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宇宙科学研究所の位置推定

はじめに

 宇宙科学研究所の位置について、ムック本などの多くで「栃木県那須高原」となっている。一方、本編では一貫して八ヶ岳と言われている。このことについて、手持ちの資料をもとに考えてみる。これを書くだいぶ前に、英氏にいろいろ議論していただき、ほぼ同じ結論となった。また、私はまだ文芸資料を網羅しているわけではない。いずれ、英氏がもっと多くの文芸資料を元に本格的な論文を書かれるのではないかと思う。
 なお、新しい資料やシナリオを入手したら、情報を追加する予定である。

資料の記述など

 一級資料、二級資料の分類はしていない。まずは手持ちのムック本などがどうなっているかをまとめてみる。

  • 「UFOロボグレンダイザー大百科」(エルム)
    「宇宙開発研究所は栃木県・那須高原の奥、ひともこない さびしいところにある」(46ページ)
  • 「グレンダイザーポケット百科」(エルム)
    研究所の機能の説明はあるが、位置については記載なし。
  • 「スーパーロボット三大全科」(双葉社)
    研究所の機能の説明はあるが、位置については記載なし。
  • 「テレビランド・ワンパックUFOロボグレンダイザー図鑑」(徳間書店)
    研究所の機能の説明はあるが、位置については記載なし。なお、収録されている「新作えものがたり ベガ星友のバラ」は、舞台が八ヶ岳であると書かれている。
  • 「テレビマガジンロボット大全集 マジンガーシリーズ大事典」(講談社)
    研究所の機能の説明はあるが、位置については記載なし。
  • 「ロマンアルバム UFOロボグレンダイザー」
    研究所の機能の説明はあるが、位置については記載なし。
  • 「スーパーロボット大図鑑 〜鉄の城編〜」(バンダイ)
    「所在地は栃木県那須高原のシラカバ牧場の外れの用水地のそば」
  • 「テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集」(講談社)
    富士山付近の湖と川をつなぐダムの上に位置しており、裏手にはシラカバ牧場の牧草地が広がっている。」
  • 「魔神全書」(双葉社)
    富士山付近の湖と川をつなぐダムの上にあり、宇門源蔵博士が設立した。」

グレンダイザーDVD-BOX1付属のライナーノーツより孫引き。

  • 栃木県那須高原にある」
    テレビマガジンS50.12
  • 八ヶ岳にある」
    設計図・録音台本#4
    シナリオ#18,25,35,37

宇宙科学研究所は、秘密ルートを持っている。その配置も位置特定の情報となるので列挙する。

  • 秘密発着場に関する記述:テレビマガジンS51.3、DVD-BOX1ライナーノーツより孫引き
    1.火山の噴火口 2.山中の湖(研究所から数十キロ離れている) 3.森林の中(那須高原森林) 4.霧深い岩山
  • シナリオ#22、、DVD-BOX1ライナーノーツより孫引き
    ルート3は諏訪湖に通じている
  • 設定画に記載された秘密ルート、DVD-BOX1ライナーノーツより孫引き
    1.火山口 2.原生林 3.廃坑 4.地獄谷 5.湖 6.山腹洞穴 7.滝壺 8.工場跡

手持ちの設定画をチェックした。

  • ひかる、吾郎が通っている学校が「八ヶ岳学園」
  • 牧葉家全景の設定画で、すぐ後ろに八ヶ岳の稜線の一部が描かれている。
  • 研究所周辺の設定画。研究所のダム放水口は西向きで、南が富士山、東が八ヶ岳の記載あり(西側に富士山と書かれた文字は二重線で消されている)。

