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10.あこがれは星の彼方に

ストーリー紹介

 祖父の治平の荷馬車に乗っていた新一は,バスから降りてきた番太と吾郎に「うそつき新一」とからかわれる。新一は,普段からUFOに乗せてもらうと言っていたが,誰も信じていなかったのだ。新一は,白樺牧場まで番太と吾郎を追ってきて,カエルや蛇やトカゲを番太に投げつけ,「俺はうそつきじゃない,宇宙人と会った」と主張する。ところが,牛が蛇やトカゲに驚いて暴走を始めた。大介は,ジープでやってきた甲児とともに馬で走って牛を落ち着かせる。夕方,治平は,新一に対し,白樺牧場の人たちに謝るように言うが,新一は,本当に宇宙人に会ったと言って謝ろうとしない。大介は,宇宙人の話にひっかかることがあるらしく,考え込んでいる。

 しばらくして新一が白樺牧場に謝りにきて,遊んでいく。新一は,吾郎に白樺牧場を案内してもらうが,落ち着かずあれこれ見たがり,TFOを見つけると異常に興味を示した。新一はTFOを見たら急に帰ってしまう。それを見た大介は新一を馬で追うのだった。新一は崖を登り,見晴らしのいい高台のストーンサークルで,鏡を使って光を上空に送る。それを合図にUFOが着陸してきた。出てきた宇宙人に,新一はTFOを見つけたので円盤に乗せて欲しいというが,宇宙人は,もう1つの方も見つけたら乗せてやると言った。一部始終を見ていた大介は,一体新一を使ってなにをたくらんでいるのかと怪しむ。

 ブラッキーは,TFOの在りかが判明したことで,グレンダイザーも近くにあるだとうと考え,格納庫をつきとめる作戦の続行を決めた。

 新一は望遠鏡で星を見ながら,円盤に乗せてもらったら必ず父さんと母さんに会いに行こうと思うのだった。

 早朝,新一は宇宙科学研究所にやってくる。所内に忍び込むが,センサーに引っ掛かり,警報を鳴らしてしまった。監視カメラに映った新一は,ロープを投げて,ダム上部へと上り始める。甲児は,新一を連れ戻そうと近寄るが,新一は甲児から逃げようとし,逆にダムの絶壁の方に近づいてしまう。宇門所長は無線で大介に連絡し,すぐに来るように言う。新一はロープを投げて,ダムの壁面を降り始めた。甲児も新一を追って降りた。ダム中腹に経った新一を監視していた宇宙人は,新一を狙って光線銃を撃つが,鳥に邪魔されて狙いが外れ,新一は川に転落してしまった。甲児も川に飛び込み,新一と一緒に流されていった。宇門所長は大介に,川下に向かうように指示する。大介は走って追いかけ,滝から落ちる寸前にデュークフリードに変身し,新一と甲児を滝の途中で受け止めて滝の裏側に飛び込んだ。デュークは甲児と新一を滝の裏側の洞窟に寝かせて介抱した。

 研究所に運び込まれ,新一は医師の手当てを受けた。治平は,集まってきた研究所の人たちに,新一が生まれてすぐに両親を無くしたことを話す。気がついた新一は,円盤にのって宇宙へ行けば父さんや母さんに会えると思ったと話す。そこへ,ベガ星兵士がおそってきて,新一を連れ出してしまった。新一は円盤に連れ去られてしまう。デュークはグレンダイザーで出撃,後を追った。

  高々度まで円盤を追ったグレンダイザーは,攻撃してきたミニフォーを破壊する。新一を乗せた円盤は円盤獣グリグリに変形した。スペイザーから分離したダイザーは,グリグリに組み付き,足でスペイザーをつかんで地上へ向かった。ベガ星兵士は,新一を,円盤獣のどこかに隠してしまった。デュークは,テレパシーで円盤獣内部をスキャン,新一が右足首に閉じこめられているのを見つけた。円盤獣を地上に下ろしたダイザーは,ショルダーブーメランで円盤獣の触手を切断するが,残りの触手で縛られてしまう。スペイザーで円盤獣本体の足を払い,スピンソーサーを飛ばさずに回転させて触手を切断した。反重力ストームで円盤獣を飛ばし,落ちてきたところにダブルハーケンを突っ込んで,楯になっている円盤をこじ開けた。円盤獣が右足を伸ばしたときにハーケンを引き抜き,足がちぎれ飛んで壊れた部分から新一の入ったカプセルを受け止め,スペースサンダーで撃破した。

 新一は,グレンダイザーの手のひらからコクピットを見た。操縦者が滝に落ちるのを助けてくれたデュークフリード=大介であることに気付くのだった。新一は,助けてくれた正義の宇宙人デュークフリードは心の友達で,僕を宇宙に連れていってくれると言うのだった,

