12
「地球での戦いの中、ルビーナが地球へやって来ました。そして、フリード星が甦えりつつある事を教えてくれたのです。しかし、そのルビーナはベガ星人の攻撃から僕をかばって死にました。ルビーナは本当にフリード星とベガ星の平和を願って死んでいったのです‥‥。」
しばらく沈黙が続いた。そして、その沈黙を破って一人の少女が群衆から飛び出した。
「みんな!私達は誤解していたんだわ!」
その少女を追うようにして、今度は少年が踊り出た。ペガサスと同じくらいの少年である。
「そうだ!今こそ王子と共にフリード星を建て直そうじゃないか!」
デュークはうれしかった。たとえわずかな人でも自分を理解してくれる人がいた事が、彼にとっては何よりの喜びだった。しかし、その二人の次に続いた声はペガサスの声だった。
------「待て!」
それは、デュークがこの大ホールに駆け込んだ時に背後から襲って来た叫びと同じ叫びだった。二人の少年少女の言葉も効果はなく、群衆は押し黙ったままである。どうやら、この群衆を先導する役としては、二人の少年少女よりペガサスの方が優位に立っているようである。ペガサスは行った。
「今の話だけであんたの全てを信用する訳にはいかないな。」
「何故だ?」
「証拠がない。」
「……!」
彼は絶句した。確かに、今の彼の話を事実として裏付けるものは何もない。
「何をいう、ペガサス!俺は王子を信じる!」
少年はペガサスに対立する。
「まあ、そう熱くなるなよ、オックス。」
ペガサスはそう言ってその少年------オックスをあしらって言葉を続けた。
「考えてもみろ。俺達は五年もの間、宇宙の事は何も知らないんだ。今の王子様の言葉を安易に信じていいのかって事さ。」
「どうしてだ?王子が帰って来たという事実で充分じゃないか!」
「甘いな、おまえは。」
「何っ!」
「ベガ星のスパイという事だって考えられる。」
「……!」
オックスは返す言葉に詰まる。デュークにとっては再び悪い状況に置かれたようである。外で雨に打たれているマリアの事も気にかかる。彼は藁をも掴む気持ちで老人に目をやった。さっきはこの老人の出現により、わずかだが状況が好転したのだった。しかし、老人は彼の期待とはうらはらに黙して目をつむり、少年達のやりとりを聞いていた。
「‥‥それでも、私は王子を信じるわ…!」
それまで黙っていた少女が、ペガサスに言いくるめられてしまったオックスを助けるように言った。オックスもくやしそうに唇を噛んでいる。
「ならば俺も言わせてもらう。」
ペガサスは居直った。
「ベガ星が滅んだかどうかは問題じゃない。問題はそれ以前だ。」
「どういう意味だ?」
オックスはペガサスの言った言葉が理解できなかった。それは、デュークも含めたここにいるフリード星人全ての疑問でもある。