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5.炎の愛を夕陽に染めて

ストーリー紹介

 偵察に出ていたブラッキーが帰ってきて,地上の写真をガンダル司令に見せた。円盤の発着に都合のよい飛行場を見つけたのだ。人質をとって前線基地をつくろうという計画である。

 大介は,赤い月を見て悩んでいた。
「お父さん……また赤い月が……」
「大介」
「僕が地球に居るために,何の関係もない人に迷惑がかかるのはとても耐えられません」
「しかし,大介,早まってはいかんぞ。お前が居なくなれば全てが片づく問題ではないのだ」
「しかし……」
「大介,ベガ星連合軍が存在する限り,地球の危機は去らないのだ。辛いだろうが,フリード星の悲劇を繰り返してはならない」

 翌朝,件の飛行場ではセスナ機による飛行コンテストの準備が進んでいた。甲児も参加するために飛行場に向かうが,途中で別の参加者に挑発されてますますやる気になっている。ひかると吾郎は,番太の馬車で飛行場に応援に向かった。団兵衛は宇宙科学研究所へ遊びに行く。大介は電波障害がひどくなってきたことを気にしている。レーダーが使えなくなりそうなのだ。その時,宇宙望遠鏡がマザーバーンを捕らえた。大介は甲児に連絡し,コンテストを放棄して直ちに戻るように言う。が,甲児は,もうスタートだからといって無線を切って,飛び立った。
 研究所では団兵衛が円盤を見て大喜びだ。が,電波障害で望遠鏡はブラックアウト,ススキが原飛行場とも連絡が途絶えてしまった。甲児はコンテストの最中だが,既に宇宙科学研究所とも管制塔とも連絡がとれず,攻撃してきた円盤に攻撃されて飛行機は炎上して墜落した。それでも,何とか消火が間に合い,甲児は番太に助け出される。その直後,ミニフォーが着陸してきて,甲児,番太,ひかる,吾郎を始め,飛行場に来ていた人たちを包囲して人質にした。
 妨害電波が途切れた宇宙科学研究所では,UFOがススキが原飛行場方面に飛んでいくのをキャッチした。宇門は,宇宙人に占領されたのかもしれないと言い,団兵衛に向かって,善良な宇宙人ばかりではないと諭した。団兵衛は大介に助けに言ってくれと頼むが,大介は動かないので,自分で馬に乗って助けに行こうとするが,馬に乗り損ねて気絶してしまった。

 大介はデュークフリードとなり,グレンダイザーで出撃した。ブラッキーは奇襲に成功して有頂天で,グレンダイザーの出撃を知らされると,捕獲しようと考えた。飛行場では,甲児達がベガ星兵士に銃を突きつけられて身動きとれないでいる。デュークはミニフォーを破壊するが,人質がどうなってもいいのかとブラッキーに脅されて,戦うことができず,ブラッキーの指示に従うことになった。円盤獣ドムドムは,グレンダイザーに鎖を掛けて連行しようとした。ブラッキーはどっちにしても人質を殺すつもりだ。
 甲児は隙をついてベガ星兵士から銃を奪い,ミニフォーも奪って反撃した。デュークはダイザービームで円盤獣を攻撃し,鎖を引きちぎるためにスペイザーと分離後,再度合体して飛行場へと引き返した。途中,合体を邪魔されつつも,スクリュークラッシャーで反撃して合体,地上にたたきつけられる直前にまた分離してうまく反撃に転じた。ドムドムに体当たりされダイザーはまた鎖を掛けられるが,反重力ストームで本体を吹き上げておいて,ショルダーブーメランで鎖を切った。円盤獣の体当たりをかわしつつ,ダブルハーケンで一刀両断にしてとどめをさした。

