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グレンダイザーとは何か-2

ドジな侵略者と平和ボケ国家の物語

 ここでは,グレンダイザーの世界について,テレビ番組に忠実かつ製作者の意図とは異なる観点から整理してみる。簡単にまとめると,侵略者側の作戦は場当たり的で出まかせだったが,迎え撃つ方も同程度に間抜けだったので,どっちもどっちのいい勝負であったと,まあこういうことである。

危機管理意識の欠如

 フリード星はすぐれた科学力を持っていた。ベガ星が奪ってでも手に入れたがるグレンダイザーをフリード星の守護神として建設していた。にもかかわらず,グレンダイザーの出る幕もないまま,ベガ星連合軍の攻撃であっさりフリード星は滅ぼされている。国家の中枢である王宮も簡単に陥落し,国王も王妃も殺された。グレンダイザーを作る傑出した科学力と人的資源があるのなら,その一部でもいいから軍備増強に投入し,まともな軍隊と哨戒網を持つべきだった。しかし,王子デュークの婚約者としてベガ大王の娘ルビーナ姫が予定されていたことで,政略結婚さえ成立すればフリード星は安泰だと思って,まともな兵力を抱えていなかったようである。これは,国家としての危機管理意識がまるで無かったと言わざるを得ない。指導者である国王以下,自星の科学力を過信したあまりの平和ボケということだろう。

守護神のコンセプトを勘違い

 グレンダイザー1機を作って,フリード星の守護神でござい,と能天気にかまえていた。しかしその性能の実態は,相当剣呑な兵器である。この建設が,周辺諸国に対してどういう印象を与えるかということは考慮していなかったらしい。しかも,たった1機を建設しただけであり,フリード星全域への同時多発攻撃を食い止めることはできなかった。まあ,後からグレンダイザーで落とし前をつけに行けば,攻撃してきた連中を全滅させる位はできるから抑止力として使える場合もあっただろうが,これは守護神というよりは破壊神とかあだ討ちの神の役どころだ。また,フリード星への攻撃自体が守護神グレンダイザーを奪うためになされたあたり,グレンダイザーなど建設したからフリード星の滅亡が早まったのだと言えなくもない。これでは,グレンダイザーは,フリード星人にとって守護神ではなく疫病神である。

最初っから戦略ミス

 ベガ星は,ベガトロンの汚染で最終的には崩壊している。フリード星を侵略したときから汚染は蓄積されており,いずれは滅ぶことがわかっていたはずだ。一方,フリード星はクリーンな光量子エネルギーを利用することに成功していた。むやみな侵略などせず,平和裡に光量子エネルギー利用技術を供与してもらえるように交渉していれば,何も母星を破滅させることもなかったはずだ。また,グレンダイザーを奪うためにフリード星全域を攻撃してベガトロン放射能で汚染した結果,生物の住めない星にしてしまった。これでは,地球よりずっと近くにあるフリード星を全く利用できない。挙げ句に母星が滅びると,今度は遠路はるばる地球に移住しようとする。この行動はあまりにも行き当たりばったりと言うほかはない。

事前調査の不徹底

 さすがに,ベガトロン爆弾で殲滅戦をやると,戦争には勝てても移住先の確保には失敗することを学んだのか,地球侵略はミニフォー部隊と円盤獣を逐次投入する方式で行われた。が,この場合の相手は地球で,科学力はフリード星よりはるかに遅れており,ベガ星とくらべても兵器の性能は石器時代と現代人の軍備程度の差はある。それならば,世界各国の主要な都市に円盤獣を送り込んで制圧し,ほぼ同時に各国を降伏させてしまえば,グレンダイザー1機を使ってデュークが何を言ったところでどうにもならなかったはずである。しかし,侵略方針を変えずに,地球をそう汚染しない方法でグレンダイザーを先に倒すことに固執したため,ちまちま送り込んだ円盤獣はことごとくグレンダイザーに撃破されてしまった。

 あるいは,1つの星には1つの統一政府があるのが当たり前であり,デュークは当然その政府を頼って亡命したはずだから,グレンダイザーの逃げ込んだ国を降伏させればそれで終わりと思い込んでいた可能性もある。ブラッキーなどは,国連でも日本政府でもなく宇門博士に向かってグレンダイザーの引き渡しや情報提供を要求していた。この場合は,もし研究所が陥落したとしてもそれで侵略完了とはならず,世界各国のばらばらの抵抗にあってかなり面倒くさいことになったはずである。

   いずれにしても,侵略先の技術力や政治体制が根本的に違うということを認識していなかったとしか思えない。侵略戦争をしかける側としては,この調査不足はお粗末である。

戦果より自己保身を優先

 ベガ星連邦でもなくベガ星共和国でもなく,「ベガ星連合軍」と名乗っていたところをみると,ベガ星は軍隊そのものが国という,究極の軍事国家であったと思われる。軍隊での出世以外に出世の道はないわけで,一つのモノサシでの競争が過酷なことは,日本の受験戦争の比ではなかっただろう。自分以外の人間がめざましい武勲をたてるということが自分の地位の低下に直結したため,誰かが戦果を上げそうになると,味方の裏切りや非協力といった行為で足を引っ張られることになった。その結果,グレンダイザーを倒すには至らなかった。競争が激し過ぎるのも問題である。

王子の作戦立案能力の欠如

 戦いの常として,強敵と出会ってしまいピンチになることがしばしばあった。そういう時こそ,じっくり作戦を立てて検討し,勝てそうな方法で戦わなければならない。ところがピンチのときのデュークの行動は「負けるとわかっていても戦いに行く」である。第7話,第34話が典型的で,いずれも,敵の仲間割れや敵がほとんど自殺に等しい行動をとったから勝てたのであって,普通に戦っていたら負けていただろう。

訓練不足

 特に戦いの前半のデュークフリードは牧葉家の人たちと主に生活し,しかも正体を隠していたので,グレンダイザーに乗るのは円盤獣が攻めてきたときだけであった。第13話にみるように,円盤獣がスタンバイしている状態でグレンダイザーの武器が故障で使えないのに,修理の時間もとれないほど牧童の仕事に忙殺されてしまっている。これでは,いくらデュークの身体能力が高くても,グレンダイザーの性能をすべて引き出すことはできなかっただろう。一方,攻めてくるのは,フリード星人よりは科学的に遅れているとはいえ,銀河を超える能力を持った軍事国家ベガ星連合軍である。当然,末端の兵卒から士官に至るまで日々訓練に明け暮れていたはずで,戦いの熟練度は圧倒的にベガ星側が有利である。守護神と呼ばれるグレンダイザーに乗ってさえ,デュークがしばしば苦戦した理由もうなづける。