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グレンダイザーとは?(その1)

異星人侵略物&ロボットアニメ

 TV放映の内容を中心として,どういう設定の話かまとめておく。

 一言でいうなら,地球に亡命してきた宇宙人の青年が,故郷の守護神とされたスーパーロボットで地球人の仲間と共に,故郷を滅ぼした敵と戦う話である。作品的には,70年代マジンガーシリーズ最後の作品ということになる。

グレンダイザーの世界

 フリード星はアンドロメダ星雲のベガ星系に属する,優れた科学力を持った平和な星で,豊かな自然にもめぐまれていた。星の指導者はフリード王家が担っており,国王と王妃には王子デューク・フリードと王女グレース・マリア・フリードがいた。近くには恐星大王ベガに率いられた軍事国家があったが,ベガ大王の娘ルビーナ姫とデュークの間には婚約がなされており,両国の平和は保たれるはずであった。また,ルビー星やモール星といった近隣の星とも友好的な関係を築いていた。

 フリード星は,星の守護神としてグレンダイザーという円盤型のロボットを建設した。フリード星のすぐれた科学力を投入した結果,他の星では真似できない性能を持つことになった。搭乗者には王子のデュークフリードが予定されており,悪用を避けるために,王家の人間以外が近づくと排除する仕組みが組み込まれた。

 隙があれば他の国を侵略しようと考えているベガ大王にとっては,グレンダイザーは格好の兵器であった。そこで,ベガ大王はベガ星連合軍を組織し,フリード星に奇襲攻撃をかけた。このため,フリード星は国民のほとんどが死亡,王と王妃は殺され,王子デュークは傷を負い,王女マリアは行方不明となる。実は,何人かのフリード星人は捕虜となり,マリアは侍従に連れられてひと足先に地球を発見して逃れていたのだが,デュークには知る由も無かった。

 グレンダイザーを敵の手に渡すなという王の遺言に従い,デュークはグレンダイザーでフリード星を脱出,3年にわたって追撃を降り切って逃避行の末,銀河系内の地球にたどり着いた。

 宇宙人実在説を唱える宇門源蔵に発見された半死半生のデュークとグレンダイザーは,源蔵が所長をつとめる宇宙科学研究所で保護されることになった。源蔵はデュークに大介という名をあたえ,自分の養子とし,傷の回復を待って,共同経営している白樺牧場の牧童として生活させた。白樺牧場には,宇門の共同経営者である牧葉団兵衛,ひかる,吾郎の家族が生活していた。

 大介が牧場の生活にも慣れた頃,地球近辺にUFOが出没するようになる。これを調査するために,USAのワトソン研究所に留学していた兜甲児が,自ら設計・製作した円盤TFOで日本に戻り,宇宙科学研究所にやってきた。甲児は、マジンガーZでの戦いが終わった後、ワトソン研究所に留学し、NASAのUFO研究センターにも出入りするようになっていた。

 UFOに近寄り過ぎたのか,これがきっかけとなってベガ星の円盤による攻撃が始まる。甲児は大介の制止をきかずにTFOで飛び出し,撃墜されてしまう。大介はデュークフリードに変身しグレンダイザーに搭乗,ベガ星のミニフォーと円盤獣を撃破し,甲児を救う。

 この後,ベガ星連合軍は頻繁に攻撃部隊を送り込むが,ことごとくグレンダイザーに撃破されてしまう。途中で,もう少しで研究所を占領するところまで行ったのだが,ひかるの策略によって失敗,攻撃隊長のブラッキーはグレンダイザーの反撃で死亡,ガンダル司令官も負傷する。ブラッキーにかわって,科学技術長官のズリルが着任するが,戦況は膠着状態であった。グレンダイザーの強化のため,ドッキングパーツであるスペイザーが,空・海・地中対応の3種類作られた。戦いの中で,グレンダイザーを見かけて追ってきたマリアとデュークは再会し,以後共に戦うことになる。また,度重なる攻撃で研究所は一度ほとんど破壊されたが,前もって基地に改造する準備を終えていたおかげでより効率的に反撃可能になった。