 ブラッキーは引き上げ命令を出し,ついでに甲児が奪っていたミニフォーを自爆させたが,異常を察知した甲児は危ういところで離れて無事だった。大介は研究所に戻って,宇門に皆の無事を告げる。観測室で居眠りをしていた団兵衛は,大介に向かって,あれほど頼んだのに行ってくれなかった,見損なったと言って研究所を出て行った。研究所の門のところでひかるたちを乗せた馬車と出会った団兵衛は,甲児が皆を助けたと思って男の中の男をベタほめ。その後ひかるを抱き上げて大喜びした。

架空座談会

宇門「『大介,早まったことをするんじゃないぞ』って言ってるのにだね,お前は『死んでもともとです。少しでも地球の人に犠牲が出ないようにできたら本望です』なんて飛び出していったね。それが早まったことだと言ってるんだよ。コラ,ちゃんときいてるのか大介!」
大介「でも,ベガ星連合軍の方もショボかったですし。ブラッキーなんか,『わが恐星大王様。ついにブラッキーは奇襲に成功しました。これより母船マザーバーンで地球制覇の第一歩を踏みしめます』って思いっきりカッコつけてたけど,多分ベガ大王はきいちゃいないし,第一,軍備もなにもない地方の飛行場を占領しただけで大げさですよね」
宇門「お前を助けるのだって半端じゃなく手間がかかっているんだからね。そう簡単に死んでもともとだなどと言われちゃ困るんだよ」
大介「……」
宇門「それだけじゃないだろう。連行されていくときに『くそう,もう我慢できない。甲児君,君だけを死なせはしないぞ。待ってろ』って反撃に出たけどね,甲児君と心中する気かね。お前が居なくなっても問題は解決しないんだよ。早まったことはするなと一体何度言わせるのかねお前は」
大介「でも,どっちにしても人質は皆殺しだってブラッキーが……」
甲児「俺は,そう簡単には死なないぜ」
宇門「それにしたって,様子を窺うとか隙をみるとか,やりようがあるだろう。たまたま甲児君が反撃に出てくれてたから良かったものの,そうでなかったら全滅していたぞ」
大介「今回は地上に激突しないようにうまくやったんですけどね。そっちは褒めてくれないんですか」
宇門「うむ,だいぶ操縦にも慣れてきたようだね。しかし,最後はなかなかしつこい円盤獣だったねぇ。一刀両断されてもまた再結合(?)して突っ込んできたじゃないか」
大介「あれは,フィールド推進システムの暴走でしょうねぇ。ほぼ破壊したんですけど,推進システムだけ自律的に動くような設計になっていたのかもしれません」
宇門「まあ,うまくかわしたね。円盤獣は崖に突っ込んで爆発したし」
甲児「所長,宇宙合金グレン製のハリセンの開発はできませんか」
宇門「超合金ニューZなら何とかなるが,その前に大介にツッコミの練習をさせなきゃいかんな」
大介「円盤獣との戦いは漫才じゃないんですが……」
宇門「ところで,団さんがひかるさんを抱き上げて大喜びしているのを見て,『親子っていいもんですねえ』って言ってたけどね,一応わしらも親子なんだよ」
大介「……はい?」
宇門「抱き上げてキスしてもらいたかったのかね?」
甲児「(大介の口調をまねて)おムコに行けなく……」
バシッ!(大介のハリセンが甲児を直撃)
宇門「今のは何かね(汗)」
大介「甲児君が提案した追加武装の試作品です。突っ込ませてもらいますとねぇ……」
宇門「かっ家庭内暴力はいかんぞ大介」
大介「違ーう!『大介,お前の体の中に真っ赤に燃える愛の炎がある限り,誰とも付き合える。同じ地球の仲間として通じ合える親子のようにな。』って,誰と,どんなつきあいをすることを想像してるんですかーっ!」
宇門「私は別に妄想は抱いとらん!」
大介「視聴者は思いっきり抱くでしょーが!!」
宇門「……」
大介「それと,始めのセリフは何です?『大介,ベガ星連合軍が存在する限り,地球の危機は去らないのだ。辛いだろうが,フリード星の悲劇を繰り返してはならない』って,思いっきり地球人としてのエゴ向き出しじゃないですかっ!」
宇門「それはその……今住んでるところが滅ぼされたらお前だって困るだろう?」
大介「まあ……そうですけど……」
 何だかだまされたような,宇門にうまく丸め込まれたような気分の大介であった。

