ヘルメットのトサカって、ウルトラセブンですか?(グレン27話)
はじめに
「猛反撃!!グレンダイザー」(27話)の演出による変更について紹介する。シナリオは上原正三氏である。
全体の流れはシナリオ通りだが、細かい部分で違っている。
シナリオ紹介
No. | 記述など |
9 | 宇宙科学研究所・観測室 宇門所長「ルート6、ゲートオープン」 山田所員「ダメです。爆撃で破壊されてしまいました」 宇門所長「なにッ」 大井所員「ルート3もルート4もオープンしません」 宇門所長「(通信機に)デュークフリード、君の帰る場所はない!」 |
10 | グレンダイザー操縦席 デュークフリード「なんとかかくれ場所をさがします。人工霧だ!」 |
13 | シラカバ牧場 TFOに乗り込んでいる甲児。 上空にはミニフォ部隊が待ちうけている。 甲児「急がないとひかるさんの命が危い!よし、殴り込みだ。TFO発進!」 TFO空へ。 |
14 | 空 TFOがミニフォ部隊に突撃する。 甲児「TFOビーム」 TFOビームでミニフォを撃墜する。 甲児「一寸急ぐんでね、失礼」 TFO、ミニフォ群からぬけ出す。 と、前方から戦艦を思わせる重爆撃円盤獣ハドハドがやってくる。 甲児「一難去ってまた一難か、TFOビーム」 TFO、勇敢にも 円盤獣ハドハドに立ち向かう。 だが、円盤獣ハドハドはTFOビームにびくともしない。 円盤獣ハドハド、体当りしてくる。 目前に迫る円盤獣ハドハド! 甲児「危い!」 甲児、脱出装置でシートごととび出す。 TFO、円盤獣ハドハドに激突! バラバラになって墜落する。 甲児、パラシュートを開く。 と、ミニフォがビーム攻撃。 炎上するパラシュート。 甲児「ああ」 甲児、墜落していく。 |
15 | 森の中 甲児のパラシュートが枝にかかる。 甲児、宙づりになる。 |
21 | 同・観測室 大介が入ってくる。 宇門所長「大介!」 大介「地獄谷にうまくかくしました」 宇門所長「どこをやられた」 大介「動力回路2のコンプレッサーを」 宇門所長「宇宙ロケットのコンプレッサーがある。それを使ってみよう」 そこへ、吾郎がくる。泣いている。 大介「吾郎君」 吾郎「大介さん、姉ちゃんが」 大介「ひかるさんが、どうかしたのか」 宇門所長「銃撃されてね。O型の血液が必要なんだが生憎……」 大介「おれのを使って下さい」 宇門所長「君のを」 大介「おれの血液は誰にでも合うんです」 |
33 | 宇宙科学研究所・医務室 ひかる「えッ、宇門所長と甲児さんがとじこめられちゃった?」 吾郎「そうなんだ、大介さんはどこか行っちゃっていないしさ」 ひかる、ベッドに起きあがる。 吾郎「どうするんだよ」 ひかる「吾郎は牧場に帰ってなさい」 |
34 | 同・廊下 ひかるが食事を運んでくる。 一室の前に銃を持った兵士 ひかる「食事を」 兵士、鍵を開ける。 |
35 | 同・一室 宇門博士がベッドに横たわっている。 甲児が看護している。 そこにひかるが食事を運んで入ってくる。 甲児「ひかるさん」 ひかる「どうなの、容態は」 甲児「二時間おきに拷問だ、これじゃ体がもたんよ」 ひかる「デュークフリードに知らせた方がいいんじゃない」 甲児「デュークフリード?!」 ひかる「私の体内にはデュークフリードの血が流れているんだから」 甲児「知ってたのか!」 ひかる「彼はどこ?」 宇門所長「その体じゃ無理だ」 ひかる「もう大丈夫です」 宇門所長「じゃ、これを渡してほしい。(メモを渡す)地獄谷だ」 ひかる「……(頷く)」 |
36 | 同・玄関 ひかる、出てくる。 警備兵が銃で止める。 ひかる「私は牧場の娘よ」 警備兵、銃を立てる。 ひかる、出ていく。 |
39 | 谷への道 ひかるがくる 足をすべらせる。 ひかる「ああ」 ひかる、激痛にうずくまる。 ひかる、派をくいしばりおりる。 |
40 | 地獄谷 大介がグレンダイザーの修理をしている。 大介「ん?(人の気配)」 よろよろとやってくるひかる。 大介「ひかるさん!」 (略) 大介「失敗すれば、殺されるぞ」 ひかる「……(決意で頷く)」 そして、さっと踵をかえして去っていく。 大介「花を摘むのがにつかわしいのに……(呟く)」 岩陰にひっそりと野花が咲く。 |
