弓教授の成り上がり人生!?
はじめに
英氏と雑兵氏と裕川の間で交わされた会話。酒の席でのことなので、記憶を頼りに再現してみたが、台詞入れ替わってたり抜けてたりしても許してください。てか、指摘と修正案はいつでも受付中です。文責はすべて裕川にあります。
月例会にて
英「弓教授って兜十蔵博士の一番弟子だよね。でも十蔵博士は研究所のサポート無しでは絶対に運用できないマジンガーZを作っておいて、作ったこともドクターヘルのことも弓さんには何も知らせず、ミケーネの侵攻のことだって兜剣造には知らせてたけど弓さんには何も言ってない。随分酷いというか無茶というか……最初から光子力研頼る気だったくせに」
裕川「それって、十蔵博士が単におちゃめだったのと違う?毎回毎回トンデモない発明してはいきなり発表して、弓さんが驚くのを見て楽しんでいたとか?」
雑兵「桜多版のマジンガーZに、ドクターヘルのトラウマまみれの人生が出てくるけど、弓教授も実はルサンチマンまみれの人生だったんじゃないかと思うんだけど。ってか、一歩間違えばヘルになってたのは弓博士の方だったんじゃないかという……。マジンガーの中では一番おもしろそうな人生なんで、博士ファンの裕川さんはぜひ弓さんにも興味を持ってほしい」
英「桜多版というと、十蔵とヘルが恋人奪いあった話ね」
裕川「ってか、マッドサイエンティスト十蔵の弟子なんか、弓さん位の人格者でないと勤まらなかったんじゃないの。アレがヘッドだったら、普通は逃げ出すよなあ」
雑兵「そうそう、自分で一旗上げる才能がある人たちはとっととみんな逃げ出して、残ったのが弓さん。だから、一番弟子って言っても、研究能力ではなくて、事務処理能力とか政治的折衝能力を買われただけなんじゃないの?その意味では、異端でも自分で好きにやれる宇門博士の方がいいよね。上に変なのが居ないだけまし。それに、Zの時の弓教授の指揮って、はっきり言って方針も何もなかったし。アレは実は甲児なんか死んでくれと内心で思ってたのでは。十蔵博士にさんざんな扱いをされてたわけだから、その八つ当たりってか復讐心が甲児君に向かったの」
裕川「何でまた」
雑兵「だって、どう考えても光子力研の開発実務、能力ありそうなのは三博士の方だもの。研究の後継者となると、どう見ても兜剣造だし。十蔵さんが居た頃は、開発は全部弓さんの頭越しに三博士と十蔵でやってたんじゃないの。弓さんには何も知らされない。三博士の方だって、内心は、弓が一番弟子になったのは事務屋だからだと思ってたりして。スクランダーだって……」
英「一応弓さんが開発したけど、スミス博士にも相談してるよね」
裕川「あれはドッキングシステムについてだけ相談に行ったのでは。図面は一応弓さんっぽい」
雑兵「でも、それ以外に弓さん主導で何か作ってたっけ?たいてい三博士がやってたような。それにミネルバの設計図だって十蔵博士でしょ。スクランダーの原型が十蔵博士によるものでも不思議はないよね」
裕川「もしかして、弓さんて後先考えずに開発やる天才型の十蔵博士の尻ぬぐい役ってこと?それが一番弟子の理由?」
雑兵「そう。この予算の使い方は何かね?って監督官庁の役人にねちねち問いつめられる役が弓さん」
英「で、いろいろ言い訳して帰ってきたら、既に十蔵博士がまた巨額の予算を使っちゃってるとか」
裕川「研究費の帳尻合わせもしてそうだよね。帳簿見ながら赤字だ〜とか」
雑兵「弓さんて、地方の公立高校でも出てそう。小さいときに父親無くして、母親に苦労して育てられたから、なんとか出世しないといけないというのがあったっぽい。地方では神童と呼ばれていたけど、中央に出てきたら何て事はない凡人だったってパターンかも」
裕川「確かに努力型の秀才タイプだよな、弓さんって」
雑兵「そうそう。東大工学部あたりに入ってみたら、兜十蔵みたいなのがいたり、兜剣造みたいな化け物じみた天才やら、三博士やらが同じクラスにいて、とてもかなわない、と、自分の才能を思い知るのよ。三博士は、都会の私立高校出身って感じだよね。裕福で育ちがいい感じ」