SF的考証:グレンダイザーのコンピュータ

 グレンダイザーは高機能なコンピュータを搭載していると思われる。単なるコンピュータではなく,AIとでも呼ぶべきものかもしれない。その機能は,コックピットや武器の制御,飛行および戦闘中のデータ分析に留まらず,自然言語も扱うことができ,脳神経系に直接情報を送り込むことも可能である。このことを示唆する事実を2つ挙げる。

 1つは,デュークがほぼ完璧な日本語を話すということである。デュークが地球に来てから,第1話で普通に会話するまで約2年である。充分な教材があって,講師がいて,勉強に時間をかけられるのであれば,2年で母国語以外の言葉を流暢に話せるまで習得することは可能である。しかし,デュークは半死半生で地球にたどり着いたので,長期療養が必要で,すぐには言葉の習得など不可能だったに違いない。しかも,フリード星人と日本人は歴史上初めて接近遭遇するわけで,言語体系がまるで違っているものをすり合わせる作業が必要になる。単に,単語の対応をつけるにしても,「日本語・フリード語辞典」などというものがあるわけがない。デュークが日本語を習得しようとすると,ほとんど「蘭学事始」の世界が展開することになる。とても2年以内に言葉を習得できるはずがない。
 そこで,デュークの日本語習得を助けたものが何か?と考えると,多分,グレンダイザーのコンピュータがアシストしていたのだろう。フリード星の守護神ではあっても,実態は恒星間航行を軽くこなし,銀河をも超えるUFOロボである。全く違う言語を持つ星にたどり着くことも当然予想されるが,言葉が全く通じないということは大きなトラブルを引き起こす可能性があるし,危険でもある。そのための対策として,どんな星に行ってもそれなりに何とかなるように,自然言語を分析し操縦者の脳に直接たたき込むという機能が準備された。
 言葉は,ある数以上知っていると,そこから先は習得がずっと楽になる。グレンダイザーのコンピュータは,言語の習得で最初に苦労が必要な部分を補助しているのだろう。日本の場合は,テレビやラジオの放映が飛び交っているから,言語の情報を得るのは容易である。それを分析・整理して,宇門に発見されるまでの間に,デュークの脳に直接送り込んだのだろう。

 もう1つは,グレンダイザーが攻撃されるとデュークも苦しむ,という事実がある。炎やビームを浴びせられたり,首を絞められたりすると,操縦席のデュークも苦悶の表情を浮かべている。これは,グレンダイザーの状態をデュークに仮想的にフィードバックしているからである。実際に,デュークは熱さや息苦しさを感じているのだ。このフィードバックも,情報の入力が操縦者の脳に直接送り込まれている。
 一見無駄に見えるが,このフィードバック機能は,グレンダイザーを的確に動かすには不可欠なのである。グレンダイザーのパワーを出すとき,デュークは両サイドの操縦桿を力をこめて引いている。ということは,具体的な動きの指示は操縦席の別のパネルやスイッチで行っており,加える力を操縦桿で制御していると考えられる。こんな場合に,何もフィードバックがなかったら,グレンダイザーを動かし過ぎてしまうだろう。ロボットアームで卵をつかむのに,フィードバックがないと簡単に握りつぶしてしまうのは,良く知られた話である。実際,グレンダイザーの手で人間を救助,というシーンが何回かある。また,攻撃されてダメージを受けそうな状態になったことを操縦者が直接知ることで,すぐに対応できるという利点もあるのだ。
 ただし,外からの刺激をそのまま伝えていたのでは,不都合なこともある。キングゴリに腕をちぎられたときの仮想的な痛みをデュークにフィードバックしたら,デュークへのショックが大き過ぎる。おそらく,リミッタがかかっていて,操縦者に極端なダメージを与えないようになっているのだろう。