2.ああ!わが大地みどりなりき
ストーリー紹介
第一戦で負けたベガ星連合軍の円盤は,月の裏側の基地に帰還した。「奴がグレンダイザーに乗って我々に楯突くとすれば,地球侵略作戦は振出しに戻さねばなるまい」と,ガンダル司令は事態を深刻に受け止めている。ベガ大王は,奴をたたきつぶさない限り地球侵略はできないと,ガンダルを鼓舞する。ガンダルとブラッキーは報復の準備にとりかかる。
その夜,また月が赤く染まった。デュークは,2,3日のうちに再びベガ星連合軍の攻撃があるだろうと予想する。
研究所を出たデュークは,甲児に呼び止められる。甲児は大介の正体を知りたがり,大介に殴りかかるが,大介は相手にしない。正体を話せと迫る甲児をそのままにして帰っていく。
翌朝,甲児はTFOの整備作業をし,団兵衛にスロットルレバーを引くように頼む。が,団兵衛は操作を間違えて,TFOを暴走させ,ぶつかったショックで気を失ってしまった。見ていた大介は馬で負いかけ,TFOに飛び乗る。その姿は甲児に見られていた。再度問い詰められて,宇門源蔵と大介は,甲児に本当のことを教える。大介がフリード星の王子デューク・フリードであること,フリード星はベガ星の攻撃で滅んだこと,グレンダイザーで地球に逃げてきたところを宇門源蔵に救われたことを。
夜になって,ベガ星連合軍が再び侵略を開始する。出撃しようとする甲児を大介は殴って止め,グレンダイザーで出撃する。円盤獣ガメガメのマンリキ作戦で,スペイザーと分離できないまま地上に激突寸前となるが,TFOのミサイル攻撃で円盤獣のひるんだ隙に何とか分離できた。しかし,激突の勢いを完全に弱めることはできず,デュークは負傷する。ダイザーは崖から落とされるが,その後ガメガメが飛び降りてきたところをスペースサンダーで撃破するも,デュークは気を失う。宇門博士と甲児に見守られて気がついた大介は,甲児と握手を交わすのだった。
架空座談会(於:宇宙科学研究所会議室)
宇門「ベガ大王は『太陽系を完全征服するためには最後に残った地球は何としてでも攻め落とさねばならん』って言ってるけどね,この太陽系は地球以外に生物は居ないから,征服のしようがないと思うが」
大介「はあ……。一番後回しにするほど重要度が低い星なら,放置しておいてくれればいいのに」
宇門「その後,ちょっと引っ掛かるんだがね。『できることなら,もう二度とグレンダイザーには乗りたくない。この緑の大地にこれ以上戦禍を拡げたくないんだ』って言ってるけど,一応は守護神だろう,アレは」
大介「そのはずだったんですけどねぇ(ため息)。今のところどっちかというと疫病神な気が」
宇門「ふむ……それでも,ベガ星連合軍が侵略しにくる以上,無いと困る」
大介「僕個人にとっては疫病神ですよ。前回,戦いの時に目があっちゃったおかげで,甲児君にストーカーされるハメになりました。待ち伏せされた上にですよ,『あんたの正体が知りたくってねえ』って,人を化け物みたいに……」
宇門「それでもね,『俺はこの緑の大地を愛する一人の平凡な人間だよ』ってね,亡命してきた王子が平凡なワケないだろう」
大介「地球に来ちゃったらもう王子じゃないですよ。それにね父さん,正体を話せだなんて,正義の味方が正体を隠している悪役に向かって言うセリフですよ。乗りたくないグレンダイザーに乗って侵略者と戦ってるのにあんまりだと思いませんか?」
宇門「それで甲児君をバギーではね飛ばしたのかね。じゅうぶん悪役してるじゃないか」
大介「あれは甲児君が突っ込んできたんです」
宇門「それで,甲児君に怪我はさせなかっただろうね」
大介「大丈夫ですよ。その後思いっきり殴られましたから。けが人のパンチ力じゃなかったし」
宇門「で,甲児君にバレたのはなぜかね」
大介「TFOを暴走させた団兵衛おじさんを助けようと思って,馬から飛んでるTFOに飛び乗ったんです。間一髪で成功しました」
宇門「やれやれ……。まったく損な性分だねお前は。せっかく正体を隠しておいたのに,乗りたくないグレンダイザーで戦ったばっかりに甲児君に疑われ,人命救助のおかげで完全にバレた……」
大介「父さんの言う僕の”宿命”って,人助けをするたびに苦労を背負い込むって意味だったんですか(泣)」
宇門「日本人なら,宿命というか巡り合わせの悪さをどうにかしたいときは,お参りに行くとかお祓いをするとかするんだが……。グレンダイザーは守護神といいつつそっち方面はまるで役立たずのようだね」
大介「 その話題ならついでに言うことが。父さんのグレンダイザーの説明ですが,ちょっと間違ってませんか?」
宇門「お前がそう説明したのだろうが……む,だいぶ前の話だしまだお前もまだ回復してなかった頃だからなあ。多少の混乱とか勘違いはあっただろうよ。細かいことは気にするな」
大介「(つくったのはフリード星人なんだけどなあ……ま,いいか)」
宇門「甲児君を殴り飛ばして単独で出撃したはいいが,いきなりピンチに陥ってたねぇ」