手持ちのシナリオより。各ルートがどう書かれているかも含めて抜き書きしてみた。

No. シーン番号、記述
18 [57]ルート7
   グレンダイザー、滑走。
[58]湖の小島(八ヶ岳麓
   小島の一面がスライド、グレンダイザーが飛び出す。
19 [14]同 観測室
宇門部長「ルート1 どうだ」
林「ルート1(スクリーンに映し出す) ルート1、異常ありません」
宇門部長「グレンダイザー・ルート1、発進オーケー」
[16]同 発射口
   グレンダイザーが発進していく。
22 [39]グレンダイザー内
デュークフリード「秘密ルート・スリー!」
   グレンダイザーを乗せた回転盤が回わって------諏訪湖口に向かって止まる。
[40]諏訪湖
   吹雪いている。
   突然、湖底から飛び出して行くグレンダイザー
23 [7]宇宙科学研究所・観測室
(略)
宇門所長「西の森近くの貯水池にはルート3が通じている。発見されたらまずい」
(略)
宇門所長「この一帯はおそらく見張られている。一番遠いルート5をチェックしろ」
25 [1]八つ岳上空
   抜けるような青空に、突然怪しい光りが二つ現れたかと見る間に、赤い火の玉となってグングン接近してくる。
[43]グレンダイザー操縦席
   デュークフリード、乗り込む。
デュークフリード「ルート5!ゲートオープン!」
[45]湖の上空
   飛び立っていくグレンダイザー。
26 [34]ルート5
   グレンダイザー、ぐんぐん加速。
[35]湖面
   グレンダイザーがとび出す。
29 [5]教室
   わいわい、がやがやしている吾郎たち。
   と、女の先生が入って来る。
女の先生「みなさーん、静かにして下さーい!」
   吾郎、慌てて席につく。
   女の先生の後から、さっきの男の子が入って来る。
吾郎「あッ……」
   男の子も吾郎に気付いてジッと見つめる。
女の先生「みなさん、今日から、新しいお友だちがふえました。出浦春雄君です」
吾郎「出浦春雄……」
   なんとなく気味わるそうに見守る。
女の先生「春雄君のお家は、山で木を切る仕事をしていて、今度、八ツ岳に越してきたそうです。まだ、この土地になれてないので、みんな仲よくして下さいね」
「ハーイ」
   と言うみんなの声まお、なんとなく気味悪そうに尻切れになる。
女の先生「八つ岳だと、牧葉君の家の近くだから、席も一緒の方がいいわね」

