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マジンガーZにおける反重力技術とは

緒言

 アンドロメダ星雲からやってきた円盤が飛び交うグレンダイザーの世界では、反重力と超光速が実現していることは疑いがない。当初、私は、マジンガーZ&グレートマジンガーの世界と、グレンダイザーの世界をSFとして区別するものは、推進原理の違いであろうと考えていた。
 ところが、 マジンガーZ研究機構の管理人の英氏と議論するうちに、マジンガーZ&グレートマジンガーの世界でも、反重力が実現していたのではないかということになった。この問題は、グレンダイザーにおけるTFOの推進原理の成り立ちにも関わってくるので、一度きちんと考えておく必要がある。そこで、現時点での考察をまとめてみることにした。
 なお、この稿は暫定版である。筆者はまだ、マジンガーZとグレートマジンガーのDVDの詳細な検討は半ばであるし、新しい事実が判明したら(というか気づいたら)考えなおす必要がある。

問題点

 発端は、グレートマジンガーの企画書(DVD−BOXに付属)の番組紹介の部分に、「普段は体の中に内蔵されている飛行翼で、電流を通じることにより反重力物質となり、足のロケットを推進機として自在に空を飛行する」という記述に気づいたことである。そこで、他にも反重力技術について出てこないか調べてみたら、次のようなものが該当することがわかった。番組紹介も含めて列挙しておく。

【マジンガーZ】

  1. ブロッケンの首が反重力装置で浮いている。
  2. 51話の機械獣ダガンG3も反重力光線を発射する(設定画では「反重力光線」。文芸資料等では「反動光線」とされた。作中では、あしゅらが「さすがのマジンガーZも反動光線にあっては形無しだ」と発言している。)
  3. 46話で、光子力研究所内の「無重力実験室」が出てくる。

【グレートマジンガー】

  1. スクランブルダッシュの翼が反重力を利用している(番組紹介にのみ登場。本編では一切言及されず。設定画にも記述なし)。
  2. 要塞デモニカは反重力推進である。
  3. 万能要塞ミケロスが反重力っぽい飛び方をしている。

 要塞にしてもロボットにしても、反重力技術があれば、飛ばすことは格段に楽になる。ところが、本編を見る限り、味方側は積極的に反重力を利用している形跡がないし、敵側の利用も限られている。

 ブロッケンの首は、確かに見た目も反重力推進をしていそうな飛び方をしているし、設定に反重力とある。ところが、飛行要塞グールを始め、他の機械獣はすべて、ロケット噴射あるいはジェット噴射と思われる方法で浮いたり飛んだりしている。Z51話の武器も微妙で、あしゅら自身が「反動光線」と言っているので、設定画の名称にこだわらず、内容を検討する必要がある。光子力研究所に反重力らしい描写が登場するのは、46話の無重力実験室のみで、他に無重力や反重力技術を使っている描写はない。

 グレートマジンガーについては、科学要塞研究所が反重力技術を使った描写が全く見あたらない以上、番組紹介の内容が有効であると考えることには大いに疑問が残る。ミケーネには、大質量のものを反重力推進させる技術があったのかもしれない。しかし、どういう系統の技術であるかについては、すぐには結論を出すことができない。

 考えるべき問題は以下の3つである;

  1. 光子力研究所、及び、科学要塞研究所は反重力技術を実現していたのか?していたとすると、それはどういう内容のものか?
  2. ドクターヘルが実現した反重力技術とその内容。
  3. ミケーネが持っていた反重力技術とその内容。

 本稿では、1.のうち、マジンガーZ正義側について、可能な説明を試みる。

反重力に頼らない説明方法

 やはり、なんと言っても、無重力実験室以外に物を空中に浮かせるシーンが無いということである。反重力推進装置や、重力遮断物質を光子力研究所が手にしていたならば、もっといろんなところで使うのが自然であるが、実際はそうなっていない。このことから考えて、やはり、光子力研究所は、重力の制御技術を手中に収めていなかったと考えた方が自然である。そうなると、どうやって無重力実験室を実現するかということが問題となる。

 地上で、重力に逆らって無重力を実現するには、上向きの力を加えて、重力と釣り合わせればよい。非接触でこれをやるには、電場か磁場を使う、というのをすぐに思いつく。電場を使った場合、持ち上げるものを帯電させて電荷を持たせる必要があるし、あまり高電圧をかけると放電が起きて感電しかねないという危険があるので、大きなものを持ち上げるのには適さない。磁場であれば、リニアモーターカーの例もあるように、条件さえ整えば、重量があって大きなものでも持ち上げることができる。そこで、超合金Zの磁気的性質を考えるために、磁場攻撃を受けてどういう状態になったかをチェックした。

 第4話では、敵側武器に「マグネチックパワー」が登場する。機械獣の角の間の放電ぽいものが発生装置である。
あしゅら「お前の力で研究所の機能を狂わせてしまうのだ」
という描写がある。対する光子力研究所側は、
弓「マジンガーZも安全だとは言えないぞ」
弓「さあ早く、このアンチマグネチックガンをマジンガーZの頭上へ撃つんだ」
シローが撃つと液体みたいなシャワーをZが浴びて、光線の影響が無くなってしまう。
 このことから、
・「マグネチックパワー」は電磁妨害の一種と思われる
・マジンガーZの装甲に磁気や電磁波を遮蔽する機能はない(だから外からの影響で計器が狂う)
・Zが浴びたのは電磁波遮断塗料の一種である
と考えると、この回の攻撃防御の説明がつくだろう。

