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12.虹の橋を渡る少女

ストーリー紹介

 美雪岳の測候所では,住み込みの観測員の家族がクリスマスツリーを飾っていた。一人娘のみゆきは,内緒の願いが書いてある日記帳を,願いがかなうようにとツリーの根元に置いた。そのとき,強い地震がおきた。円盤獣ガニガニが接近してきたのだ。ガニガニは測候所の建物を崖下へと突き落とした。

 宇宙科学研究所では,地震だという報告を聞いたが,美雪岳一帯に地震がおきたことを示すデータがなかった。甲児と大介はヘリコプターで調査に向かった。ガニガニはヘリの接近を察知して姿を隠した。みゆきは何とか雪の中から這い出すが,気を失ってしまった。デュークはみゆきを発見,担架でヘリに収容して立ち去る。ヘリがいなくなったのを見計らって,円盤獣ガニガニは再び動き出した。

 みゆきは頭に怪我をして,記憶を無くしてしまって,話をすることもできなくなった。脳内出血のため,手術が必要な状態だ。危険な手術のため,成功には本人の生きる意志が必要だ。精神的ショックをいやすために,しばらく牧場で生活してはどうかと,大介は提案した。

 ガンダルは,グレンダイザーの基地が美雪岳周辺にあると見当をつけ,美雪岳にレーダーミサイル基地を建設するつもりだ。

 白樺牧場でも,クリスマスツリーの飾り付けをしていた。みゆきは,飾り付けに参加することもせず,寂しそうに歩き去っていった。宇宙科学研究所では,宇門所長が,測候所が壊れる直前の通信を検討し,機械のようなものが測候所を押しつぶしたと推測し,甲児にTFOでの偵察を命じた。しかし,美雪岳山頂は円盤獣のカモフラージュによって,濃霧のため何も見えず,甲児は引き返した。しかし,気象情報では美雪岳付近は快晴のはずだ。不審に思っていたところへ,ひかると吾郎が,みゆきが居なくなったと駆け込んできた。皆で牧場を探すが見つからない。もしかしたら山へ帰ったのかもしれない,と思った大介は山へ向かった。

 みゆきは,美雪岳で雪を掘り起こしていた。クリスマスツリーやマフラーを見つけたみゆきは,一緒に出てきたマッチを擦り,母親に読んでもらったマッチ売りの少女の話を思い出し,両親の姿を星空に見て,泣き叫ぶのみだった。基地建設にみゆきが邪魔だと思ったブラッキーは,円盤獣に命令して雪崩でみゆきを押しつぶそうとした。間一髪でデュークはみゆきを雪崩から救い出し,勇気をもつんだ,と励ますのだった。みゆきは再び気を失ってしまった。デュークは,みゆきの日記を見つけて読み,「星の王子様とデートして,虹の橋をわたったりしたい」という願いを知った。みゆきはそのまま手術室に運び込まれて,脳出血の手術を受けた。夢を見たみゆきは,岩に怪獣が隠れているとうわごとを言うのだった。大介と甲児は,美雪岳山頂に向かって出撃した。

 出撃を知ったブラッキーはミニフォーを出撃させた。ミニフォーは甲児が引き受け,デュークは山頂の怪しい穴にハンドビームを打ち込んだ。ブラッキーはガニガニを出撃させた。ガニガニの冷凍光線を受けたグレンダイザーは凍りつくが,パワーアップして溶かすと,スペイザーから分離した。スクリュークラッシャーパンチは防御されてしまったが,デュークの方も円盤獣のミサイル攻撃を躱して,円盤獣の足をつかんで投げ飛ばした。キックを入れようとしたが,ガニガニに銛を打ち出されてよけるのが精いっぱいだ。銛の攻撃を避けるためにグレンダイザーは斜面を滑り降りた。打ち込まれた銛をつかんだグレンダイザーは,ガニガニに投げて頭に命中させた。ガニガニは冷凍光線で反撃したが,TFOがかけつけ,ガニガニの注意をそらした。その隙にショルダーブーメランでガニガニの首を切り落としたグレンダイザーは,今度はダブルハーケンでガニガニの胴体を破壊する。ガニガニは建設中のミサイル基地に落ちて,ミサイルもろとも爆発した。

 白樺牧場ではあらためてクリスマスパーティーをしていた。みゆきは頭の包帯がとれたが,うまく歩けない。団兵衛がサンタクロースに扮してみゆきを励ますが,みゆきは沈んだままだ。そこへ,トナカイの飾りをつけたTFOで甲児がやってきて,夢をかなえてあげるといってみゆきをつれていく。雲の上では,帆船に擬装したグレンダイザーでデュークが待っていた。みゆきは思わず立ち上がった。グレンダイザーからTFOまで虹色の道ができ,みゆきは虹の橋を渡ってデュークの元へ行くのだった。

