25
デュークはグレンダイザーを着陸させ、大地に降りた。
「兄さん!」
「王子!」
マリアとオックスが駆け寄る。
「兄さん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。」
「それで、相手の正体はわかったの?」
「いや‥…彼等は俺の呼びかけに答えようとはしなかったよ‥…」
三人はしばらくの間、絶句した。しかし、オックスが明るく声をかけた。
「でも、これでペガサスの奴も王子の事をわかってくれたと思います。」
その時、彼等の前をケガ人を肩にしたペガサスが通りかかった。
「まだ完全に信じた訳じゃない。」
「ペガサス…おまえ!」
「オックス!そんな所でボケッとしてないで怪我人の介抱ぐらいしろっ!」
ペガサスはそう言って王宮へと去った。
「…たくもう!石頭!」
マリアはペガサスに向かってうそぶいた。
「彼の言う通りだ。怪我人を早く運ぼう。」
デュークが言った。
「すみません‥…一体あいつ、何を考えているんだ。」
「いいんだよ。さ、早く。」
「はい。」
三人は怪我人の介抱に向かった。
ACT.8 ベガ星人 ドク
王宮に戻ったデュークは、フリード星人達が自分に向けてくる視線が今までと違うことに気がついた。彼等の目は、あたかも凱旋する将軍を見るかのような目であった。そう、先ほどの戦いにおけるグレンダイザーの凄まじいばかりの威力と迫力はこの大衆を魅了するのに充分だったのだ。いくら今日まで五年の月日を生き抜いて来たとは言え、それまで平和すぎたフリード星人達は精神的に弱かったのだ。概に彼等は無敵のグレンダイザーとデューク・フリードに頼り切っている感があった。彼等はこれまで、あくまでも細々と脅えながら生きて来たのだから仕方のない事なのだが------。自分は彼等の期待に答えられるだけの事ができるのだろうか?また、自分は彼等を統治していく事ができるのだろうか?ふと、そんな考えが彼の頭を過ぎった。
概にその日も暮れようとしていた。西に傾いた太陽が空をオレンジ色に染め、王宮のホールにもその光が差し込んでいた。ホールの中では怪我人の手当があちこちで行われていた。デュークもホールの片隅で、その疲れた体を横たえていた。左目の傷がひどくではないが断続的に痛み、頭が重かった。そのわきには、マリアが心配そうに付き添っていた。
「兄さん、傷は痛む?」
「大丈夫‥…しばらくこうしていれば治るさ…。」
その時、歳は12,3才であろうか、一人の少年が彼等の前に立った。
「あ‥…あの…」
少年は体をこわばらせ、言葉もおぼつかないようだった。
「なあに?ボク?」
マリアは少年に優しく微笑みかけた。少年は言った。
「ご、ごめんなさい!昨晩王子に石を投げたの僕です!」
「えっ!何ですって!‥…ちょっと坊や!何でそんな事‥‥」
「よせっ!マリア」
デュークは体を起こし、少年に突っかかろうとするマリアと止めた。
「相手は子供じゃないか。」
「だって‥‥!」
「僕、まちがっていました‥‥今まで応じは裏切者だと思っていました。‥‥僕の父さんと母さん、ベガ星の攻撃で殺されたんです‥‥」