 そのうち,ベガの本星がベガトロン汚染で爆発し,移住を目的としてベガ大王は月の裏側のスカルムーン基地に移動してくる。ベガ星連合軍も,地球の海底深くに前線基地を作り,さらに攻撃をしかけてくる。が,デュークは甲児らとともに海底基地を破壊する。

 ある日,元婚約者のルビーナが地球にやってくる。デュークは会いに行くが,ズリルの策略によってルビーナは死亡,ズリルは甲児に射殺される。ルビーナが死に際に,ベガ星の基地が月の裏側であることを教えたので,デュークは一人で出撃しようとするが,甲児に止められる。宇門源蔵は,コズモスペシャルという宇宙用スペイザーを制作する。グレンダイだーチームはベガ大王に最後の決戦を挑んでこれを撃破する。フリード星のベガトロン放射能が消失していることを知ったデュークは,マリアとともにフリード星へと帰っていく。

時間的位置づけ

 マジンガーZからグレートマジンガーへの移行は,ヒーローの交代劇であった。製作者:兜十蔵(祖父),搭乗者:兜甲児(孫)という組み合わせから,製作者:兜剣造(父),搭乗者:剣鉄也(剣造に引き取られた孤児)に変わったわけだが,まあ,どちらも兜一家の開発したロボットを使って,地球上に生息する異種族と戦う話であった。つまり,「兜家の歴史」を押さえておけば,Zとグレートの関係が自然に出て来るわけである。

 ところが,グレンダイザーは,全く異なる背景を持った異星人侵略ものであり,マジンガーシリーズだと認知されるとしたら,兜甲児が登場することと,ロボットのカラーリングと,ボスボロットの登場の3点くらいしかない(ボスボロットは全シリーズ通して出席という,あるる意味驚異的に優秀?である)。グレートマジンガーからグレンダイザーへの移行は交代劇ではなかった。映画以外では,Zやグレートとグレンがそろって登場するシーンはない。これらの3作品を一連のシリーズとして同時に考えようとした場合,まず,それぞれの時間軸を並べて合わせておく必要がある。

 次の図は,おおまかなtime tableである。

timetable.png

 この図を作るにあたって,マジンガーZ研究機構の「登場人物一覧」を参考とした。図中に赤で示したのがマジンガーZの戦いの期間,青で示したのがグレートマジンガーの戦いの期間である。年号は,ほぼTV放映に合わせてあるが,グレート登場の最初を劇場版の時期とした。SFとして考えていく場合は必ずしもこの通りである必要はなく,相互の時間差が保たれていれば,全体がずれてもそう差し支えはないだろう。

作品世界の相互関係

 図中の「Z」で示した期間は,主人公兜甲児が,祖父十蔵によって作られたマジンガーZで,十蔵のかつての同業者であったドクターヘル率いる機械獣と戦う話である。機械獣との戦いが終わった後,甲児はNASAのワトソン研究所へ留学する。かわって,戦闘獣と戦うことになったのは剣鉄也で,兜剣造に指揮されていた(図中「グレート」)。グレートの終盤になって,甲児が一時的にアメリカから帰国し,マジンガーZに搭乗,鉄也とともに地獄大元帥らと戦い,剣蔵の犠牲の上にこれを撃破する。その後,甲児は一度NASAに戻る。その後,グレンダイザー第1話で研究の成果と思われる自作の円盤TFOに乗って日本に帰国,宇宙科学研究所に身を寄せる。甲児に関する限り,3作品を通しての振る舞いはつじつまが合っている。

 「Z」以前の地球側での出来事は,次のようなものだろう。十蔵は,光子力エネルギーとジャパニウムの発見,超合金Zの精製,光子力研究所の立ち上げを行い,引き続いてマジンガーZの設計製造を秘密裏に行っていた。十蔵の研究には途中から息子の剣造が加わるが,実験中の事故のため,重蔵は剣造をサイボーグ化した。剣造は,十蔵と並行して超合金ニューZの精製とグレートマジンガーの設計製作,科学要塞研究所の建設を行うかたわら,孤児である鉄也とジュンをひきとり戦闘訓練をさせた。この活動は極秘で行われた。剣蔵がこの作業を行っていた期間は,鉄也と甲児の年齢差からいって,甲児が生まれて育つ期間と重なっている。マジンガーZに鉄也が登場しないのは,訓練中であり,訓練が完了するまで秘密を守らなければならなかったからだろう。