------中略------
[25]宇宙科学研究所・観測室
宇門「円盤獣が接近している」
林「所長!八つ岳の頂上附近から、怪電波が発信されています!」
宇門「なに、八つ岳から……」
[26]シラカバ牧場
大介「(通信機に)お父さん、もしかすると八つ岳に敵が潜入しているかもしれません。充分、警戒して下さい」
   その声を聞きつけ、ひかるが駆け寄る。
ひかる「大介さん、吾郎が八つ岳の友だちに家へ行ったんだけど、大丈夫かしら?」
大介「え?!」
ひかる「ほら、新しく転校して来たとかいう子の家に」
   大介、ハッと何かを思い出す。
31 [22]同・格納庫
   飛び込んでくるデューク・フリード。
   グレンダイザーへ乗り込む。
博士の声「大介、敵は近い。感ずかれないように、シークレット・ルート3から発進だ!」
デューク・フリード「了解。------グレンダイザー・ゴー!」
[23]同・地下道
   疾走するグレンダイザー。
[24]同・森
   グレンダイザーが飛び出し、森の中を這うようにして飛ぶ。
32 [18]ルート五号
   グレンダイザーが進行していく。
[19]湖面
   グレンダイザー、湖中から飛び立っていく。
   太い雨脚をはじきながら、厚い雨雲の中へ突入していくグレンダイザー。
[46]宇宙科学研究所の表
   八ツ岳の上空が夕陽に赤く染まっている。
35 [8]スカルムーン基地・司令室
   モニターテレビ前の椅子から躍りあがるガンダル司令官。
ガンダル「よし、うまくやったぞ!……グレンダイザーめ、円盤は空からやって来るものとばかり思っているだろう。ところが、どっこい、今度は地下から攻めてやるのだ!いいか、目的地へ着くまでは、絶体に地上へは姿を現わすなよ!」
ビートル「承知しました」
ガンダル「ではもう一度、目的地点の確認しておこう」
   ガンダル、スイッチを入れる。
   モニターテレビに、八つ岳付近の航空写真が映し出される。
ガンダル「これは、今まで、グレンダイザーが発進したと思われる辺りをレーダーコンピューターにチェックさせた航空写真だ」
   その所々に赤い光点がチカチカ点滅している。
[13]宇宙科学研究所・観測室
------略------
林「あッ、八ヶ岳学園の方に向きを変えました!」
ひかる「えっ?!いま吾郎たちが野球してる筈だわ!」
------略------
[19]同・観測室
   各ルートとも見張られている。
林「全部見張られてます!」
宇門「よし、ルート4の上空に妨害電波を張れ!」
林「はい!」
   急いで妨害電波のスイッチを入れる。
宇門「大介、ルート4だ。但し、見張られているから、飛び出しても、すぐ上空へは向うな!」
デュークフリード「了解」
[22]地獄谷
   グレンダイザー、飛び出すが、そのまま谷底を這うように飛行して行く。
36 [25]同・秘密発着場
宇門の声「ルート3・ゲートオープン」
[26]岩山
   岩の裂目から飛びだすグレンダイザー・暫く山間を低空飛行で進んでから空に急上昇していく。
37 [7]宇宙科学研究所・観測室
林「所長!関東甲信越一帯のレーダーは、完全にマヒ状態です!」
[33]八ヶ岳上空
   ガンガンの後を追うグレンダイザー。
デュークフリード「これ以上行くと、牧場が危ないぞ!」
------略------
[34]山麓の道
   学校から帰って来るひかると吾郎、空を見上げてぶったまげる。
------略------
[48]ダブルスペイザーの操縦席
------略------
吾郎「うわア! や、山だ!!」
   フロントグラス越しに、八ツ岳の山頂が迫って来るのが見える。
------略------
[51]空
ダブルスペイザー、八ツ岳山頂に激突する寸前で、急上昇する。
------略------
[62]八つ岳山麓・上空
[66]八つ岳・山麓
[68]八つ岳・山麓
40 [10]同・発着場
   降下してくるグレンダイザー。
宇門の声「ルート3,ゲイトオープン!」
   グレンダイザー、方向転換。
   ランプがついてゲイトが開く。
デュークフリード「グレンダイザー・ゴー!」
   グレンダイザー、発進。
[12]岩山
   その絶壁の裂目から飛び出すグレンダイザー。
48 [4]宇宙科学基地・観測室
   大井の前のテレタイプがせわしなく通信を打電して来る。
大井「所長、気象本部からの連絡です」
宇門「なんだ?!」
大井「甲信地区で、異常地殻変動が起きているが、宇宙異変はないかどうか、問い合わせてきています!」
------略------
55 [9]テレビのアナウンサー
アナウンサー「太平洋上に現われた所属不明の怪気球は、日本列島をゆっくりと横断し、新潟上空に接近しています」
[10]信濃川上空
   怪気球がゆっくりと流れて来る。
   空軍のヘリコプターが二機、両サイドについて見張りをしている。
   怪気球、急に降下しはじめる。
空軍パイロット「あ、気球が降下しはじめました!」
   不意に、気球の下に吊されていたゴンドラがはずれて、信濃川に落下していく。
空軍パイロット「あッ!越後地区本部!越後地区本部!」
   通信マイクに呼びかけた途端、怪気球が凄まじい炎と共に爆発する。
空軍パイロット「うわッ!」
   誘爆して火だるまになる二機のヘリコプター。
[29]宇宙科学基地・観測室
   ゲート2のパネルにOKのランプが点く。
林「ゲート2,発進よし!」
宇門「デュークフリード、ゲート2だ!」
[32]原生林
   飛び立って行くグレンダイザー。
[34]信濃川
   一条の航跡のようなものがグングン川上へと昇っていく。
[35]佐久盆地・河畔
   のんびりと釣糸をたれている団兵衛と吾郎。
吾郎「この川をずっと下っていくと何処へ行くの?」
団兵衛「かの有名なる川中島の古戦場を過ぎ、長野を過ぎ、越後に至りて信濃川となり、さらに日本海にそそぐのじゃよ……何とも雄大なものじゃ」
------略------
[38]宇宙科学基地・観測室
------略------
宇門「千曲川の川下は信濃川に通じている……」
大井「信濃川?!」
宇門「怪気球が炎上して消えたのは信濃川の河口付近だ……これは何か関係あるかもしれんぞ」
------略------
[40]佐久盆地
------略------
デュークフリード「いかん!川上に宇宙科学基地のダムがあるぞ!」
------略------
59 [10]同・休憩室
   おいしそうに朝のコーヒーを飲んでいる、大介、甲児、ひかる、マリア。
   コールのブザーが鳴って、モニターテレビに宇門が映る。
宇門「大介、これからわしは国防軍の富士空軍基地へ行かねばならん」
大介「空軍基地へ?」
宇門「新しく防空管制塔が出来たので、その設備の査察を頼まれているのだ」
甲児「国防軍もおれたちにまかしておけばいいのに、ご苦労なこった!」
宇門「マリアちゃん、ドリルスペイザーで送ってくれないか」
------略------
62 [52]ルート・セブン出口
   滝の落水を割って、飛び発っていくグレンダイザー。
65 [36]奥秩父・山中
   ある山中に落下して来るミサイル弾
------略------
[46]奥多摩・吊橋
   サドンを先頭にハイカー姿の数人が渡っていく。
   歌を歌って、人目には楽しそうな若者たちのグループである。
69 [18]ルートエイト・出口(工場跡)
   グレンダイザーが飛び発って行く。

