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7.たとえ我が命つきるとも

ストーリー紹介

 ブラッキーはマザーバーンから地球を見ながら,侵略が進まないことを気にしている。そのとき,後方から円盤が接近してきた。ブラッキーはミニフォーを出撃させるが,あっさり撃墜されてしまった。さらに,円盤獣フイフイを出撃させたが,これも簡単に倒されてしまう。円盤獣ギンギンに乗ってやってきたのはベガ大王の親衛隊,ゴーマン大尉であった。ゴーマン大尉はベガ大王の命令をうけてやってきたのだ。ブラッキーの実力ではデューク・フリードは倒せないとゴーマンは言い,マザーバーンの指揮をとると主張した。親衛隊はベガ大王の直属部隊なので,ガンダルもブラッキーも逆らうことができない。自分の地位が脅かされることになったブラッキーは心穏やかではない。

 大介は夜半,自分が敗れる夢を見て目を覚ました。
「不吉な予感がする……。今だかつてない強敵が,まもなく地球にやってくる。この俺を倒しに……」
  しかし,大介は,怖れず戦うことを受け入れるのだった。
「この緑の大地で平和な生活を送りたいと願った俺だったが……しかし,もう逃げ出すことはできない。たとえこの命尽きるとも,戦うことが俺の宿命なのだ」と。※1

 翌朝は快晴で,団兵衛と大介は馬に乗って牛を連れて移動させている。同時刻,ゴーマン大尉が出撃した。ブラッキーは当然面白くない。

 一仕事終わった団兵衛は望遠鏡で空を見ていた。大介は作業中である。団兵衛はUFOを発見し,丸に星のようなマークがついていると言う。それは,フリード星をほろぼした親衛隊のマークだった。大介は,甲児にUFOが来たことを言わないようにひかるに伝えて走り去った。牧場の門のところで甲児に出会った大介は,甲児を殴って出撃を止め,変身してグレンダイザーで出撃する。入れ違いに宇門所長がやってきて,止められなかったことを悔やみつつ,研究所に引き返した。

 空中でゴーマン大尉と接触したデュークは,一緒にきていたミニフォーを破壊する。が,ゴーマンの操縦する円盤獣の動きは素早く,超合金の楯にはスペースサンダーもスクリュークラッシャーパンチも効かない。デュークはグレンダイザーをスペイザーから分離させ,地上で戦おうとする。しかし,ダブルハーケンも楯にはね返された上に,円盤獣にさんざん体当たりされて反撃のきっかけもつかめない。宇門所長は,助けに行こうとする甲児を止めて,一時退却するように指示した。グレンダイザーは,再びスペイザーと合体し,紫色のアンチレーダーミストを噴射してゴーマンの目をくらましつつ,研究所に戻った。しかし,ゴーマン大尉も熱線追跡装置を放って,居所を追跡するのだった。グレンダイザーを下りた大介は格納庫の床に倒れてしまう。

 ゴーマンはスカルムーンに引き上げた。グレンダイザーを討ち漏らしたと突っ込むブラッキーに,再度,司令官は俺だと言って司令官席から殴り出した。ブラッキーは,ゴーマンにデュークフリードを倒させてはならないと思い始めた。ギンギンの整備を終えたゴーマンは再出撃する。ミニフォーが従ったが,それを,ブラッキーは不適な笑いで見送るのだった。

 研究所では,山田所員が不審な物体を見つけて所長を呼んだ。熱線追跡装置だと大介は見抜いた。甲児はTFOで追跡装置を爆破するが,既に遅く,円盤獣が接近していた。TFOはそのまま円盤獣に向かう。デュークもそれを追って出撃する。TFOは円盤獣にぶつかり墜落,踏みつぶされそうになった。そこへ,デュークがグレンダイザーでかけつける。しかし,やはり円盤獣の動きは早く,攻撃はかわされるか楯でさえぎられてしまって,ダメージを与えることができない。逆に,追いつめられて,操縦席を破壊されそうになった。大介に悪夢がよみがえる。そのとき,ミニフォーが円盤獣の胴体を攻撃した。ブラッキーの差しがねであった。その隙に,デュークはスペースサンダーでとどめをさした。その姿を,宇門所長は冷静に見守っていた。