 第45話では、磁力板がマジンガーZに吸着して、計器が狂ってしまって動けないという描写がある。
  もし、超合金Zが鉄やニッケルと同様に強磁性体であれば、磁力線は外部装甲部分を通るはずである。透磁率の大きな磁性体があれば、磁気回路が形成されるからである。すると、内部の制御装置には磁場の影響が及ばなくなるはずである。逆に言うと、内部の装置に磁場が影響するということは、マジンガーZの装甲の超合金Zは磁気回路にならないということである。磁力板が吸着する理由は、装甲の内側の磁性体の部分と引き合っていると解釈すれば説明がつくだろう。同時に、内部の制御コンピュータなどにも磁場が及んで、計器が狂ってしまったと考えられる。マジンガーZといえども、100%超合金Zではなく、内部部品のいくつかに他の金属が使われているとしてもおかしくはない。ここでもやはり、
・マジンガーZの装甲に磁気や電磁波を遮蔽する機能はない
といえる。

 第65話では、磁気嵐が敵側武器として登場する。マジンガーZは、力で止められているふうにも見える。このときのやりとりは次の通りである:
甲児「弓博士、動けません。計器も狂ってしまい、Zを動かすことができません」
弓「何だって、甲児君。君の現在位置は?」
所員「所長、Zは例の三角地帯です」
みさと「三角地帯?」
弓「激しい磁気嵐で有名な魔の地帯だ。そのため、飛行機、船舶の事故がこれまでに絶えない」
 磁力で引っ張られて身動きができないというよりは、計器が狂って制御ができなくなっていることを意味している。実際、磁力線が切れたときには噴射も止まってしまっていて、海に落下している。この後のシーンでは、
弓「おそらくまだZは強力な磁力でひきつけられている。脱出できそうか」
と言っている。 結局、エネルギー全開噴射でマジンガーZは脱出を試みるが、計器は狂ったままである。
 ただ、このシーンを見ると、地面にめりこんでいるのを引き抜く、という感じはあっても、抜けた後は普通に飛んでいる。どうも、飛んでいる間中何らかの力がかかっているわけではなさそうである。
 ここでもやはり、マジンガーZの装甲には、磁気や電磁波を遮蔽する機能はないことがわかる。

 第73話でも、磁気嵐が敵側武器として登場する:
ゴーゴン「ケントールγ7の磁気嵐はすべての計器を狂わす。マジンガーZなどひとたまりもあるまい」
 この後の戦闘シーンで、ドリルミサイルが、磁気嵐発生源に近付いてはじき飛ばされる描写がある。ドリルミサイルは強度が必要だから、当然、超合金Z製であろう。また、磁気嵐放射部分に近付くほど磁場が強いと考えられる。超合金Zが反磁性磁化率を持っていれば、磁場の強い方から弱い方に向かって力を受けるので、このシーンの説明がつく。ルストハリケーンも跳ね返されているが、霧の材料が反磁性なら同様である。もっとも、磁気嵐の流れのようなものが出ているので、力学的に飛ばされている可能性もある。

 ここまでの描写と、「磁場を遮蔽するには強磁性体を持ってこないといけない」ということを合わせて考えると、超合金Zは、少なくとも鉄やニッケルのような磁性体ではないと考えられる。

 厳密に言うと、磁気モーメントの秩序を伴う場合が強磁性(鉄など)、反強磁性、フェリ磁性などいくつかあって、秩序を伴わない場合が常磁性、反磁性となる。なお、超伝導体のような、完全反磁性の場合は、そもそも中に磁場が入らないので、完璧な磁気遮蔽が実現することになってしまう。

 そこで、超合金Zが適当な大きさの反磁性磁化率を持つと仮定すると、これらの戦闘時の描写を説明することができる。

 同時に、無重力施設の原理も説明することができる。甲児君は施設内で戦闘服のまま浮かんでいるが、英氏の掲示板での議論では、戦闘服には超合金Zが含まれている(織り込まれている)という指摘があった。従って、無重力室内部に適当な勾配磁場を発生させると、超合金Zが反磁性体だった場合、上向きの力を発生させて重力を打ち消すことが可能となり、甲児は、実験室内で宙に浮くことになる。なお、人間の体の大部分を占める水も、弱い反磁性磁化率を持っている。

 実際、水やタンパク質の反磁性を利用して、強磁場環境で、擬似的な無重力空間を実現して結晶成長させるという実験が、現実に行われている。材料試験衛星を打ち上げて無重力下で実験するよりは安上がりだからである。

結論

 光子力研究所では、反重力や重力遮断に類するような、重力制御技術は実現していない。そのかわり、超合金Zの反磁性を利用しての、無重力実験が行われている。

余談

 マジンガーZ41話は、甲児の飛行訓練で始まる。無重力実験室は、甲児のトレーニング設備として登場する。ところが、その理由については、次のような発言がある:

弓「マジンガーZが高い空まで上昇すると気圧の変化で激しい苦痛が起こる。それに耐えるためのトレーニングなんだよ」

 ちょっとちょっと弓博士、そういうトレーニングをしたいのなら、必要なのは無重力室ではなくて減圧室でしょうが^^;)。光子力の平和利用やロボット工学には強いはずの弓教授も、飛行力学や飛行の生理学には弱いようです。もっとも、平衡感覚を鍛えるという訓練にはなりそうですが……。

 なお、負の質量を持った粒子や、重力遮断物質の存在を仮定しても、因果律が破られることはない。しかし、超光速を実現しようとすると、因果律を破ることになるし、虚数質量の粒子を考えることになる。この点で、反重力や重力遮断だけで済む世界と、超光速まで実現しなければいけない世界は、SF的な仕掛けという点でも、だいぶ異なっていると考えてよいだろう。

謝辞

 有益なヒントや情報をくださった、マジンガーZ研究機構の英氏に感謝します。本当に、困った時の英氏頼み、という状態でした。