TV本編では、研究所周辺の地名として、「八ヶ岳」「信濃川」といったものは登場するが、「那須高原」及びその近辺を思わせる地名は一度も登場しない。富士山近辺についても同様で、全く触れられていない。

なお、最も最新のヴァリエーションとしては、東映のサイトで、ストーリーの説明のトップに「かつてのマジンガーZの搭乗者、兜甲児は、不時着した北海道で、宇門大介という青年と出会う。」というものがある。

考察

地名の扱いについて

 グレンダイザー本編中に登場する地名は、ピンポイントで事件が起きた場所指す場合は、架空の名前が使われている。例えば、「美雪岳」(12話)、「霧吹き岳」(20話)といった具合である。多くのSF作品で真っ先に攻撃目標にされた東京についてはこの限りではない(というか東京侵略はむしろお約束)。
 しかし、設定画やシナリオには地名が登場することから、研究所の大体の場所のイメージは製作スタッフの間で共有されていたと考えてよい。つまり、制作側に、場所についても一応の設定をする意図があっただろうということである。

宇宙科学研究所所在地候補

 文芸資料と本編から、所在地候補を抜き出してみると次の4つとなる。

  1. 栃木県那須高原
  2. 富士山付近の湖と川をつなぐダムの上
  3. 八ヶ岳
  4. 北海道

 1.の「那須高原説」は、放映当時のテレビマガジン(講談社)とエルムの大百科が出典である。テレビマガジンでの記述がS50(1975).12月号ということは、雑誌の発売は一ヶ月前だから、1975年11月つまり14-17話を放映していた時期ということになる。エルムの大百科は発行日が記載されていないが、本に登場する円盤獣は14話までに出てきているものなので、テレビマガジンとほぼ同時期と考えられる。バンダイのスーパーロボット大図鑑は、発行が平成4年なので、テレビマガジンかエルムの孫引きと考えられる。

 2.の「富士山付近の湖と川をつなぐダムの上説」は、初出が昭和63年発行のマジンガーZ大全集である。その次の登場が魔神全書(双葉社、2002年)である。この後、ゲームのスーパーロボット大戦の攻略本やファンブックに繰り返し登場する。おそらく、大全集からの孫引きだろう。

 3.の「八ヶ岳説」は、設定画・シナリオ・TV本編に共通している(シナリオライターによっては八つ岳と表記)。また、設定画・シナリオ・TV本編で、八ヶ岳以外の位置を示唆する描写はどこにもない。
 シナリオで確認すると、グレンダイザーの発進口は八ヶ岳の周辺部分にいくつかあること、八ヶ岳は吾郎の家つまり宇門邸や研究所の場所とも近いこと、吾郎やひかるが通学できる距離であることがわかる。研究所のある場所は甲信地区とされているので、それだけでも富士山周辺や那須高原ではあり得ない。また、甲児がオートバイで偵察に出た先が奥秩父・多摩エリアだが、八ヶ岳エリアからであればバイクでそこそこ容易に到達できる。また、富士山空軍基地は富士山麓のどこかにあると思われるが、研究所から出向いて行くにはドリルスペイザーで飛んでいく程度の距離であると思われる。

 4.の「北海道説」は、後にも先にも東映HPだけである。

 資料としての優先順位は、まずTV本編で、次いでシナリオ・設定画、さらに制作側が発行する資料ということになる。この順位で考えた場合、研究所の場所は八ヶ岳エリアのどこかと推定するのが妥当である。

八ヶ岳のどのあたりなのか?

