛条件があるという意味である。解析力学の用語で、運動を制限する条件がついているものを指す。ロボットの制御がまさにこれを前提にしていて、アームの長さや角度やクリアランスが拘束条件となる。

本編に登場する博士達は、全員、それぞれの分野で成果を出して地位を得た後の姿で登場する。しかし、今回の創作では、弓の大学入学の頃に始まり、まだ若い時を書くことになった。それなりに悩んだり迷ったりする姿があって、それが年齢を重ねて本編の指揮官としての貫禄(?)を持つようになったのだと納得してもらえればいいかな、と思っている。

旧制の帝国大学はむしろ今でいう大学院修士課程程のような面があったということなので、入って直ぐ研究の手伝いのようなことを開始するように書いてしまった。このへんは作者もまだ調査がゆきとどいていない。大間違いがあったらおわびしたい。

三博士が軍属であったとか、光子力発見の経緯や、ドイツでの十蔵とヘルの関わり、早いうちからの弓と剣造の関わりなどはすべて私の創作である。設定と大きな矛盾はしないように気を配ったつもりであるが、手持ちの資料は限られており、もしかしたら間違いもあるかもしれない。また、本編について異なったイメージや解釈をしておられる方には、あくまでも私個人のオマージュであるということで、広い目で見ていただければ有り難い。

なぜ、弓教授が地質調査用のロボットを作ったのかという事に対する私なりの解釈も書いてみたつもりである。本編では、さやかは、アフロダイAを起重機代わりと甲児に言われて立腹していたが、弓教授としては前からやってる開発の延長線上だということで……。さらに、どうして次世代のエネルギー源である光子力を実用化しておきながら、所内地下に原子力発電所を抱えているのか(光子力で全部まかなえばいいのに)という疑問についても、解釈をつけたつもりである。

しかし、まさか自分が十蔵視点でヘルを書くことになるとは思わなかったぞ(笑)。最初は弓とヘルをどっかで会わそうかと思ったが、念のためタイムチャートを作ってみたらちょっと無理っぽいのであきらめたのだけど。

一歩間違えばヘルになってたのは弓教授じゃないか、というのは月例会の雑談ネタ。少し反映させてみた。何だか悩みの多い弓教授になってしまった。

マジンガー三作品は同じ世界、というのが前提なので、宇門博士も登場させてみた。ただ、宇門博士は光研の人達とは別世界の住人だし、グレンダイザーを拾ったりしなければ、どう見ても光研とは関わりようがない人である。ただし、巨大ロボットを作らなかっただけで、宇門博士の方が弓教授よりも実はマッドサイエンティストだろう(というかワケわかんない宇宙人を養子にするのは普通に考えると「奇行」だし、まあそういう神経の人なんだろうと)。


ジャパニウムや光子力の細かい設定、材料用とエネルギー用があるといった部分は「マジンガーZTV手帳」(リイド社)を踏まえた。次の八つの解説を活かして書いたつもりである。
●エネルギー物質変換器
 マジンガーZの体内に組み込まれていて、光子力反応炉から出た余分のエネルギーを、再びジャパニュームに還元する装置。出力調整とエネルギーの節約いなる。エネルギーと物質とは、アインシュタインの相対性理論(E=MC)により、変換することができる。
●光子力エネルギー
 燃料用のジャパニュームが、臨界量に達し、核分裂を起こす過程において抽出された、光のエネルギー。光とは、可視領域(目に見える)の電磁波をいう。燃料用ジャパニュームは、あたかもレーザ・ビームのような均一な位相と高エネルギーを持った、光を放射しながら崩壊していく、きわめて特殊な元素なのである。
●光子力反応炉
 マジンガーZの心臓部ともいうべき、最も重要な部分の1つ。ここで燃料用ジャパニュームに核分裂を起こさせて、光子力エネルギーを抽出する。核分裂を起こさせるためには、ジャパニュームを臨界量にしなければならないが、そういった出力の制御はすべてコンピュータによって自動的におこなわれている。
●光粒子増殖炉
 合金用ジャパニューム(採掘されるジャパニュームのほとんどは合金用ジャパニュームなのだ)を燃料用ジャパニュームに変換する装置。燃料用ジャパニュームから出る光子を、合金用ジャパニュームにぶつけて、連鎖反応的に変換させるため、あたかも、燃料用ジャパニュームが増殖しているように見える。
●ジャパニューム
 兜十蔵博士が発見した、新元素。日本の、それも富士山麓の洪積世の地層(その上に光子力研究所が建てられている)からしか産出できない。核分裂をしない合金用ジャパニュームと、核分裂する燃料用ジャパニュームの2種類がある。
●太陽炉
 回転放物面鏡などを使って、太陽熱エネルギーを一点に集める装置。最初は光子力エネルギーを解放する、起爆剤として使用された。現在では、光子力エネルギーの、補助的エネルギーとして利用されている。
●超合金Z
 合金用ジャパニュームには、特異な性質がある。それは、他の金属と混ぜ合わせると、格子欠陥(金属の原子配列に生じる、乱れ)のない合金となるのだ。格子欠陥のない金属(現実には、ありえない)は、格子欠陥のある同種の金属と比較して、あらゆる面で強い。そのために、ジャパニューム合金のことを超合金という。超合金Zが、ジャパニュームと何との合金であるかは、残念ながら国家機密となっている。
●超合金Z精製炉
 超合金Zを精製するのではなく、ジャパニューム中の合金用ジャパニュームを精錬して、他の金属との合金をつくり出すところ。超合金Zは、加工がむずかしいため、ここで精錬と同時に、いろいろな形に鋳造したりするのである。


公式設定踏み外しのチェックや、間違いのチェックをしていただいた英さんに感謝いたします。