裕川「三博士は東大工学部というより、京大工学部って雰囲気じゃない?1%の天才と99%の落ちこぼれを作る大学でのびのび勝手にやって育った。確かに弓さんは東大っぽいけど。大学院の頃に三博士が外部進学してきて、研究室内でもやっぱり三博士との才能の差を思い知らされる、と」
英「それに、どんな顔して剣造博士と顔合わせてたのか。研究者としては剣造の方が圧倒的に上でしょ」
裕川「……」
雑兵「まあ、弓さんが十蔵の弟子だったり助手だったりでパシリやらされてるときに、剣造はMITあたりに留学してばりばり活躍してたりして」
裕川「弓さんの方は剣造の才能に嫉妬してても、剣造の方は弓さんなんか最初から眼中にない、と。モーツアルトとサリエリみたいだな」
雑兵「十蔵も三博士も、面倒ごとや雑用は弓さんに頼んでおけばいいと内心思ってたりして」
裕川「うわぁ……」
雑兵「最後の方なんか、弓教授じゃなくて弓博士って呼ばれてたような。教授の方が絶対ステイタスあるのに。事実上格下げされてる感じ?だから、弓教授に酒のましてインタビューしたらいろいろ愚痴語ってくれそう。仕事終わった後で屋台のおでん屋かどっかでクダまいてそうだし。『先生、ガンモありますよ』とか言われながら、研究所での扱いを嘆くの」
英「そうそう、 『光子力研を支えてるのは俺なんだー』と叫んでたりして」
裕川「十蔵なんかと関わったばっかりに……」
雑兵「十蔵殺したヘルを密かに応援してたり、共感を感じていたりして。よくぞやってくれた、これでもう光子力研究所は俺の天下だ。後は甲児君もやっちゃってくれ」
英「それじゃ、『悪魔の標的 光子力研究所』じゃなくて『悪魔の巣窟 光子力研究所』だよ」
裕川「でも、弓博士って根が小市民だから、自分がヘルになることもできない」
雑兵「立身出世して社会的地位を確保しなきゃ、ってのが相当あったと思う。最後に笑うのは自分だと信じて、下働きでもイエスマンでもやって、やっと研究所の実権握ったとたん、Zと甲児君がやってきた。しかも自分には何も知らされず。殺意を覚えるシチュエーションですよ」
英「設定では、ジャパニウムが唯一算出する鉱脈の上に光子力研究所がある。科学要塞研究所がどうやって弓教授に知られずにジャパニウムを手に入れてたかも問題。弓教授はZの最後の頃まで、科学要塞研究所の存在を知らなかったわけだし。海から横穴掘ったのか」
雑兵「それに、弓さんのあの指揮、相手が甲児君だから何とかなってたんじゃないの。もし鉄也やジュンだったらどうなるか考えてみ?」
裕川「あの二人はプロだからなあ。『ろくでもない作戦するなド素人が』、とか『無能はひっこんでろ』とか」
雑兵「『ヘボな指揮ならない方がマシ』とか、ジュンだって『余計なことしないで所長は黙って引っ込んでてください。邪魔ですから』とか」
裕川「鉄也から真っ先に解任動議が出されそうな」
英「リコールの嵐だな……」
裕川「確かに甲児だから特に怪しまなかったと」
英「毎回出撃から帰ってきた甲児君みて、笑顔で出迎えながら、兜一家ってしぶといなあ、と腹の中では思ってるの、多分。シローをあっさり科学要塞研究所に送ったのだって、あそこで戦いに巻き込まれて死んでくれと思ってたんじゃないの」
裕川「まあ、弓教授って元々指揮官の才能は無さそうだし、十蔵博士が生きていたら弓教授に戦闘指揮官をやらせるつもりなんか無かったんじゃないの。弟子の才能くらいは見抜いてるはずだし」
雑兵「自分の地位を守るためには指揮官するしかないという。それでも、最後に所長になって終わるわけで、小市民的にはハッピーな人生だったと。そういう設定で誰か同人誌書かない?『弓教授の成り上がり人生』。自分より実力が上の三博士をいかに政治的に押さえつつ十蔵博士に取り入って一番弟子となり、ついには所長の椅子を手に入れたか、って話。こういうルサンチマンまみれの人っていかにも居そうでしょ、まわりに」
裕川「リアルでもビッグサイエンスのあそことかあそことかに居そうだよなあ。書いたらダイナミックプロに訴えられる前に、オレの事モデルにしただろうって訴えられそうな気が。でも確かにあの世界の博士達って同世代だよね。もし高校あたりで同じクラスだったら……普通に勉強して普通に遊んでトップの座を譲らない天才が剣造さん。努力型の秀才で家に帰っても勉強ばっかりしても剣造を抜けないのが弓さん。そもそも授業さぼって教室に居なくて、屋上あたりで宇宙論とか勝手に先取りで勉強してて、それでもトップクラスの成績を取る別世界の住人が宇門さん」