 地図を見ればわかるように、八ヶ岳とは赤岳から蓼科山に至る尾根を中心とする山岳地域である。シナリオでも「八ヶ岳の頂上」という言い方をしているが、頂上と呼べる地形は複数存在する。まあ、山に関心がなければ、普段見ている山を指して八ヶ岳と呼ぶこともあるかもしれない。

 場所を特定する最も詳しい情報が出てくるのは、55話の本編およびシナリオである。55話のTV本編では、怪気球が落下したのが信濃川下流であること、上流の支流の一つの側に研究所があることが出てくる。シナリオではさらに詳しく、千曲川と信濃川の位置関係、団兵衛と吾郎が釣りをしていたのが佐久盆地であることまで書かれている。また、川中島、長野、越後、と具体的な地名が出てくるので、ここで出てくる信濃川は、リアル信濃川と一致すると考えて良いだろう。

 八ヶ岳は分水嶺となっており、稜線の北東側から流れ出る川はすべて千曲川に集まる。従って、本編55話およびそのシナリオから、研究所の位置は八ヶ岳の東側あるいは北側斜面に絞り込める。

 ところで、研究所のダムは西を向いている。例えば49話などで、観測ドーム前のダムの上に立って西日を見るシーンでは、山の稜線に日が沈んでいるが、沈む角度はさほど高くない。もし、研究所が八ヶ岳の稜線の東側のどこかにあったとすると、西日はもっと早い時間、まだ高い場所にある間に稜線に隠れることになってしまう。研究所が八ヶ岳の北側斜面のどこかにあり、いくつかある尾根のどれかに日が沈む場合であれば、研究所の標高よりもやや高い位置に夕日が沈むことになり、TV本編の描写と矛盾しない。つまり、研究所の位置は、北八ヶ岳、蓼科山の北側の斜面のどこかということになる。やや霧ヶ峰寄りかもしれない。いずれにしても長野県の南の方で、近くの街は、茅野、諏訪、佐久、小諸あたりということになる。

 最後に標高について考える。
 蓼科山の標高は2530mである。
  23話では、研究所の近くの三段ダムが破壊されると、研究所も牧場も大洪水に見舞われるという描写があった。ということは、研究所よりさらに上にそれなりの水を溜められるだけのダムがあるということになる。基本的にダムより上の斜面に降った水しか集めることはできず、水路を造ったり、湧水も同時に利用しているとしても、あまり頂上に近いとダムが機能しなくなる。
 また、グレンダイザーが地球に不時着してから、宇門は2年に渡ってその存在を隠している。やってきた当時は隕石と思われていたとしても、あまり人里近くに着陸したら、野次馬が様子を見に来たりして、秘密を守ることが難しくなるだろう。蓼科山の一部は観光地で、ペンションなどが建っているから、そういった場所からも離れていないとまずい。すぐ側の霧ヶ峰の近くには湖もあるので、それより低い位置であれば、水に不自由することはなさそうである。
 これらのことを考慮すると、研究所の標高は、約1700m付近と考えるのが良さそうである。

 以上をまとめて、宇宙科学研究所は、蓼科山北側斜面のどこかで、標高が1700m付近にあり、どの民家や集落からもそこそこ離れている地点にあると推定される。

コメント

 どうしてテレビマガジンとエルムの大百科で那須高原説が出てきたのか、理由はよくわからない。那須高原だと、栃木県でも福島県の県境に近いから、TV本編に繰り返し登場した八ヶ岳とは間違えようが無いほど離れているし、付近を流れる川は最終的には太平洋に流れる。
 研究所周辺の設定画には、研究所の西の方に富士山と書いて消したあとがある。那須高原だとすると、相当離れてはいるが、研究所より西(正確には南西方向)に富士山が存在することになる。もしかしたら、設定の初期の頃に那須高原という話が出ていて、それが訂正されずに雑紙や書籍の編集担当者に伝わったのかもしれない。