大介「面目ない,単にしがみついて地上に落とすだけなんて予想外でして」
宇門「ちゃんと甲児君に礼を言うんだね。それに,ヘルメットのフェイスガードは上げない方が良かったんじゃないかね。ほら,ここのシーン,顔からコンソールに突っ込んでるが……」
大介「ここしばらく,戦闘服になってなかったので,視野が狭いのが気になりまして……慣れればそのままで大丈夫かと」
宇門「まあ,なるべく怪我をしないように気をつけなさい」
SF的考証:異なる飛行原理を持つ世界
前2作であるマジンガーZやグレートマジンガーと,グレンダイザーでは,同じマジンガーシリーズとはいえ,それぞれの世界を支配する飛行原理が根本的に異なっている。
ジェットスクランダー,スクランブルダッシュ,グレートブースター,ビューナススクランダーは,どれも中央部分に光子力のジェットエンジンを持っており,エンジンの推進力によって翼に揚力を発生させて飛ぶか,あるいはエンジンを下向きに噴射することで空中で静止したりする。つまり,噴射そのものの反作用を使うか,翼によって揚力を発生させつつ,戦闘機動を行うわけである。つまり,通常推進の世界なのだ。
一方,グレンダイザーの世界では,ジェット噴射なしに飛行が行われている。ミニフォーと司令船であるマザーバーンは基本的にジェット噴射を必要としていない。円盤獣も,大気圏突入から移動の際には,ジェット噴射をしないものの方が多い。対するグレンダイザーも,急発進・急上昇・大気圏内での高速飛行の加速のときにはスペイザー後部のノズルが輝いているが,通常の戦闘起動ではほとんど使われていないようである。武器のスピンソーサーも複雑な動きをするが,やはりジェット噴射はしていない。スピンソーサーが宇宙空間でも使えることを考えると,フリスビーのように回転することで空力によって揚力を生み出している可能性は否定される。
グレンダイザーの世界の飛行原理は,重力場推進(フィールド推進)のように,ジェット推進とは根本的に異なる原理だと考えられる。慣性制御も行っているだろう。大ざっぱな飛行原理は,「すごい科学で守ります」に倣うと,「大体丸ければ飛ぶ」ということでよい。これは,重力や慣性の制御装置が基本的に円盤形をしているからだ。制御装置はスペイザーだけでなく,スピンソーサーにも組み込まれている。
武器に反重力ストームがあることからも,重力場の制御が技術的に可能であることがわかる。反重力ストームを受けた円盤獣は,そのまま持ち上げられて乱雑に回転した後,地上に激突することになる。円盤獣もフィールド推進や慣性制御を行っているはずなのに,まったく機体の制御ができない状態になっていることから,反重力ストームは慣性や重力の制御を,重力場を狂わせることで無効化していると考えられる。
この重力場・慣性制御機構は,変わったところでは,日常の住居にも使われているようだ。破壊される前のフリード星の街を見ると,居住区と思われる部分は大体円盤に近い形をしているが,それを支えている柱の部分は異常に細かったり,地面に近いほど細くなったりしている。フリード星の重力が地球の1.4培だとすると,建物にかかる力を考えた場合,異常にバランスがわるくて不安定な構造をしていることになる。しかし,居住区の床下部分に重力・慣性制御装置を組み込むことで,全体の応力分布を変えているのだろう。その結果,一見不安定に見える建物でも安定かつ安全になっている。
グレンダイザーの世界での科学技術によると,重力や慣性の制御装置を設計した場合,最適な構造は自然に円盤型になるのだろう。このことは,TFOの構造と飛行のしかたからもわかる。TFOは甲児が設計製作したものである。おそらく,人類でほとんど初めて重力・慣性制御を実現したものだと思われる。フリード星やベガ星と共通の科学の法則の発見にたどりついたのだろう。TFOにはノズルは付いているが,排気のためのもので,推進のためのものではない。ただ,最初の技術ということもあって,銀河を越える能力を持ったベガ星からみると,初歩的でおもちゃのようなものに見えたに違いない。
一方,スペイザーの推進力は,後方にジェットを吹き出すことで得ているように見える。実際,ダブルスペイザーがノズルの片側だけ噴射することで急旋回するといった描写がある。これは,航空機の制御ではなくロケットを制御するやり方に近い。宇宙科学研究所がもともと開発していた技術の転用だろう。重量から見て,光量子エンジンを搭載していたと思われるので,光量子をエネルギー源としたロケットエンジンなのだろう。ホバーを持っていたダブルスペイザーはともかく,マリン・ドリルスペイザーは,空力でのみで浮くのは難しいし,グレンダイザーと合体して戦闘機動をするならなおさらである。おそらく宇門は,光量子をエネルギー源とし,重力制御装置を補助的に使いつつ,敏捷な機動は光量子ロケットエンジンで行うという設計をしたと思われる。