42 | 同・広場 ひかるがブラッキー隊長とともに装甲車に入る。 そこへ団兵衛がライフル持って出てくる。 団兵衛「娘をどこへ連れていく(銃を向ける)」 ひかる「お父さん、心配いらないわ、帰って」 団兵衛「侵略者に心許しちゃいかん」 ブラッキー隊長の剣先から怪光線! 団兵衛のライフルがどろどろにとける。 団兵衛「ヒッ!(へなへなとすわりこむ)」 ブラッキー隊長「円盤獣、ミニフォ部隊は空からついて来い、進め!」 装甲車、それにオートバイ部隊。 さらにマザーバーン、円盤獣ウルウルと円盤獣ハドハドが空にとびあがる。 大移動が開始される。 団兵衛「ひかる……」 吾郎「姉ちゃん……」 物陰から大介がじっと見送っている。 大介「すぐに助けにいくぞ、ひかるさん」 大介、研究所の二階テラスにとびあがる。 |
44 | 同・廊下 デュークフリード、くる。 一室の前に警備兵。 デュークフリード、ヘルメットのトサカをはずし、ブーメランのひょうに投げて警備兵を倒す。 デュークフリード、鍵でドアを開ける。 甲児「デュークフリード」 デュークフリード「さ、早く」 デュークフリード、宇門所長に肩をかす。 |
45 | 近くの山道 大介、甲児がリュックサックを背負ってくる。 宇門所長もついてくる。 地獄谷への道を急ぐ。 |
47 | 地獄谷 リュックサックから部品を出して組立てる大介と甲児。 宇門所長「急げ!ひかるちゃんが危い!」 宇門所長、故障個所の修理を開始する。 |
49 | 地獄谷 宇門所長がグレンダイザーを修理する。 大介と甲児が手伝う。 大介「……!(腕時計に目をやる)」 宇門所長「……(頭からたれおちる汗)」 |
57 | マザーバーン・キャビン ガンダル司令とブラッキー隊長、炎につつまれる。 ガンダル「ああ!」 ガンダル司令、専用円盤に急ぐ。 ブラッキー隊長「私も乗せて下さい」 ガンダル司令「お前はマザーバーンと運命を共にしろ」 ブラッキー隊長「……承知!」 ガンダル司令の小型専用円盤、とび出す。 ブラッキー隊長「グレンダイザーに体当たりだあ。デュークフリード思い知れ!」 |
59 | シラカバ牧場 大介、甲児、団兵衛、ひかる、吾郎が牛を集めている。 向うから馬の集団がくる。 番太とハラである。 団兵衛「こら、番太、お前らいったいどこへかくれておったんじゃ」 番太「馬を集めに行ってたんだよ」 ハラ「爆弾で馬コがびっくりしちまってよ、いや集めるのに苦労した」 甲児「北海道まで行ったんじゃねえか」 一同、大笑いになる。 大介とひかるも明るく笑う。 |
64 | 宇宙科学研究所・屋上 宇門所長が牧場を見ている。 宇門博士「ベガ星人の圧力に屈してはならない。宇宙開発は人類の未来なんだ!」 春の陽が降りそそぐ牧場から人間たちの楽しそうな笑い声が聞えてくる。 |
本編との違い
甲児がTFOで出撃するシーンはカットされ、本編ではいきなり飛んでいるところから始まる。
TFOにビーム兵器が搭載されたことはない。ミサイルのみ。変わったところでは、光反射用のミラーとか、消火液ってのがあったが……。
甲児が墜落するシーンは、本編では脱出用の椅子を完全破壊されて、パラシュートも何も無しに自由落下している。
「宇宙人のお前の血をかね」という、科学的にはその通りなんだが身も蓋もない宇門所長の発言は演出による追加。
大介や、輸血後のひかるの血を医者が調べたがるシーンはシナリオにはない。
本編では宇門所長はベッドのある部屋ではなく倉庫のような部屋に閉じ込められている。本編の方がより扱いが悪い。また、ひかるが玄関前の警備兵を殴り倒して外に出るところや、地獄谷から大介と一緒に戻るところがシナリオと違う。
デュークの戦闘服のヘルメットのツノが武器、というのはこのシナリオで登場するだけだが、本編では使われたことはない。頭突きされると痛そうではあるが。
グレンダイザーの修理をしているのが、所長でなくて大介だという部分も違っている。演出では所長は気絶したまま。
吾郎や団兵衛の登場シーンがシナリオに比べて減っているし、最後の番太の登場もない。
感想等
甲児の墜落は、あの高さからパラシュートもなしに落ちたら、下がどういう状態であっても普通は死ぬだろうと……。シナリオだと、まあ怪我で済むかな、というシーン。演出の方は甲児がとんでもない超人になっている。破れたパラシュートで普通よりは速く落下し、枝にひっかかる、というシーンを入れた方が良かったんじゃないか。
ベガ星兵士がひかるを黙って外に出すとは思えないので、演出の方が一貫性がある。そのかわりひかるがアクションキャラ化した。
介抱の余地なく倉庫に叩き込まれる宇門博士だが、ブラッキーが観測室に踏み込んだ時の態度を考えると、介抱可能な環境の良い部屋にわざわざ入れるとも思えない。
見直してみたが、キャラの動きがかなりタイトな回で展開が早い上に、団兵衛や吾郎が下手に出てきてベガ星連合軍と絡んだ上殺されずに済むというシーンを入れてしまったら、ベガ星連合軍の凶悪さが薄れてしまいそう。