パーソナルツール

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ACT.10

老人とペガサスの二人は暗い倉庫のような部屋の中にいた。床には鋼材やら何かのメカのパーツやらが散らばっている。老人はゆっくりとその部屋の壁の一角へ歩み寄り、手にした杖の柄の先を指で弾いた。と、柄の先の部分はキャップのようにはずれ、ボタンとアンテナの先のようなものが露出した。老人がそのボタンを指で押すと、アンテナの先がピピピピッと電子音を立てて光った。と、壁の一角が横にスライドして開き、長さ20センチ程のレバースイッチが現われた。老人はそのレバーを引いた。すると、天井の照明が一斉に点灯し、部屋全体を照らし出した。部屋は10メートル四方、高さ5メートル程で、床の中央から斜め上方に向かってカタパルトのレールのようなものが伸びており、そこには円盤を縦にしたおうな------かたつむりの殻のような形の乗り物が設置されていた。老人は突き当たりの壁に向かって歩いた。そこは幾つかのメーターやらスクリーン、表示ランプ等のついたコンソール・ボックスになっていた。老人はコンソールの下の引き出しから何かを摂りだし、それを両手に抱えてペガサスに近づいた。

「こいつを着て行け。少しはお前の体を守ることだろう。」

それは防護服だった。ペガサスはそれを受け取り、着こんだ。老人は言った。

「プロセスは解っておろうな‥‥?」

ペガサスは無言でうなずいた。

「よし、行けっ!」

ペガサスは部屋の中央の台へ駆け上り、その”かたつむり”の前面のゴンドラのようなコックピットに乗り込んだ。シートに座り、天井に引っかかっているヘルメットをかぶる。ヘルメットの両耳の部分からは太めのコードが2本、天井のパネルへ伸びている。

「いいぜ、じいさん。」

ガイン老人はコンソール・ボックスのシートに座り、ペガサスよりやや大きめのヘルメットをかぶった。

「いいか、始動させるぞ。」

老人はそう言ってコンソールのスイッチキーを叩いた。コンソール・ボックスのパネルと”かたつむり”のコックピットに同事に灯りが点灯する。

「エンジン始動。」

ペガサスはコックピットのレバースイッチを引いた。唸りを上げてエンジンが回転を始める。

「出力上昇中。」

「回転計がレッド・ゾーンに入ったら言え。」

老人の声がヘルメットのヘッドホンを通じて入って来る。

「カタパルト・オープン。」

老人はそう言ってコンソールの上の指をめまぐるしく走らせた。幾つかの表示ランプが明滅する。”かたつむり”のコックピットの前面に風防が降りる。