 一方,ガンダルはゴーマンが敗れたという報告をブラッキーから受けて驚愕していた。親衛隊でも勝てなかったデュークを,ブラッキーは倒して見せるとガンダルに言う。何も知らないガンダルは,ブラッキーにまかせるのだった。

 デュークに肩をかりて,甲児はデュークと二人で夕陽を眺めていた。

※1:このシーンの大介は上半身裸で,胸のペンダントは茶色である。グレンダイザーを検知する青い石のものではなく,フリード王の印の方をつけているようだ。

架空座談会

宇門「フリード星人の娘には,予知能力を示す者がいるということだがね」
大介「はい……?」
宇門「お前は夢で予知するのかね?牧場際の時といい,今回といい,結構的中してるじゃないか」
大介「単に夢見が悪いだけのような気もするんですが……」
宇門「ところで大介,今度は上半身裸で寝てるのかね?だんだん寒くなっているはずだが……」
大介「でも,服のまま寝てるのはいけないんですよね」
宇門「(微妙に感覚がずれてる気がするな……)それに,窓はきちんと閉めなさい。風だけだから良かったようなものの,これからの季節だと,朝起きたら部屋の中に雪が積もってたなんてことにもなりかねないんだよ」


(牧場入口にて)
大介「甲児君」
甲児「大介さん。なぜ一緒に戦おうと言ってくれないんだ」
大介「敵はだたの円盤獣じゃないんだ。傷つき,倒れるのは俺1人でたくさんだ」
甲児「大介さん。あんたが死ぬときは俺も死ぬときだ。水臭い言い方はよしてくれよ」
大介「まだわからないのか」(甲児の手を振り払って殴る)。
大介「俺に万が一のことがあっても,君は最期まで生き抜いてこの地球を守るんだ」(走り去る大介)
甲児「くそぉっ!何と言われようとあんたを見殺しにはできねェよ!」
(宇門所長がジープでやってくる)
宇門「甲児君,大介はどうした?」
甲児「大介さんは死を覚悟で戦うつもりですよ」
宇門「ひと足遅かったか……できることなら引き止めたかった。できることなら……」
(崖から飛び降り,戦闘服に変身して湖に飛び込むデューク。宇門所長と甲児はジープで研究所に向かう。)
宇門「敵は,話にきいた親衛隊の円盤獣だ。TFOはおろか,グレンダイザーですら容易に勝つことはできまい」
甲児「それで大介さんは……」
宇門「君を万が一にも死なせたくはなかったんだ」


宇門「甲児君を誘わなかった理由だがね……本当は何も作戦を思いつかなかったからなんじゃないかね」
大介「(ぎくっ……)」
宇門「だから早まるなとしょっちゅう言っとるだろうが!まあ,『俺はもう逃げ出すことはできない。たとえこの命尽きるとも,戦うことが俺の宿命なのだ』って決心は認めるがね。もうちょっと作戦とか戦略とかを考えなさい」
甲児「大体さ,アンタが負けたら地球は終わるんだぜ,大介さんよ」
宇門「甲児君も大介のことを言えた義理じゃないだろう!何かねこの下のシーンは。まったく二人とも揃いも揃って……」


