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ギンギンとドイドイは上空でうろたえたが、ギンギンはそのまま上空からグリフォンに急降下キックを浴びせようと落下しながら加速した。
「ペガサス!右腕だ!」
ペガサスは必死の形相で操縦桿を操作し、足元のペダルを踏み込む。目の前にギンギンの巨大な足が迫る。その光景は真に恐怖以外の何ものでもない。楯の後ろ側から矢のような速さでグリフォンの右腕が走った。バキッ!グリフォンの右腕がギンギンの右脚を掴んだ。
「この野郎ーーっ!」
ペガサスは絶叫してグリフォンの右腕を引っ張り、大地へ振りおろした。ズシーン!ギンギンは大地を砕いて激突する。
「うわーっ!」
地上から悲鳴が上がった。オックスとマリアである。ギンギンの巨体がオックスとマリアが身を潜めていた岩を破壊したのだ。
「…‥バ、バカ野郎!まだそんな所にいたのか!…死にたくなかったら安全な所まで逃げていろっ!」
ペガサスの声が轟いた。オックスはしばし呆然とした。体長40メートルの巨人からよく聞き慣れたペガサスの声が発せられるのは奇妙であった。
「ペ…ペガサス!…ほ、本当にお前なのか?…そ、そのロボットは‥‥」
「話は後だ!早く逃げろっ!」
「あ、ああ‥‥さ、姫」
マックスは我に帰り、マリアを連れて戦場を離れた。ギンギンがゆっくりと体を起こしながら言った。
「‥‥少しは手ごたえがあるようだな‥‥行くぞっ!」
ギンギンは円盤に変型し宙に舞い踊った。意表をつかれたペガサスは一瞬ひるむ。と、老人の声が耳を打つ。
「右手Aパネル!2のスイッチ!ヒート・ブーメランのエネルギーを解放して投げろ!後はコンピューターがやってくれるっ!」
ペガサスはスイッチを押し、腕を腰のブーメランへ持っていく。ギンギンが円盤のまま急降下する。体当りだ。グリフォンの右腕がブーメランをはずし、頭上に振り翳した。白く輝いていたブーメランの刃の部分が、ほんのり淡いピンクに染まった。グリフォンの右腕が空を切り、ブーメランが飛んだ。ヒート・ブーメランは高速回転しながら急降下するギンギンに吸い込まれるように突き刺さり、ペガサスの目の前でその船体を真二つに切り裂いた。二つに裂かれたギンギンの船体はグリフォンの左右をかすめて墜落し、爆発した。ベム・モンスの造り出す円盤獣は幻影ではない。あくまでも実体なのだ。拾い出したイメージ通りのものを実体化させ、人の児湯不審を煽るのだ。しかし逆に、実体ならば破壊されれば爆発もするのだ。間髪をいれずにドイドイが突進した。