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「彼等は俺達を疑っているんだ‥‥フリード星を見捨てた裏切者だと‥‥」
「ええっ?」
その時、マリアは人気を感じて振り返った。鉄格子の向こうに一人の少女が立っていた。デュークを一番最初に信じてくれた少女だった。少女は左腕に少し大きめの箱を抱え、牢の鍵を開けて中にはいって来た。マリアはこの少女に、何となく敵意を感じた。
「あなた‥‥誰よ!」
マリアが聞いた。
「私はエリーナ‥‥エリーナ・バルザギック。」
彼女はマリアにそう答え、デュークに近寄った。
「いかがですか‥‥?傷みます?」
「ええ、…少し…でも大丈夫です。あなたが僕の手当を…?」
「ええ、…本当に申し訳ない事を…ちょっと、失礼します…」
エリーナは彼の繃帯を解き、抱えて来た箱------救急箱からガーゼと消毒液を取り出し、手早く新しい物と取り替え、再び繃帯を丁寧に巻いた。
「眼球に傷はありません。大丈夫です。」
「兄さん、一体どうなっているの?」
「マリアは呆気にとられていた。
「ああ、ちょっと面倒な事になっていてな…」
「本当にすみません‥‥ペガサスもまさかこんな事になるとは思って居なかったと思います‥‥」
「いいんだ‥‥フリード星を去ってしまったのは事実なんだ。」
「兄さん‥‥!」
マリアは現在の状況を正確に把握する事はできなかったが、唯一つ、自分達が不利な状況にある事だけは察知できた。デュークはエリーナに聞いた。
「そのペガサスだが‥‥彼は?」
「彼はあの戦争の後、生存者達を集めその先頭に立って来た日となんです…それでみんな‥‥」
「‥‥そうですか‥‥」
「彼のフル・ネームはペガサス・ゴカルテンと言います。」
「えっ!?」
彼は驚愕した。
「そうです。彼の父はシザース・ゴカルテンです。」
ACT.5 最終戦争の影
シザース・ゴカルテン------その名を耳にしたとたん、彼の脳裏にあの忌まわしい日の出来事が鮮かに甦った。春も間近い麗かな、しかしまだうす寒いその日、王子デューク・フリードは辛い朝を迎えた。一週間前、彼は父フリード王から重大な話を持ち掛けられた。フリード星と友好関係にあるベガ星からフリード星に留学している王女ルビーナが殊の外彼を気にいっており、この上は是非彼とルビーナを婚約させ、より一層の友好関係に深めたいとベガ大王直々に申し出があったというのだ。父、フリード王はその選択を彼に委ねた。ルビーナの求愛を受けるも受けないも彼の自由だった。彼は悩んだ。ルビーナの事はよく知っていた。