 グレートが戦っていた期間,光子力研究所は戦いに参加せず通常業務を続けていた。グレンダイザーが戦っていたときも,おそらく業務は継続していただろう。科学要塞研究所の方は,剣蔵の死亡により存続が危ぶまれる状態であり,危難が去った後の存在意義についても考慮しなければならないだろう。鉄也は最後の戦いで重傷を負って,再起できるかどうかがわからない状態なので,当分の間はグレートに乗るどころではなかったはずだ。その後,科学要塞研究所も鉄也も表に出てこないのは,まあ納得できる話である(但し映画は別)。

 マジンガーZとグレートマジンガーの世界において,語られなかった物語の主な内容は,十蔵と剣造による「プロジェクトX」ということになる。

 一方,グレンダイザー開発や,フリード星の滅亡,その後のデュークの流浪といったことは,全て地球外での出来事である。デュークが地球にやってきたときは,追撃をふりきって半死半生の状態であり,宇門博士に匿われる格好になった。宇門博士と弓教授や兜剣造の間で,あくまでも研究者同士の情報交換として,異星からの亡命者の話が伝わったかもしれないが,弓教授も兜剣造もそれを戦力とはみなさなかったのだろう。宇門博士の方も「宇宙人の実在を証明!」と発表したりはしなかった。デュークが戦える状態に回復するまでには相当の時間がかかったはずであるし,地球の暮らしにそれなりに馴染むにも時間がかかったはずだ。

 作品中で明確に語られることはなかったが,デュークは,マジンガーやグレートの戦いを,少なくともマスコミ経由で知っていたはずである。しかし,一切ノータッチであった。怪我が治るまで動けなかったということもあるかもしれないが,それ以上にこの場合は戦う理由がなかったはずだ。機械獣×マジンガーZも戦闘獣×グレートマジンガーも,人類にとっては存亡を賭けた戦いだろうが,フリード星人であるデュークにとっては,亡命先の異星人同士の戦いである。命の恩人の宇門博士に危難が及ぶならともかく,やってきたばかりでこの先いつまで地球にいるかもわからないときに,積極的に原住民同士の戦いに介入する理由はどこにもなかっただろう。また,デュークが持っている戦争の概念はあくまでも星間戦争であって,ある星の中での戦いは内乱に過ぎなかったのかもしれない。マジンガーが負けた場合は,地球を脱出してまた別の亡命可能な星を探せばよいのだから。さすがにベガ星連合軍がやって来ると,仇討ち&第二の故郷を侵略しにきた地球外勢力に対する防衛,ということで,闘う理由ができたのではないか。それに,この頃になると,地球に対する愛着も持つようになっていただろう。

 グレンダイザーの戦いにマジンガーZと光子力研究所が参加しなかった理由は,既に英氏がまとめている(「対ベガ星連合戦におけるダブルマジンガー不参戦の解明について」)。一言でいうなら,目立たない存在に徹しつつ宇宙科学研究所に超合金ニューZを供給する役目を担っていたというものである。なお,グレートマジンガー最終回からわかるように,鉄也は再起が危ぶまれるほどの重傷を負っており,対ベガ製連合戦の間は療養中であったと考えられる。

グレンダイザーの魅力について

 グレンダイザーの魅力は,明らかにされた物語の魅力だけではなく,むしろ,語られなかった物語の豊富さにあると私は思う。フリード王家の物語,グレンダイザー建造,デュークの青春,フリード星滅亡からデュークの追撃をのがれての流浪は,どれをとってもそれぞれ別の物語が成立するものである。地球に来てからだって,TV第1話に至るまでには紆余曲折があったに違いない。

 語られていない部分が明らかになるかも,という期待は,番組を見続ける動機の1つであったし,グレンダイザーの世界を楽しむ要素の1つでもあった。まだ語られない部分が残っていたから,放映からこれだけ時間がたっても,ずっと作品世界のファンでいつづけることになったのだと思っている。