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「ペガサス、後ろだっ!Bパネルのボタン!」
老人の声にペガサスは操縦桿を右へローリングさせ、右のペダルを踏み込みながらボタンを押した。すると、グリフォンの左腕の楯の中心のカバーから剣の柄が飛び出した。ドイドイが地上すれすれにジャンプし、グリフォンに迫る。グリフォンの右手が柄を掴み、全長20メートルはあろう大刀を引き抜いた。ペガサスはグリフォンが右後方へ振り向く完成運動にまかせて大刀を振り回した。ドイドイのツメが突如としてコックピットの前面に出現する。
「------ひっ!」
ペガサスはその恐怖に目をつむった。しかし、間一髪、大刀がドイドイの体を二つに切り裂く方が早かった。ペガサスは目を開いた。ドイドイの体の切断面の上下が横にずれるのが見えた。ドイドイはグリフォンの足元に転がり、3秒程の間をおいて爆発した。
「い、いけるぜ‥‥じいさん!」
ペガサスはそう言ってみたものの実際は必死だった。全身が震え、異様な興奮状態に陥っていた。防護服の下は汗でベトベトである。
「三体目!上じゃ!」
老人の叫びにペガサスは上を見た。いつの間にかフビフビがグリフォンの上空へ飛んでいた。
「死ねっ!」
フビフビは降下しながらハンマー・バーベルを頭部のコックピットを狙って振りおろした。
「わーっ!」
ペガサスは絶叫しながら左右の操縦桿を胸元まで引き寄せた。大刀が手を離れ大地に落ちる。バキッ!これまた間一髪、グリフォンの両手は頭上でハンマー・バーベルを受け止めた。
「------野郎っ!」
グリフォンはそのままハンマー・バーベルを振り回した。フビフビの右手はハンマー・バーベルをしっかり握っていた為、斜めに円軌道を描いて回転した。そのすさまじいパワーから発する遠心力でフビフビの体は空中高く舞い上った。
「ディフェンサーをたため!右腕のギャラクシー・ノバを使え!目の前の赤いボタンじゃ!」
老人の声に、ペガサスはBパネルのレバーをおろし、右腕を持ち上げつつ目の前の赤いボタンを押した。金色の楯が扇をたたむようにカバーの中に収納された。と、右手首が腕の中に引っ込み、大砲の砲身のような物が飛び出し、腕の外側には照準スコープ、内側にはグリップとトリガーがせり出し太。赤いボタンの上の小さなテレビ・モニターが緑色に光った。
「そのモニターの中に円盤獣を入れ、緑から赤に変わったらトリガーを引け!」
「わ、わかった…!」
グリフォンは右腕をゆるやかな放物線を描いて宙に舞うフビフビに向けた。