雑兵「そうそう」
裕川「でも、ロボット開発は十蔵→剣造ライン、弓さんには光子力の平和利用の研究、と、分けてテーマを振ってたんじゃないかな」
雑兵「まあそうでないとやっていけなさそうだわな」
英「『人に歴史あり』って考えると、十数年しか生きてない甲児達より、博士の方がよっぽど面白いんだよね。いろんなことしてそうで」
裕川「弓教授の肩書きが正式名称だとすると、光子力研は文部省配下の国立研究所ということになりそう。十蔵が中心になって立ち上げたとしたら、もともと兜十蔵研究室は東大工学部あたりにあったのかもしれない。てことは、十蔵と弓さんの腐れ縁は、卒研配属で十蔵の研究室に来た時から始まったのかも。それで、三博士が大学院あたりで移ってくる、と」
英「博士といえば、実は早乙女博士がすごい。設定年齢42歳なのに、30年間ゲッター線の研究をしてきたことになってる。12歳の時からやってることになる」
裕川「ゲッター線研究は夏休みの自由研究から始まったってことですか!そりゃ確かに凄いわ」
この設定に興味がある方、同人誌書いちゃっていいですよぉ。何か私に話が振られてるので、一応私も企画してはみますけど。(同人1作目は作業中、2作目はもうネタ決まってるんで、3作目あたりになりそうな予感)
ところで、桜多版で使われた裏設定が事実なら、兜一家は、十蔵がヘルと恋人の奪い合いをして勝ったためにヘルに逆恨みされて、その後親子三代に渡って二年九ヶ月もの期間、巨大ロボットで戦う羽目になったということになる。実際、桜多版マジンガーを読むと、十蔵がヘルの意中の人を目の前でかっさらったことが、もともとトラウマが多く社会を恨んでいたヘルの背中に最後の一押しをして、ヘルがあっちの世界に行っちゃったように見える。ミケーネを巻き込んでの世界征服騒動は、実は十蔵とヘルの恋のさや当てが原因だったという……これがZとグレートの物語だというのは、ちょっとあんまりな気もするが。
「女性問題で揉めたにしては、また随分と傍迷惑な連中だなぁ」と、独身の宇門博士が星を見ながらつぶやいている光景が目に浮かぶのだが……。
マジンガーシリーズの指揮官役の博士のうち、弓博士だけが「教授」を名乗っている。大学ではない独立の研究所で教授を名乗れるのは、旧文部省配下の研究所だけである(旧通産省や旧科技庁の研究所の研究職は全て「技官」だし、肩書きは「研究官」)。むこうの世界でも同じだとすると、光子力研究所は国立研究所だということになる。科学要塞研究所と宇宙科学研究所は私設のものだろう。
コメントをいただいた
上記の議論を読んだ方からコメントをいただいたので紹介しておく。
いやぁ、「博士」とか「教授」が無茶にオールマイティな、あの時代のアニメの匂いを思い出して、笑いました。なんで、学者風情(←しかも専門が何かすら判らん)が、戦闘の指揮官までやってるんやか(笑)
中の議論は弓博士→東大、三博士→京大みたいな感じで進んでましたが、あの状況なら、むしろ三博士が研究所の「生え抜き」で、弓博士は予算取りのためにお外から呼んできた「お飾り」って見方の方が、国研の人間としては判りやすいなぁ。
きっと兜博士の一番弟子やったけど、早めに外に出て審議委員会みたいなので中央のお役人辺りに顔を売ってたヒトなんですよ。とりあえずプロジェクト立ち上げるのは上手やけど、気軽に無責任なアドバルーンあげるもんで、下に付いてる人間がデータ出しにヒィヒィ言うってパターンかな?
あぁ言う「目立てる」危機的状況にならんかったら、研究所の中よりも外での方があえる確率高いプロジェクトリーダーやったりして。(ちと生々し過ぎかな?)そやから目立ちとうて、素人やのに戦闘指揮まで執りたくなっちゃうんですよ。
現役の国研(今は独立行政法人)の研究者のコメントたけあって、妙にリアルだというか(汗)……。