架空座談会

宇門「ところで大介,お前は最後に身分を詐称したね?」
大介「えっ!」
宇門「みゆきちゃんの『星の王子様に会いたい』って願いをかなえるためにいろいろ演出したのはなかなか感心だと思うんだがね,お前は,もうフリード星の王子じゃなくて国王だろう?父王は亡くなられたわけだし」
大介「……そうでした……」
甲児「あ,『星の王子様だよ』っつったの,俺だ。悪ィ,大介さん」
宇門「星を滅ぼされたときは王子だったから,なかなか気持ちが切り替わらないのもわかるがv」
甲児「それにしても難儀だよなあ,大介さん。星の王子様役をやっても,やっぱりヘルメットのバイザーを上げられないなんてよ」
大介「役って……いちおう本物だったんですけど」
宇門「正体を隠すとはいえ,こんなカウンセリングのような時にまで顔を見せられないというのは,不便なものだねえ」
大介「だけど,みゆきちゃんを助けたときもバイザーは下ろしたままだったし……同じじゃないと混乱するかと思いまして」
宇門「それなんだがね。美雪岳での救助が間に合ったから,みゆきちゃんはお前を信頼してくれたようだが,そうでなかったら,ただの怪しい覆面の自称王子だねぇ」
甲児「そういう怪しい人にはついていっちゃいけません,って躾けますよね,普通は」
大介「……甲児君,あんまりだよ」
宇門「日本のコンビニじゃ確実に入店を断られるだろうな……」
甲児「銀行や郵便局にも行けないぜ」
宇門「フリード星では,あの格好でも怪しまれないのかね」
大介「……王子だったんですけど……普段着は別なんですけど……」
宇門「まあ,それはそれとしてだ,今回はグレンダイザーの新しい機能が2つ出てきたね」
甲児「『グレンダイザー・パワーアップ』と『虹の橋』ですね」
宇門「機体の温度を上げてどうするのかね」
甲児「うんと上げられれば,グレンダイザーの手のひらでバーベキューができますよね」
大介「そこまでは上がらないよ……弱い冷凍ビーム程度ならパワーアップで何とかなるけど……」
甲児「あんまり役にたたない機能だな」
大介「そうでもないんだ。守護神だから,イベントに出ることもあるけど,雪が積もったりしたら様にならないこともあるからね……」
甲児「じゃあ,虹の橋も?」
大介「反重力ストームの応用技だよ」
甲児「やっぱりお祭り用かい?」
大介「そんなところだよ。フルパワーで岩山を動かすこともできるし,精密に計算して,周りと違った重力分布を作ることもできる」
宇門「確かに,グレンダイザーの重力制御システムは,推進系といい武器といい目をみはるものがあるが……」
大介「守護神ですから。兵器じゃないので,武器以外に使える機能もいくつかあるんです」
甲児「来年のクリスマスは,遊園地で虹の橋を作ってショーをやったらどうだろう。子供たちが喜ぶと思うぜ」
宇門「ふむ……チケットを販売すれば,グレンダイザーの保守・運用費用の足しになるかもしれん。擬装してしまえばグレンダイザーとはわからないだろうし,虹の橋の原理の方は地球人には見当もつかないから,新手のアトラクションで通るかもしれんな」
大介「グレンダイザーは秘密裏にここに置いてた筈では……」
宇門「私には,ベガ星連合軍と戦う兵器として使うよりは,遊園地のアトラクションに使う方が,グレンダイザー本来の使い方に思えるんだがね。大体,お前は戦い向きのキャラでも性格でもないし」
大介「……」
宇門「ま,ベガ星に滅ぼされちゃアトラクションどころじゃないからね。戦いが一段落したら考えておくれ」
甲児「ベガ星の連中,どう見ても遊びとかアトラクションとかに理解を示すとは思えないぜ。面白くねェ奴らだ」
 星間戦争の敵軍が面白かったらどうかしている,と大介はため息をつくのだった。

SF的考証:シューター

 11話から,デュークの出撃は,シューターを使って行われるようになった。このシューターにも,光量子エンジンと重力制御システムが使われているんじゃないか,という話をしたい。

 10話まではは,ダストシュートに飛び込んだ大介は,建物内のダクトをほとんど垂直に落下して,グレンダイザー格納庫に飛び降りていた。シューターは,カーブしたレールの上を走っているので,垂直落下ではなく,螺旋状に降下しながら,グレンダイザー格納庫に通じていると思われる。

 シューター発進時の描写として,後部のノズルから炎のようなものが吹き出している。これは,ロケットエンジンの噴射に似ている。しかし,シューターは通常のロケットエンジンで動いているのではない。

 シューター用の通路は細い。あの中で,ロケット用の燃料を燃焼させたら,熱がこもって,シューターも大介も見事にローストになるだろう。特に,発進の最初は,動く前に炎が吹き出ており,あれがロケットエンジンだとすると,一気に温度が上がってそこらじゅう黒焦げになるはずである。現実のロケットでも,発射後は発射台周辺は熱で焼け焦げてしまう。また,ジェットエンジンのようなものだとすると,細い通路で動かした途端に酸欠でデュークは窒息,エンジンは止まってしまうだろう。同時に温度も上がってしまう。

 デュークが飛び降りた後のシューターの軌道は,空力では説明ができない。まず,シューターの形状は,揚力を得られる形ではない。格納庫に飛び出すとき,シューターは斜め下に飛び出す。デュークが飛び降りた後,少し降下してからまた上昇し,向かい合った入り口に斜め上向きに飛び込む。途中で上向きの力が働かない限り,この動きはできない。

 以上の2点から,シューターには,グレンダイザーの世界で標準の方法,つまり光量子エンジンとフィールド推進システムが使われていたと考えられる。炎のように見えているのは,光量子を利用した後のエネルギーを赤い光で放射しているのだ。放射の方向が散らばっているので,光りの加減で炎っぽい感じに見えるのだろう。フィールド推進システムを使えば,一旦下降したあと再上昇することも可能である。

 グレンダイザーを調べることで,宇門は,フィールド推進システムと光量子エンジンについて,ある程度のことを知ったのだろう。もちろん,原理の完全な理解にはまだかなり遠いが,見様見まねで似たようなものを動かせるようにはなっていたのだろう。こういう時は,大きいものを動かすよりは,まず小さいものをちょっとだけ動かして様子を見ながら技術をブラッシュアップしようと考えたはずだ。デュークバギーやシューターは,この格好のテスト装置になったのではないか。宇門のこの努力は,スペイザー開発につながることになる。