8話:三日月サンゴ礁の秘密
南部博士の変態技術力炸裂の回。
チェックポイント
- イソギンチャク型のメカに襲われて全滅するISOの潜行艇。乗組員はやる気に満ちていたのにあっさり殉職。なお、乗組員のユニフォームが60年代アニメテイストな件。
- 忍者隊は子供に存在を知られている。
- 無人島で何日も泊まり込んでイソギンチャク探しをする忍者隊。甚平は勝手に出て行って連絡しない。
- ニセの海底基地を甚平が見つけ、後をつけてきたイソギンチャクメカが甚平拉致と同時に破壊。
- キレた健がバードミサイルでイソギンチャクを爆破。内部に侵入して甚平を救出。カッツェは作戦成功と思って逃げ出し、イソギンチャクは爆発。
今回の南部博士
- (健と甚平の通信機に)
南部「ガッチャマンに告ぐ。緊急指令。ギャザー、ゴッドフェニックス直ちに発進せよ」 - (ゴッドフェニックスに)
南部「ギャラクターを全滅させるためには、我々の秘密基地が必要だ。この基地はゴッドフェニックスの基地であり、科学忍者隊諸君の城でもあるのだ」 - 南部「だが、この秘密基地の建設はすでにギャラクターが知っていると思わねばならぬ。10日ほど前調査中の我が潜行艇が数隻、何者かのために消されている」
ジョー「くそぉ、ギャラクターめ」
南部「あきらかに、我々の秘密海底基地の建設を妨害しているのだ。南太平洋のG地点に無人島がある。諸君はこの付近をパトロールするのだ」
甚平「無人島付近に秘密基地ができあがるんですね」
南部「G4号、ギャラクターは必ず出てくるぞ。無人島近くの海と空を探し回るんだ」
甚平「でも、探すだけなの、博士」
南部「そうだ。探したら報告するんだ」
甚平「ちぇ、それじゃ人気No.1のチャンスが」
南部「何?」
甚平「いえ、その……」
南部「ガッチャマン、度々言うが、こちらからギャラクターに戦いを仕掛けてはいかんぞ」
健「はい」
南部「では諸君の成功を祈る」 - 健「博士、申し訳ありません」
甚平「おいらが悪いんだよ。黙って飛び出しちゃったんだから。だから、秘密基地が……」
南部「科学忍者隊の諸君、よくやった。君たちのおかげで、君たちの城、秘密海底基地は完成した。」
ジュン「でも、ギャラクターが」 - 南部「はははは……あれはニセモノの基地だ」
ジョー「それじゃ博士、俺達も騙されていたってわけなんですか」
南部「その通り。ギャラクターが忍者隊を追い回しているうちに、立派に完成できたのだ。G4号、よくやったぞ」 - 健「博士、完成した基地はどこにあるんですか」
南部「ゴッドフェニックスの真下だ」
ジュン「博士、三日月型の珊瑚礁しか見えません」
南部「それが秘密基地だ。これはどこへでも自由に移動ができる。科学忍者隊の諸君、さあ、来たまえ」
感想・考証・議論
これはもう何と言っても南部博士の変態力炸裂の回と言わざるを得ない。
これが、南部博士謹製のニセの秘密基地。ハリボテだとしても、海底にこれだけのものを作るのは、時代が近未来であってもそれなりに大変だったはず。このニセ基地建設のために、潜行艇で出てった職員は殉職したらしい。 | |
ゴッドフェニックスの画面に出てきたときからにやけている南部博士。こんな嬉しそうな博士、これまでに出てきていなかった気が。大体、忍者隊への通信って、大真面目に命令伝えて成功を祈る、くらいしか言ってくれないし、バードミサイル撃つなとか攻撃するなとか血相変えて説教ばっかり。 | |
ニセ基地破壊の報告を受けて大口あけて高笑い。 南部「はははは……あれはニセモノの基地だ」 通信機の向こうで博士のこんな顔を見ちゃったら、忍者隊の諸君は、普段との落差の大きさにドン引きしてるんじゃないですかね。 前回ギャラクターに技術力で負けてろくな作戦しか実行できなかったのが、よっぽど気に障っていたんでしょうかね。今回、ギャラクターを見事に騙して大満足状態。 |
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「さあ、来たまえ」の後、やっぱり得意満面でまだ目が笑っている。 笑う南部博士って、その直前には何かやらかしてるってことだよなぁ。誰かをハメてるとか。 あと、ツルあり眼鏡なのも要チェックかと。 |
ところで、今回の健と甚平の会話から、ちょっと意外な結論が。公園で健が少女に風船をとってやるシーン。
子供A「お兄ちゃんすげえなガッチャマンみたい」
子供B「かっこいいや、ホントにガッチャマンそっくりだよ」
健「君たち、ガッチャマンを見たことがあるのかい?」
子供A「見たことないけど、白い翼をつけた正義の味方さ」
子供B「俺、いっぺんでいいから会いてぇなぁ」
甚平「おいらもガッチャマンの大ファンなんだぜ。割合くわしいんだ」
健「こら」
甚平「科学忍者隊の中で一番カッコイイのは誰だい」
子供A「そりゃなんたって、G1号のガッチャマンさ。リーダーだもんな。ふふん」
甚平「じゃあ、2番目は?」
少女A「G3号よ。かっこいい女の子よね」
甚平「じゃあ、3番目に好きなのは?」
子供B「G2号のお兄ちゃんだよ」
甚平「じゃあ、4番目は」
子供A「G5号のデブの兄ちゃんさ。G4号のちびは、ケツの5番目さ」
この口ぶりからすると、子供達はガッチャマンの変身後の姿を知っているし、活動の様子も、人気ランキングをつけられる程度には知っている。しかし、南部博士は、誰がガッチャマンであるかを、直属の上司であるアンダーソン長官にさえ明らかにしていない。しかも、ガッチャマンのこれまでの作戦は、変身後の姿であっても、大勢の人の前に出るようなものではなかった。となると、この子供達は、現在放映中の、子供達に大人気のテレビ番組の話をしているのではないだろうか。
おそらく、南部博士は、科学忍者隊が活動を始めれば早晩誰かに目撃されるに違いないと考えて、陽動作戦を考えたのだろう。それは、「特殊コスチュームを身につけた5人の少年忍者が髭の博士の指示でギャラクターという敵と戦う」という、連続テレビアニメーションを放映するという作戦で、番組のタイトルには「ガッチャマン」とあった。これなら、本物がもし目撃されても、そのテレビ番組の「何とかショー」の練習や撮影をしている、と思ってもらえそうである。よくデパートの屋上とか後楽園ゆうえんちとかでやってるアレである。
南部考三郎は元々名の通った財閥の御曹司で、ISOでの集金力も半端じゃないのだから、どこぞの中小企業Tプロダクションを買収し、キャラクター案やら設定やらシナリオやら演出の指示書を送ってアニメを作らせ、広告代理店にも金をばらまき、番組のメインスポンサーとなって全国ネットで放映するなんて朝飯前だろう。番組の途中ではISOのロゴやら南部の財閥のロゴ入ったコマーシャルが出ていたりして……。
ガッチャマンとは、つまりは、こんなふうにして成立した話だったんですよ。全ての黒幕は南部考三郎博士だったという……。