宇門「甲児君,引き返すんだ。無茶はいかん。TFOで勝てる相手ではない」
甲児「グレンダイザーを守って死ねれば本望ですよ」
大介「甲児君,君1人を死なせはしないぞ」
宇門「大介!再び戦って勝てる自身はあるのか?」
大介「甲児君を見殺しにはできません。父さん,戦わせてください!」
宇門「大介!……大介……」
(TFOの攻撃は通用せず,円盤獣に踏みつけられてしまう)
ゴーマン「デューク・フリードは何処にいる?近くに居ることはわかっている,死にたくなければデュークフリードの居所を言え!」
甲児「俺を見くびるんじゃねェやい!たとえ殺されたって誰が言うもんか!」
ゴーマン「小僧,この俺には強がりなど通用せんぞ。このまま押しつぶされたいのか!死にたくなければデューク・フリードを呼べ!」
甲児「いくらわめいたって無駄だい!押しつぶすんなら一気に押しつぶしたらどうなんだい!」
ゴーマン「小僧,なぜ命がけで宇宙人をかばおうとするんだ?」
大介「信じ合っているからだ!愛と平和を願う心で固く結ばれているからだ」
ゴーマン「フフフフ……自分から死ににやってくるとは殊勝な心がけだな。デュークフリード,今度こそ貴様を地獄の底に送り込んでやるぞ」
甲児「止せ,止すんだ大介さん!」
大介「甲児君,死ぬときは一緒だ」


甲児「大体,俺が突っ込もうと思ったら大介さんがきちゃったんだぜ。なぜ宇宙人をかばうのかって,『そりゃお前らが攻めてきてるからだろーが』ってな!!」
大介「……あのね,甲児君」
甲児「それにしても所長は冷静でしたよね。大介さんが円盤獣にとどめを差しても微動だにせずモニターをみていた」
宇門「お前達が無茶ばっかりするからだろうが!お前達が!」
大介「でも,『愛と平和を願う心が,憎しみと戦争を好む心に勝ったのだ』って,わかってくださって嬉しいですよ」
宇門「あのなあ大介,他にどんなコメントをしろというんだ?」
大介「は?」
宇門「敵の仲間割れでかろうじて勝ったのは見てわかっておるよ。技や力で勝ったわけじゃないだろう?要するに運が良かっただけじゃないか。心が天に通じたとでも言う以外に,どう言えというのかね?」
 星が違うというのにスーパーロボットの操縦者は無茶する奴ばっかりなのはどうしてだろう,十蔵博士や剣造博士はともかく,弓教授や私は白髪が増えるか胃に穴があくかしかないような気がする,まったく気苦労の絶え間がないやとぼやく宇門であった。

SF的考証:ベガ星連合軍が弱体化した理由

 宇宙征服をたくらむ勢力のはずが,最終的にはデュークによってベガ大王が打ち取られるという最後を迎えている。地球のバックアップがあったとはいえ,グレンダイザー単騎でベガ星連合軍を敗退させたわけである。アンドロメダ星雲を手中にした勢力の最期としては,かなり情けないように見える。しかし,これは,デュークが決戦を挑む頃にはベガ星連合軍が弱体化していたということを意味するのだ。

 ベガ星連合軍は,遊牧民が新しい牧草地を探すのと同じ感覚で他星を侵略して開発した。しかし,ベガ星方式で開発すると,まもなくその星は生物が住めなくなってしまう。征服するそばから使っては汚染してしまったので,征服した星は数多くても,兵站に組み込める星はほとんどなかったのではないだろうか。度重なる侵略戦争の実行は,強大な軍事国家であっても無視できない人的資源の損失をもたらしたのだろう。さらに,汚染や事故による死亡が追い討ちをかけたに違いない。ベガ星が爆発したとき,ベガ大王はアンドロメダ星雲の他の星には目もくれず,スカルムーンに移動してきた。これは,これまでに征服した星が既に使い物にならない状態になっていたからに違いない。だから,わざわざ遠くの地球侵略基地にやってきたのだ。フリード星のように,一定期間経つとベガトロン汚染から回復する場合もあったのだが,ベガ大王は気付いていなかったようだ。

 ベガ大王は,軍隊の中でも精鋭をひきつれてスカルムーンにたどり着いた。ベガ星脱出のときに,兵士候補となる民間人を多数見捨ててしまったら,兵士を増やすことはできなかった。ベガ大王のまわりのコマンダーと大王本人を倒せば,後は総崩れとなったのだろう。