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6.大空を斬る闘魂!!

ストーリー紹介

 朝,相変わらず団兵衛はUFOを探して望遠鏡をのぞいていた。ひかるはバスに乗って東京へ旅行に出かける。大介は馬の世話をしている。遅刻して慌てて走ってきた番太は,東京旅行中ひかるを守れと団兵衛に命じられた。

 スカルムーン基地では,ガンダル司令が地球を眺めており,ブラッキーが命令を待っていた。今回の作戦では,東京侵略をしてデュークフリードをおびき出すことになった。

 ひかるを乗せたバスは首都高速を快走していた。突然,バスと周囲の車は道路から吸い上げられて,円盤獣ダムダムの中に捕らえられてしまった。入り口は閉じられ,天井には巨大なスパイクがぶら下がっている。

 甲児は白樺牧場からTFOで緊急発進した。ついでに排ガスで団兵衛を黒く汚してしまったが・・・。甲児は人質の様子を偵察に向かったのだ。甲児は円盤獣の窓から中をみて,ひかると番太がいるのを発見,宇門に連絡する。宇門とともに観測室で状況を見ていた大介は,デュークフリードとなって出撃した。その間に,円盤獣に近づいたTFOもまた,円盤の中に閉じこめられてしまった。甲児は円盤の中で脱出する出口を探し始めた。デュークは人質を気にして,円盤獣を攻撃することはできない。グレンダイザーも吸い込まれそうになるが,何とか脱出した。

 ガンダルはプレス作戦を指示した。人質を押しつぶそうという作戦である。人質が閉じこめられている部屋の天井の巨大なスパイクが降下してきた。一緒に閉じこめられていた作業員が,出入り口を壊して逃げ出そうとハンマーで叩いたら,入り口は開いたがそこからものすごい勢いで空気が吸い出されてしまった。甲児はTFOに備え付けの緊急用の酸素のスイッチを入れて,何とか時間をかせぐが,それも5分しかもたない。デュークは,人質に危険が迫っているので何か方法はないかと宇門に相談する。宇門は,人質を救出する方法は1つだけあるがとても危険な方法だ,とためらって観測室を出て行こうとする。

 宇宙科学研究所には,異変を知った番太の母ハラと団兵衛がやってきた。団兵衛は,大介に運転させてひかるを救助するために東京に行こうとするが,大介が見当たらないと文句を言っている。ハラと団兵衛の我が子を心配し嘆く様子を見た宇門は,円盤獣を空中に誘い出しスピンソーサーで触手を切断,甲児がバスを空中へ押し出すのをグレンダイザーで受け止める,という作戦をデュークに指示した。

 デュークは円盤の足になっている触手をスペースサンダーで攻撃,円盤獣を空中へ誘い出す。甲児は,薄い酸素の中でどうにか人質をバスに乗せて座席にくくりつけ,TFOに戻って準備をする。円盤獣は煙幕をはって攻撃の邪魔をした。デュークはメルトシャワーで煙幕を壊し,スピンソーサーで触手を切断,出入り口が開いた。甲児はFTOで何台かの車とバスを円盤の外に押し出した。デュークはダイザー分離させて飛び出し,空中で車を受け止めて無事に地上に下ろした。

 円盤獣は首からビーム攻撃をし,切断された触手痕からスパイクを出して,回転しながらグレンダイザーに体当たりする。デュークはスペイザーをリモート操作し,上からメルトシャワーで,下からハンドビームで攻撃した。甲児のTFOもミサイル攻撃しながら円盤獣に接近する。甲児はうまくTFOをおとりに使って,円盤獣の口にくわえさせた。デュークはダブルハーケンで円盤獣の首を切断,首は落下しながら爆発した。円盤本体も,メルトシャワーの攻撃を続けて破壊した。ブラッキーは引き上げ,デュークと甲児も撤収する。

 夕方,牧場で,甲児は荒野ハラの熱烈な感謝のキスを受けて困惑している。団兵衛も,自分の武勲をひけらかさない甲児は英雄だと讚える一方で,それにひきかえ大介はどこでさぼっていたのかと小言を言うのだった。

