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彼はゆっくり立ち上がり、一瞬、フッと気をゆるめた。と、次の瞬間、ズビューッ!というレーザーの発射音が背後で鳴った。彼は後ろを振り返った。すると、一人のベガ星兵士がそこで倒れた。彼は人の気配を感じ、反対方向へ向き直った------と、何かが物陰から飛び出した。
「デューク!」
「‥‥ゴカルテン先生!」
それはグレンダイザーを開発したフリード星科学陣の一人であり、デュークの操縦訓練の教官でもあるシザース・ゴカルテン博士だった。
「怪我はないか?」
博士は彼に聞いた。
「はい。」
「一体どうしたと言うのだ?何が起こったのだ?」
「どうやら、ベガ大王が裏切ったらしいのです。」
「何だって!?それじゃ君のあのベガ大王の娘との婚約は…?」
「はい、罠だったのです‥‥」
「そうか‥‥ベガ大王め、何て卑劣な奴なんだ‥‥ところで、こんな所へ何しに来た?」
「…父が…殺されました…」
「何っ!?」
「母も…そして妹も…父は奴等の狙いはグレンダイザーだと言って‥‥僕にグレンダイザーで宇宙へ逃げろと…」
「そうか‥‥そうだったのか‥‥」
その時、ドガーン!とい轟音と共に格納庫が揺れ、天井が吹っ飛んだ。二人は爆風に飛ばされ、床に激突した。どうやらベガ星連合軍は陽子爆弾による攻撃を開始したらしい。彼は、いやという程床に叩きつけた体をゆっくりと起こした。と、激痛が脳天を突き抜ける。見ると、右腕の肩と肘の間に7センチ程の大きさの傷がパックリと口を開けており、そこから鮮血が流れ出ている。
「ウウッ‥‥はっ!ゴカルテン先生!…先生っ!」
彼はあたりを見まわした。ゴカルテン博士は倒れた石柱の下敷きになっていた。
「先生ーっ!」
彼は傷の痛みも忘れ、走り寄った。
「先生っ!」
「デュ…デューク・フリード…に、逃げろ‥‥大王の御意志を‥‥」
「先生!僕はもういやです!僕も戦って…戦えるだけ戦ってここで死にます!」
「何を言っているのだ‥‥大王が亡き人となられた今、‥‥フリード王は君なのだぞ…」
「えっ‥‥!」
彼にとってっこの言葉は衝撃だった。
「ここで死んで…グレンダイザーを渡してしまったら…フリード星は、‥‥宇宙はどうなる?‥‥大王の遺言通りにするのだ‥‥そして、‥‥いつの日か…」
その時、新手のベガ星兵士が数人、格納庫へなだれ込んで来た。
「…さあ、早く‥‥行けっ!」
「先生‥‥!」
彼はグレンダイザーに向って走った。ベガ星兵士が乱射するレーザーを掻い潜り、船体に昇る。コックピットに入り込み、寝ルメットをかぶる。その時、再び激痛が彼を襲った。一瞬、意識が遠のく。右腕の傷は、思ったよりも深いようである。彼は気を取り直し、エンジンを始動させる。アクセルを吹かし、エンジン出力を上昇させる。
------発進!彼は怒りを込めて発進レバーを引き、グレンダイザーを発進させた。そう、ゴカルテン博士に教わった通りに------