架空座談会

大介「今回はいろいろ大変でしたよ」
甲児「そりゃあ,俺もだよ。朝っぱらからたたき起こされてよ」
宇門「まあ新一君が助かって良かったよ。二人とも良くやってくれた」
甲児「しっかし大介さん,走るの速いよなあ。森の中で足場が悪いのをものともしない」
大介「川沿いは木が多くて,バギーじゃ走れませんからね」
甲児「ひょっとしてバギー要らないんじゃないの?」
大介「そんなことは……いくら僕でもそんなに速く走れるのは,わずかな時間だけですよ」
宇門「団さんを助けたときといい,フリード星人の身体能力は大したものだねぇ」
大介「ただ……新一君に変身するところを見られてしまったかもしれないんです」
宇門「ふむ……」
大介「まあ,一瞬でしたが。新一君は,デュークフリードのことを『心の中の友達』って言ってました。一応,『君の心の友達によろしくな』と言っておいたんですけど」
宇門「お前が助けた後は新一君は気絶していたし,円盤のカプセルの中でベガ星兵士がデュークフリードと呼ぶのが聞こえたとしても,お前の戦闘服姿はモニター越しにしか見えなかったはずだ」
甲児「デュークフリード=宇宙人,大介さん=地球人,って思うはずですよ,先生」
宇門「なら,やはり変身するところを見られたのかもしれんな。それとも,甲児君のときのように,バイザー越しの目でわかったのか」
大介「新一君はいつも星を見ていましたからね,目はいいはずですよ」
宇門「まあ,気にしなくてもいいんじゃないかね」
大介「今回は扱いが何だかいい加減ですね,父さん」
宇門「心の中の友,と言ってる間は,お前の正体を他所では話さんだろう。それにね,『うそつき新一』の言うことだと,誰も信じないんじゃないかな」
大介「やっぱり,人助けをするたびに正体がばれる」
宇門「正体だけじゃないだろう?大体,この,新一君を探したときの『デューク・テレパシー』ってのは何だね」
大介「何って言われましても……人の居場所を感じる力というか」
宇門「円盤獣の中を見ているようだが,テレパシー(精神感応)というより,むしろこれは透視能力じゃないのかね」
大介「ですから,場所を探すのに円盤獣の範囲にしぼってるだけでして,円盤獣の内部構造を見ているわけじゃないんです」
宇門「機械内部が透視できるなら,円盤獣の弱点もわかるだろうと思ったのだが,あまり使えないね」
大介「じっ人命救助には使える……」
甲児「へーえ,大介さんて超能力者だったのか。こいつァ驚いた。ね,このスプーンを曲げたりコーヒーカップに手を触れずに持ち上げたりできるのかい」
大介「無理だよ,甲児君。テレパシーとはいっても,ちょっとカンがいいといった種類のものなんだ。念動力なんか使えないよ」
甲児「ちぇっ!TV出演は無理か……」
大介「だから人命救助だって……」
宇門「ま,グレートマジンガーのときは,兜博士はわざわざ透視用の光線を,大介にまかせておけば不要というわけだね。開発の手間がはぶけたよハッハッハ」

SF的考証:守護神グレンダイザー

 グレンダイザーはフリード星の守護神として建設された。強力な武器を持っており,兵器としての性能もダントツである。が,それでも作った人たちは兵器ではなくあくまでも守護神のつもりでいたし,強力な兵器はもっぱらデモンストレーションに使うことを想定していたのかもしれない。このため,グレンダイザーで本格的に戦うはめになったデュークはいろいろ不自由していたようだ。

 グレンダイザーの操縦席にはシートベルトがない。このため,グレンダイザーに衝撃が加わると,デュークは横や前に振られてあちこちぶつかって怪我をするということがしばしばであった。一方,グレンダイザー本体は非常に頑丈で,前2作のマジンガーシリーズに比べると,壊れた回数は随分少ない(13話の武器故障,27話の動力回路故障,26話でスペイザーの一部を破損,52話で左腕切断,65話で足の一部が溶けた)。

 兵器としての運用を考えるのであれば,性能・整備の容易さも大事で,熟練したパイロットも重要だ。だから,装甲をやたら頑丈にするのではなくて,衝撃を受けたときにうまく壊れて衝撃を吸収するような,リアクティブアーマーを装甲に採用すべきだろう。戦いから帰ってくれば,装甲を交換して整備すればよいのだ。もちろん,本体も予備パーツも工業製品として大量生産できるようにする。操縦席にはシートベルトを設けて,パイロットの安全を確保する。まさかのときにはペイルアウトできるようにしておく(大量生産品なら,いつでも別の機体に乗り換えられる)。

 しかし,守護神というコンセプトのもとに開発されたグレンダイザーは,見事にこの逆をやっている。最高の技術を結集した結果,ただ1体しか作れないような機体である。1点豪華主義が実って,とにかく滅多に壊れない。まあ,そう簡単に壊れるようなものが守護神を名乗っても説得力がないだろうけど・・・。それと同時に,受けた衝撃を殺すということが難しくなってしまった。さらに,操縦者の安全を第一には考えていないので,シートベルトは基本的にない(21話で大気中でマッハ9を出すときに,ベルト状のものが肩のところについているが,あれで体を固定して衝撃に備えるのは無理だろう)。

 シートベルトが無いのはどうしてか。これは,日本の祭りを思い出してもらえればわかる。岸和田のだんじり祭りとか,神輿の上に人が乗って街を練り歩くような祭りだ。山車の上にいる人は,ハッピを着たり扇子を持ったりして,バランスをとりつつ華麗な動きをしているが,みんな,命綱なんかつけていない。宗教的な祭りや儀式で,上の方で何かしなければいけない人たちは,普通は命綱をつけたりしないのだ。グレンダイザーは守護神だから,祭りや儀式で使うことを想定していたはずだ。さらに,王家の人間が操縦することに儀式的意味があったのだろう。グレンダイザーの操縦席にシートベルトが無いのは,山車の上の人が命綱をつけないのと同じことである。

 まあ,こういうグレンダイザーを,技術レベルがかけ離れている地球で,兵器として動かすことになったわけだから,デュークが何度も苦戦したのは当然だろう。極端に頑丈で武器が超強力というだけで,兵器として最適化されていないものを使っていたのだから。