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そこまで話すと、少年の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「そうか‥‥わかってくれればいいんだ。これから君は、君の父さんや母さんの分までこのフリード星で生きて行くんだ。いいね。」
彼は少年にそう言いながら、ややもすればくじけそうになっていた自分にその言葉を言い聞かせていた。少年は涙をぬぐい、ニッコリと笑って言った。
「さっきの戦い、見ていました。グレンダイザーって強いんですね。いつまでも、僕達を守ってください。」
「ありがとう。がんばるよ。」
「本当に、ごめんなさい!」
少年は深く一礼をして、その場を走り去った。この戦いで死んだフリード星人は12名。怪我人は重軽傷を含めて37名だった。もし、グレンダイザーがいなかったら、この王宮を最後の砦に生き残ったフリード星人達は、たった七機の小型円盤の攻撃に完全に沈黙していた事だろう。彼は自分の責任の重大さを、新たに痛感した。その時、王宮の入口の近くにいる一人の男が叫んだ。
「円盤だ!また円盤が来たぞっ!」
デュークとマリアは顔を見合わせ、何も言わずに立ち上り走って外へ向かった。
その円盤は灰色の雲とオレンジ色に染まった来たの空を背景に、時々、没しようとする西の太陽にその船体を輝かせながらゆっくりと接近して来る。
「また来やがった。今度は一機だぜ。バカにしてやがる。」
デュークの横でペガサスが呟いた。
「しかし、様子がおかしいな。ちょっとそいつを貸してくれないか?」
彼はペガサスが肩に掛けているレーザー・ライフルを指差した。
「どうするつもりだ。」
「よく見たい。」
ペガサスはライフルを彼に渡した。彼はライフルを構え、スコープを覗いた。
「あれは‥‥ベガ星の円盤のようだ。」
「何っ!」
ペガサスは目の色を変えた。
「と、言っても軍用機じゃない。子供の頃、ベガ星へ行った時に見た事がある民間機に似ている。武装はないはずだ。」
「そう言えば一週間程前にここから西へ5ミグ・リープ(約3キロ)程離れた所にベガ星の円盤が落ちた事がある。」
「本当か?で、そこへ行って見たのか?」
「ああ。」
「誰か乗っていたか?」
「30くらいの男と女、それに子供が二人だった。でも、みんな死体だった」
その時、後ろからエリーナが声をかけた。
「ペガサス、様子が変よ!」
一同は円盤を凝視した。円盤は推進機関に支障を来たしたらしく、激しく左右に揺れ始めた。
「不時着するぞ!」
誰かが叫んだ。
「行って見よう。一緒に来るか?」
デュークはペガサスに訊いた。
「ああ。俺はまだ完全に信用しちゃいないからな。」
ペガサスはニヤリと笑って答えた。
「あたしも行くわ。」
「僕も。」
マリアとオックスが前へ出た。
「よし、行くぞっ!」
四人は円盤の不時着地点を目指し、北へ向かって走った。
円盤は1キロ程離れた、小高い丘の枯れた林の近くに不時着していた。爆発した跡は見られず、あちこちひしゃげてはいるものの、ほぼ原型をとどめていた。四人は枯れ木の影から円盤の様子を伺っていた。
「まちがいない。ベガ星の円盤だ。船体にマークがついている。」
デュークが言った。
「誰か乗っているのか?乗っていたとしても、この前のように死んじまっているんじゃないのか?」
と、ペガサス。
「もう少し様子を見て、何の変化もなかったら近づいて見よう。」
------そして約三分。マリアが声を上げた。
「見て!ハッチが開くわ!」
四人は目を凝らした。ゆっくりと円盤のハッチが開き、中から何かが姿を現わした。半分以上、地平線に沈んだ赤い太陽の光を横に受け、その姿が照らし出される。