 富士山付近という話は、大全集の制作者の単なる誤解であろう。放映から時間が経って記憶が薄れ、かつLD-BOXやDVD-BOXで本編の内容が確認できない時期に出版されたので、調査が不十分だったのだと考えられる。テレビマガジン系であるにも関わらず、那須高原説とも違うものが出てきているあたり、富士山が近い描写がなされた光子力研究所や科学要塞研究所の近くだろうと思いこんだのではないだろうか(ちなみに両研究所の位置推定は英氏によって行われており、光子力研究所は富士山北側の鳴沢付近、科学要塞研究所は伊豆半島の雲見付近で駿河湾に面しているが、これも、光子力研究所は富士山の南側で科学要塞研究所は相模湾に面しているという誤解が広まっている)。ただ、スーパーロボット大戦シリーズの本などで繰り返し紹介されたので、LD-BOXやDVD-BOXが出て本編で確認できるようになった今も、誤解している人はそれなりの数居ると思われる。

 本編、設定画、シナリオは一貫して八ヶ岳にあることを前提にして作られている。研究所の位置としては、八ヶ岳のどこかにあるという設定が共有されていたと考えてよい。

 ただ、あの場所に研究所があるとすると、リアルでは近くに臼田の追跡局(探査機の運用担当)があったりするわけで、ベガ星連合軍相手に妨害電波撃ちまくりの電子戦なんかやった日には臼田が仕事にならなくて頭を抱えるに違いない。まあ、侵略受けてる最中にそんなことは言ってられないかもしれないが。
 また、研究所近くからロケットを打ち上げたりしているが、街の上を飛んでいくことになるわけで、事故があったときの騒動が思いやられる(笑)。でもまあそれを言うなら、51話で、民間研究所のくせに「核爆破誘導ミサイル」という剣呑極まりない兵器の発射命令まで出してるわけで……(どう考えても核ミサイルの一種だよな、連鎖反応のトリガーとなるには大量の中性子でも出さないとダメなわけで)。
 野辺山は近いので、タメを張って設定の「世界最大の電波望遠鏡」とやらをぶっ立てるにも場所としてはそう悪くないだろう。積雪期間という点では野辺山よりちょっと不利な気もする。

 研究所の場所にこだわることになったのは、ファンフィク(二次創作)を書こうと思ったからである。で、手持ちの本やDVDを見ていて、一体どこだろうと考えるはめになった。宇宙科学研究所から光子力研究所に行く、なんてシーンを書いたりするには、場所がわからないと書けない。それで、色々調べたことをまとめてみた。

 ところで、グレンダイザーはフランスでも大人気だったし、イタリア語、英語、アラビア語版もある。登場人物の名前も国に合わせて書き換えられたし、研究所が「日本の八ヶ岳」というわけにもいかないだろうから、各国で場所が適宜設定されたに違いない。一体どこであるとされたのだろうか。その情報がわかったら、あちら世界の「宇宙観測網」と称して、それぞれの国で研究所であるとされた場所に施設があるという設定でフィクションを書いてみたいものだ(ネタがわかる人が居ないんじゃないかというツッコミは却下ね^^;)。

 なお、東映HPの「北海道」は論外である。こんなことを書いているのは東映だけである。1話の最初は、甲児が富士山(光子力研究所が近い)を見ながら飛んでマジンガーZ時代を思い出す回想シーンで、そのあとUFOと遭遇し、宇宙科学研究所に誘導されている。どう見ても研究所の位置は本州である。本編で、北海道に出向いたことが明示的に示されたのは、68話の「吹雪の中のマリア」と、70話の「涙は胸の奥深く」がある。牧場があるという設定だから、北海道だと思いこんだのだろうか。自社製品なんだから、きちんとビデオチェックをしてから書いてほしいものである。

 東映の「北海道」説については、バビル二世と混同したのではないかという指摘をいただいた。さすがに、バビル二世のDVDのチェックまではできないので、ムック本を買ってきたところ、主人公が一時期北海道の酪農家に身を寄せていたことが確認できた。