パーソナルツール
現在位置: エピソード紹介&考証 / 1.兜甲児とデュークフリード

1.兜甲児とデュークフリード

ストーリー紹介

 NASAに留学していた兜甲児が,TFOというミニ円盤に乗って帰ってくる。宇宙人実在説をとなえる宇門博士が所長をしている宇宙科学研究所で研究を続けるためだ。マジンガーで戦ったことを思い出しつつ飛んでいたら,富士山上空で円盤を目撃する。
 宇門博士の誘導で,TFOはシラカバ牧場脇に着陸した。シラカバ牧場では,大介が牧童として仕事中,ひかると吾郎も手伝っていて,団兵衛は塔の上から天体望遠鏡でUFOを捜索中。そこへ甲児のTFOが着陸したから,団兵衛は大喜び。しかし大介は,一別しただけで口元に笑いを浮かべてそのまま作業を続けた。
 宇門がやってきて,甲児をシラカバ牧場の面々に紹介する。みんな,TFOに感心しているのだが,大介は無関心で,宇門に呼ばれてやっと甲児のとこにやってくる。そして,一言「よろしく」と言った後はTFOを見もしないで,「仕事が残っているもんで……」と,宇門が呼びかけても乗ってこず,立ち去ってしまう。当然甲児は面白くない。
  甲児は宇門といっしょに宇宙科学研究所に行って,望遠鏡を見るが,そこでもUFOを見る。TFOで追ってみたいという甲児を宇門は止める。悪い宇宙人でなければいいが,と宇門は心配するが,甲児は,地球の鎖国をとくのだと,あくまでも前向きである。
 夕方,シラカバ牧場で,大介は団兵衛やひかると一緒に牛を追っていると,甲児がやってくる。「一番の荒馬を連れてきてくれ!」というリクエスト通りに,大介は牧場一の暴れ馬を引き渡すが,甲児は振り落とされ馬は暴走,ひかると吾郎に向かって突進する。大介は馬に飛び乗り見事に押さえる。
 その夜,月が赤く染まる。大介は「赤い月はベガ星人の出陣ののろしだ」と言う。甲児は不審がるが,大介は無視して研究所を出ていってしまう。
 研究所を出た大介は,赤い月を見ながらギターをかき鳴らす。「乗りたくない……もうあんなものには乗りたくない……」「乗りたくない……乗りたくないんだあ」弦の切れたギターを放り出して大介は走り出す。「俺にはこの力強い大地がある。美しい緑がある。乗りたくない,乗りたくない,あんなものに2度と乗りたくない……乗りたくない」全力疾走の挙げ句転倒してしまうが「だめだ……やっぱり,俺は,俺は……」。その頃,ブラッキーはTFOの写真から,極めて初歩的な円盤だと結論を出していた。
  翌朝,団兵衛がUFOを発見する。直後に甲児がやってきてTFOで出撃しようとする。大介は必至で止めるが,甲児は飛び出していってしまう。案の定ミニフォーとドッグファイトになるが,武器を積んでないTFOは圧倒的に不利。大介は,「だから言わんこっちゃねえ」とバイクで牧場を飛び出す。「ばかやろう,俺の気持ちも知らないで!」崖からバイクで飛び出し,「デューク・フリード!」と叫び,光とともに戦闘服姿に変身する大介は,「グレンダイザー,ゲットアップ」の掛け声とともに湖にとびこむ。研究所では,強力な電磁波が観測されたため,宇門はダイザーの格納庫へと走った。地下格納庫では,床を割って,ランチャーとともにグレンダイザーが出現し,宇門に見送られて出撃する。
  デュークがミニフォーと戦っている間に甲児が円盤獣の下敷きにされる。何とかTFOを救い出して,デュークは甲児に呼びかけるが,甲児は一瞬振り向いたあと気を失ってしまう。円盤獣を撃破したデュークは撤収,ブラッキーも退却する。
 翌日,甲児はシラカバ牧場を訪れ,バギーを洗車している大介に声をかける。「大介さん,あんた,もしや……」「もしや……何だい?」
「ハハハ……まだ目が覚めないらしいなあ,甲児君。」
「宇門大介の目はあのときの……あのときの?」
「いつまで立っているんだよ。どいてくれよ」と大介はバギーで走り去った。

架空座談会(於:宇宙科学研究所会議室)

