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レールが伸びている天井の一角がグーンと音をたてて左右にスライドして開いた。そしてその向こう側、王宮の北側の一角も同時に口を開け、レールの先が伸びて地上に露出した。
「‥…レッド・ゾーン!」
ペガサスが叫んだ。
「行けっ!」
「Go!」
ペガサスは発進レバーを引いた。ロケット・ノズルが青白い炎と煙を噴き、かたつむりは一気に夜空へ舞い踊った。
倒れたダイザーの胸部をドイドイのムチのような左腕が襲った。反重力ストームを放射するプレートにヒビが走る。続けてドイドイの右手の鋭いツメが腹部を押そう。宇宙合金グレンの装甲は破られ、ツメが腹部に喰い込む。内部のメカがスパークして火花をチラシ、オイルが吹き出す。さらにドイドイはその爪の先を放電させた。ダイザーの体内を、デュークの全身を高圧電流が駆け巡る。
「------!」
デュークは絶叫した。しかし言葉にはならない。全身の力が抜けて行く。彼は操縦桿に手をかけたまま、ぐったりと前に倒れた。意識はあった。必死に体を起こそうとする。しかし、彼の体は言う事を聞かない。操縦桿を握りしめる事さえできない。
(------殺られる------!)
彼は心の中でそう思った。と、そのとき、三体の円盤獣はダイザーを攻撃する手を留め、一斉に後方を振り返った。
(‥…どうしたんだ?)
彼は不思議に思い、円盤獣を見上げた。円盤獣達は南の空の一点を見つめている。彼も南の空に目を向けた。と、その南の星空の中で何かが一瞬キラッと輝いた。それは猛烈な速度でこっちへ接近して来る。三体の円盤獣はその物体に対して身構える。
(…なんだ?)
デュークがそう思った次の瞬間、その物体は円盤獣達をかすめ、ダイザーの目の前を一瞬のうちにすり抜けた。
”かたつむり”は円盤獣達とダイザーの間を通過した。ペガサスのヘルメットのヘッドホンから老人の声が響く。
「ペガサス!反応はあったか?」
「あった!‥…でも、通り過ぎちまった!」
ペガサスが答える。
「よし‥‥速度を落として反転しろ。反転したら素早くセンサーを同調させるんじゃ。」