20話:科学忍者隊危機一発
それを言うなら「危機一髪」だと思うが、最後のバードミサイルの一発の意味だと強引にこじつけられなくもない。ゴッドフェニックス、握りつぶされかけてたし。ただ、当時の多くの子供達に「危機一髪」を「危機一発」と誤解させた可能性はあり、その点では罪作りなタイトルである。
チェックポイント
- 怪獣の顔とそっくりなかぶり物をしているギャラクター隊長。
- 暴れ回るモグラタンクだが、日光に弱く、日が昇ると攻撃できない。
- 子犬を助けに行って爆発に巻き込まれて倒れるジョー
- ナレーション「高速遠心分離装置とは、大気圏外に飛び出す時加わる重力に、宇宙パイロットが耐えられるように作られた、テスト用装置である」
- ジョーが抜け出してゴッドフェニックスにG2号を合体させる。
- バードミサイル1発でモグラタンク破壊。
- 爆発のショックでジョーの頭から破片が抜ける。
今回の南部博士
- 南部「ガッチャマン緊急指令。都心にモグラ怪獣があらわれた。ギャラクターの仕業にちがいない。ギャザー、ゴッドフェニックス発進せよ」
- 健「お願いです。何とかジョーを助けてやってください。お願いします」
南部「諸君、これを見たまえ。鉄の破片は脳の一番危険な場所に触れている。手術で取り出すことは不可能だ」
健「それじゃあ、どうしようもないんですか」
南部「いや、たった一つだけ方法がある」
健「それは?」
南部「宇宙科学研究所にある高速遠心分離装置にかけて頭部から破片を抜くことだ。しかし、一つ間違えば人体そのものが分離してしまうおそれが多分にある」
ジュン「でも、放っておけばジョーは死んでしまうわ」
健「博士、我々科学忍者隊は常日頃から体を鍛えています。ちょっとやそっとのショックでは死にはしません。ジョーがもし死んだら、ゴッドフェニックスの威力も発揮できなくなります。お願いです。遠心分離機にかけてください」
南部「よしわかった。しかし……うーん、やってみよう」 - 南部「始めてくれたまえ」
- 南部「今の6倍の遠心力にしたまえ」
南部「遠心力を10倍に」
職員「そ、それは無理です。これ以上だと人体そのものが分離して」
南部「やるんだ」 - 南部「ダメだ、破片は抜けない」
- 南部「科学忍者隊の諸君、出動だ」
甚平「俺やだよ。ジョーの兄キを置いていくなんて」
ジュン「あたしだって嫌よ。ジョーが死ぬかもしれないのに」
竜「そうじゃい」 - 健「俺は行く。俺達がここに居て、果たしてジョーが、ジョーが喜ぶと思うか」
南部「君たちは、君たちは科学忍者隊ではなかったのか」 - 南部「ジョーは必ず助けてみせる」
- 南部「忍者隊の諸君、ジョーが行方不明だ。もし生きていれば、最後の力を振り絞ってそちらに向かうだろう。その時は頼むぞ」
- ジョー「俺が助けた子犬は……」
南部「子犬は元気だ。破片さえ抜ければ、後は私が助けてみせる。科学忍者隊は5人揃ってこそ、全力を発揮するのだ。今の気持ちを忘れないでくれ」
感想・考証・議論
ジョーの頭の傷について説明する南部博士。 |
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遠心分離装置。 めちゃくちゃ頭に血が上りそうな代物。分離以前に脳出血でも起こしそうな気が。 それ以前に実はこれ、致命的にまずいんです。下の図を見てください。 図で黒い矢印で示したのが、破片が入った方向です。ところが、ジョーは平らに寝かされたまま、水平面内で回されてます。破片にかかる遠心力の向きは、頭のてっぺん方向で、図の緑で示した方向に破片が抜けることになります。入る時にも脳を傷つけてますが、出る時にも、まだ無傷だった脳をわざわざ傷つけながら出て行くことになります。素直に入った経路をたどってメスを入れた方がマシではないのかと。 |
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「遠心力を10倍に」と冷や汗たらたらで叫ぶ南部博士。気持ちはわかりますが、振り回す向きを変えないとまずいです。 | |
振り回しても破片が抜けなかったのでショボーンな南部博士。泣きべそかいてるようにも見えます。でも、ここでもしうまく抜けてたらジョーの脳の傷倍増だったわけですけど……。 | |
「ジョーは必ず助けてみせる」と大口叩いて忍者隊を送り出しておいて、ジョーにあっさり逃げられる。危険な状態のジョーから目を離して、あんた一体何やってたんだーっ! あ、ひょっとして、最後のシーンから考えるに、ジョーがわざわざ助けた子犬の世話をしていたとかそういうオチ? で、ゴッドフェニックスの画面に現れて、「忍者隊の諸君、ジョーが行方不明だ」と、しれっとした口調で言う南部博士。何かもうやけくそになってあれやこれやを誤魔化そうとしてませんか? 作画の連絡不行き届きか、ツル有りメガネの南部博士、違和感ありますねぇ。 |
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「ジョー、とれたぞ」って、破片がでかすぎるような気も。 まあ、とれたんならめでたしめでたしだわな。 南部博士の立場は無いが……。 |
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ジョーが 「俺が助けた子犬は……」と小声で呟いた瞬間、勝手に通信装置の画面に出現して「子犬は元気だ」とやりはじめる南部博士。しっかり子犬も抱いてます。 以前も、南部博士はゴッドフェニックス内の会話を常に傍受しているのではないかという疑惑があったが、あらためてそれが裏付けられました。 案外、健が「とれたぞ!」と言ったのも聞いてたけど、遠心分離装置に突っ込んで大騒ぎしても効果が無かった手前、出るに出られなかったんじゃないか? しかしなぁ……「破片さえ抜ければ、後は私が助けてみせる」って言われても、ジョーは既にかなり元気で、南部博士の出番は無さそうなわけですが。 ヤバい方向で努力してみたけど報われなかった(そしてひょっとしたらその方が良かったかもしれない)南部博士、何だか全体に努力が空回りしている感があります。ジョーの怪我が実は相当堪えて動転してたんでしょうかねぇ。でも、取り乱した姿も見せられないし、指揮官は大変だなぁ。 |
ところで、作品を問わず、宇宙科学研究所と名のつくところは、ぐるぐる振り回す装置を置いておくのが趣味らしいです。装置構成はいろいろあるみたいですが、向こうの世界では宇宙飛行士は回して訓練、が標準なんでしょうね。