宇門「大介,あまり甲児君の相手をしたくないようだが?」
大介「そうでもないんですけどね」
宇門「第1話のタイトルは『兜甲児とデュークフリード』なんだよ。マジンガシリーズとはいっても,マジンガーZのときは『第1話 驚異のロボット誕生』,グレートマジンガーのときは『第1話 大空の勇者グレートマジンガー』だからね,両方ともロボットに注目というわけだ。それにくらべてこの第1話は……わざわざ君たちをクローズアップしてるんだ。もうちょっと仲良くしてもらわないと困るよ」
大介「でも,正体を知られるわけにはいかないし」
宇門「私だって,甲児君に『所長は,もしや宇宙人の存在を信じないのでは』って言われてもちゃんとシラを切ってるんだよ。目の前にお前という実例があるのに」
大介「そりゃそうと,甲児君は『所長,NASAではですねぇ,既に認めているんですよ!現に一般人でも頻繁にUFOを発見しているじゃありませんか』って言ってますよね。本当ならどうして宇宙人実在説を唱えている父さんが,異端として学会に認めてもらえないんですか」
宇門「オマエの正体をばらして,実験材料にして地球人じゃない証拠を出せば,私は学会の主流に返り咲くだろうねぇ」
大介「うっ……(大汗)」
宇門「まあ,とにかく甲児君の円盤をバカにしちゃいかんよ」
大介「でも,見れば性能の見当がついちゃいますし。笑ったのは,これまで見てきた円盤が攻撃とかしてくるろくでもないものばっかりだったので,平和的でちょっとほほ笑ましかったんですよ。ま,僕は当分の間牧童に徹しているつもりですし,バレる心配はないでしょう」
宇門「それで,甲児君にとんでもないあばれ馬をあてがったのかね?」
大介「いや,だって,そういうリクエストだったし,甲児君は馬に乗れると思ってたし・・・。僕が馬を落ち着かせたから,これできっと甲児君は僕のことをプロの牧童だと思ってくれたはずですよ」
宇門「そのついでに,人間離れした運動能力まで見せつけちゃしょうがないだろう」
大介「(ぎくっ!……)以後できるだけ気をつけます」
宇門「まあけが人が出なくてよかったよ。ところでな,大介,赤い月がベガ星人の出陣ののろしだとしてもだ,『こりゃあ国防軍に連絡した方がいいな。奴らはきっと攻めてくる』はまずいんじゃないのか?」
大介「甲児君の前で言っちゃったからですか?」
宇門「それもあるが,国防軍が迎撃に出たとしてだ,技術力の差を考えればまず勝てないとは思わんか。下手をすれば全滅してしまうぞ。その上『ま,この際君はあまりでしゃばらん方がいいな。UFOを甘く見ると痛い目にあうぞ』じゃ,怪しさ大爆発だぞ。甲児君にとっては」
大介「はあ……」
宇門「それからな,ギターに八つ当たりしちゃいかんよ。最初は1本しか切れてなかった弦が,投げ捨てたせいで残りも切れたじゃないか。その後,走ってるときのお前のせりふ『俺にはこの力強い大地がある。美しい緑がある。』って何か省略されてるだろ」
大介「気持ちを正直に言っただけですが……」
宇門「地球人よりずっと優れた力のあるお前が全力疾走で大地を踏みつけまくり,挙げ句に草は引き抜いてるし。『俺にはこの(フリード星人の力で力いっぱい蹴飛ばしてもとりあえず穴が開かない程度の)力強い大地がある。(多少引っこ抜いた程度ではどうってことのない位丈夫で)美しい緑がある。』じゃないのか」
大介「父さん,一体どこから見てたんです?(赤面)……それで,甲児君と仲良くって件ですけど,無理っぽいですよ。彼,僕がとめてもTFOで飛び出していっちゃうし。グレンダイザーを出撃させたのはいいけど,これでベガ星連合軍に存在が知られたから,これからが大変だ……」
宇門「まあそう悲観的になるな。乗りたくなかったのによくやってくれたと思ってるよ。ただね,『ばかやろう,俺の気持ちも知らないで!』って言われてもだね,地球人にはテレパシー能力は無いし,だからこそ今までお前の秘密も守れたわけだから,まああきらめなさい」
大介「ところが,甲児君が何か感づいたみたいなんです。グレンダイザーの操縦者が僕だって疑い始めてるかもしれない」
宇門「それは一体・・・サングラス越しの上,お前のヘルメットは目しか見えないはずだが?」
大介「それが彼には見えたみたいなんですよ」
宇門「甲児君の視力も大したものだな。ま,わからんでもないが」
大介「そうでしょう,父さん。牧童じゃなくて,甲児君は遊牧民になってもやっていけますよね」
宇門「・・・・(そーゆー発想しか出てこんか。大介を牧童にしたのは失敗だったかもしれん。)そうじゃなくてだ,TFOを有視界飛行させながら技術的にはるかに進んだミニフォーとドッグファイトしてるわけだから,視力がよくなくちゃできんだろうと思ったんだよ。坂井三郎とどっこいってとこだろうな」

SF的考証:月の色が赤くなる理由

 まず,「赤い月は出撃ののろし」を検討しよう。のろしが必要な状況とは,遠く離れた味方とタイミングを合わせて攻撃するような場合だろう。昔は無線で連絡というわけにもいかなかったので,遠くに居る別動隊に情報を送るには,のろし位しか方法が無かった。さて,ベガ星連合軍は,月の裏側のスカルムーン基地から出撃してくるのだが,基地はここだけであり,通信すべき相手は他に居ないのだから,月の色を変えて地球に知らせる必要がない。また,一方的な侵略を仕掛けるわけだから,わざわざ攻撃をしますよと地球人にわからせるメリットもない。不意打ちが最良の手段である。ところが,出撃前に月が赤くなるという事実があるのだ。これを説明するには,ベガ星連合軍のエネルギー源であるベガトロンが青い光を吸収する物質だと考えればよい。後に,ベガトロンの汚染で資源惑星もベガ星本体も失うは,円盤獣デキデキへのエネルギー注入をしくじって大爆発させるはという体たらくを考えるに,出撃の準備のときにはベガトロン漏れまくりなのではないだろうか。ベガ星の技術をもってしても漏れやすく取り扱いが難しいか,漏れることを前提にして管理しているか,どちらかなのだろう。いずれにしても出撃準備で,一時的に月表面でベガトロン濃度が上がり,太陽光の青色を吸収してしまうから,結果として月が赤く見えるのだ。
 13話で確認できるように,既に円盤獣がスカルムーンを出発して地上に居る状態では,侵略作業の真っ最中であっても月の色に異常は見られない。このことも,出撃前のベガトロン漏れという解釈を裏付けている。