架空座談会

宇門「今回は甲児君が大活躍だったねえ」
甲児「いやぁ,それほどでも……へへ」
宇門「大介の方は,単なるサボリか役立たずだと団さんに思われたようだね」
大介「……はぁ」
宇門「正体をバラすわけにはいかないからねぇ,当分我慢しなさい。」
大介「はい……まあ今回は,円盤獣の中に甲児君が居てくれなかったら,他の人たちだけでは脱出はできなかったでしょうし 」
宇門「とにかく,うまく行って良かったよ」
大介「でもね,父さん。僕が人質救出法をきいたときに『とても危険なんだ』……って部屋を出て行こうとしましたね。ちょっとひどいんじゃないですか。地球人を守って死ねるなら僕は本望なんですよ!」
宇門「誰もお前が危険な目にあうとは言っとらん!危険なのは人質の方だ」
大介「だって,あのままでも人質は全員殺されていたんですよ」
宇門「大介,よく考えてごらん。あのまま人質が殺されたのなら,我々は努力はしたけど救出に間に合わなかっただけなんだよ」
大介「そんな……」
宇門「お前は,地球人のために死ねると言ってくれる。だが,その地球人から人殺しと呼ばれて耐えられるかね?」
大介「……」
宇門「私の作戦を実行して,車を円盤獣から押し出した後,お前が受け止め損なったらどうなる?殺人ではないにせよ,過失致死の責任は問われると思うが。息子を人殺しにするかもしれない指示など,気軽に出せるわけがないだろう?」
大介「でも,僕たちはベガ星連合軍と戦争をしているんですよ!」
宇門「勘違いしてはいかん。我々が地球防衛の要であることは極秘事項だし,日本政府はベガ星連合軍と正式に開戦していないんだよ。一般国民はほとんど何も知らされてはおらんのだ」
甲児「黙っておくしかないですね。マジンガーZの時だって,敵がZを渡せば国民に攻撃をしないって言ったために,光子力研究所が非難されたりしたわけですから」
大介「ベガ星連合軍は,降伏したって奴隷にするか殺すか,反抗したら即皆殺しにするんですよ!」
宇門「ベガ星連合軍がどんな奴らか知らなければ,取引に応じるかもしれんな。それに,真実を知らせてヤケを起こされても困る。地球人の武器ではベガ星連合軍を倒すことは到底不可能だからね」
大介「じゃあ,『とても危険』って……(汗)」
宇門「大人の社会にはいろいろあるんだよ……ふふ」

SF的考証:ベガ星連合軍が侵略を好んだ理由

 グレンダイザーの敵側は,悪の組織の例にもれず,恐星大王ベガによる軍事独裁国家である。まあ,民主的な軍事侵略国家というのも考えにくいのだが……。ベガ星連合軍に滅ぼされてしまった星は,作中に出てきただけで,フリード星をはじめ,ブルーエンジェル星,ザリ星,ウルス星,ルビー星,モール星がある。侵略のモットーは「服従か死か」というもので,服従した場合は有能な者を選んでコマンダーにして他星の侵略に利用し,反抗した場合は殺すか脳だけ取り出してベガ獣制御用の生体部品に利用するというものであった。コマンダーにする際に洗脳することもあった。また,過酷な労働環境で資源確保のために奴隷として働かせるということもしていたようだ。登場しなかったもっとたくさんの星も,同じように侵略され滅ぶか,降伏させられたのだろう。

 組織の中ではベガ大王が最も偉く,次いで直属の親衛隊が力を持っている。軍隊の指揮系統・階級を超えて大幅な権限をベガ大王から与えられているからである。親衛隊よりやや下だが正規軍ではトップとなるのが司令官や科学長官で,その下に攻撃隊長がいる。コマンダーは攻撃隊長に従う立場で,さらにその下が一般兵士である。軍人以外の市民もいるが,身分は低いようで,ベガ星が滅びるときの脱出は軍人優先で行われ,一般市民は見捨てられた。ベガ星で出世するには軍隊に入る以外に方法はないということなのだろう。また,軍隊は国民を守るものだという考えはベガ星にはなく,他所を侵略して領土を拡げてナンボという価値観であった。

 なぜ,こんなにも侵略を好んだのか。それは,ベガ星人は遊牧民のような気質を持っていたからだ。ベガ星のエネルギーはベガトロンというもので,これに頼って技術や経済を発展させてきた。しかしベガトロンは使うと環境を汚染する上に,取り扱いを間違えると爆発しやすい危険物でもある。ベガ本星は汚染で爆発四散したし,資源衛星でも大規模な爆発事故が起きている。また,ブルーエンジェル星という美しい星がベガ星の開発のせいでレッドゴースト星という公害まみれの星になったことからわかるように,ベガ星の方式で開発をすると,遠からずその星は居住に適さなくなってしまうのだ。普通なら,ここで,どうやって公害を減らすかとか,環境にやさしい技術の開発といったことを考えるはずだが,ベガ星人は遊牧民気質だから,汚染した星はさっさと捨てて別の星を使えばいいや,と思っているのだった。さすがに本星だけは別扱いにしたかったようだが……。ともかく,新しい星を使おうとすると,既にそういった星には先住民族がいるので,結果的に侵略戦争をしかけることになってしまう。侵略に際して,事前の詳しい調査や鮮やかな戦略といったのがまるでないのも,侵略が遊牧気分で行われているからだ。つまり,自分のところの家畜が食える草があるかどうかは気にするけど,その場所で暮らしている他の野生動物がどうしていようが基本的にはどうでもいい,邪魔なら追い払えというのと同じことだ。このため,征服してもその後の統治には,さほど熱心ではなかったようだ。遊牧に行けなくなると困るというのと同じ意味で,侵略に失敗すると困るので,軍備増強に利用できるものは何でも使う,改造しても洗脳しても奪っても使う,という方針をとった。